鹿内健+鹿内真沙子 / Sデザインファームが設計した、千葉の、設計者の自邸「増減の家」です。
コロナ禍以降の“豊かさとは?”を主題に計画されました。建築家は、限られた条件での実現性も考慮し、“増による豊かさ”と“減による豊かさ”を両立させる建築を志向しました。そして、高気密高断熱の内部空間に“外リビング”を付加する構成を考案しました。
室内面積65㎡。断熱等級6(UA値0.44、BEI0.68、C値0.3)、6kwの太陽光発電によるZEHの平屋住宅です。
コロナ禍を経て家とは?生活とは?暮らしとは?
そこに必要となるものは?どうなったか?今回自邸をつくるにあたり考えた事です。
豊かさとは何か?
暮らしの豊かさとは、物質的な物があれば豊かである、、、という事では決してなかったと思います。満ち足り状況、心踊る瞬間があること、そんな形にもならない感覚や気分が大切なのだと思います。家にできること、建築にできることは限られているけど、そんな情緒的な豊かさが益々大切になってきている気がします。
一方で現実問題としては、物価も上がり建設費も高騰しています。どんなに予算があっても程度の差こそあれ全ては満たせない状況です(そうでない人もいますが)限られた予算、限られた条件の中で家という器に豊かさをどうつくれるか?が最近考えているテーマでもあります。
自邸である今回の家では最近Sデザインファームが取り組んでいる高気密、高断熱化で断熱等級6の家としています。
これは「増やすことでの豊かさ」だと思います。
高気密・高断熱住宅はどうしても「何年で回収するか?」など投資回収の話になってしまいますが、子どもたちの時代、孫たちの時代に対してエネルギー問題、温暖化対策として建築家・工務店などの作り手はもちろんの事、今を生きる住み手も何かする必要があると感じています。高断熱化、高気密化などの断熱強化、トリプルガラス、創エネとなる太陽光発電はわずかなエネルギーで家が涼しくなり、太陽の恵みで室内は暖かくなります。この1年暮らしてみて、こんなに快適なのかと改めて実感しています。
一方で「減らすことでの豊かさ」にも取り組んでいます。
建物をごそっとくり抜いたような外リビングは屋根があり単板サッシによる欄間がありますが、室内が残されたまま外化されたような空間です。室内空間でなくコントロールされてない屋外空間であるため、暑さ寒さなど外的要因が如実に反映されます。でも外でご飯、焚き火、寝転んで猫と戯れる、虫の飼育場、汚れても出しっぱなしにしていても気にならない緩さがあります。