小松隼人建築設計事務所が設計した、西日本の「HOUSE Y」です。
雄大な風景を望む敷地での計画です。建築家は、多方向に“環境との関わり”を生み出す建築を目指し、景色を取込む主室を中心として“放射状”に廊下を伸ばし個室群を作る構成を考案しました。また、枝分かれ状の配置は庭の緩やかな分節も担っています。
敷地は雑木林に囲まれた広大な平地。散策すると様々な景色との出合いや、恵まれた自然環境を享受でき、特に北西の瀬戸内海の夕日と、南東の雄大な山並みは情緒豊かな風景である。
この広大な敷地と雄大な風景をそのまま受け止めるのではなく、建築が据わることによって多方向に環境との関わりをつくれないかと考えた。
雑木林は高低差のある崖状で、場所によっては擁壁のない不安定な状態であった。そのため崖の安息角からヴォリュームは敷地の中央に配置することが導かれた。
主室を景色の良い二方向に向けて中心に配置してその周りを個室が取り囲む計画では、建築とそれ以外の広大な余白という関係しか生まれないため、主室は中心に据えるものの個室と繋がる廊下を放射状に伸ばすことで、幹から枝葉が伸びていくような構成とした。
枝葉となる廊下は幅を広げることで滞在空間としても機能するラウンジとして位置付け、主室と個室の間にあるセミパブリックな領域とした。この主室からラウンジ、個室へ進むごとにプライベート性が増していく構成と合わせて、プライベートな個室は天井を下げ、パブリック性が強くなるごとに天井を高く設定して抑揚をつけている。
ラウンジからさらに枝分かれした個室は、多方向に視線を導き、多様な風景を望むことができると同時に、空間に連続性と奥行きを生み出した。この枝分かれ状の配置によって外部もゆるやかに領域を分けることができ、夕日を眺める庭、海を眺める庭、朝日を浴びる庭、山並みを望む庭、子供達の基地庭、雑木林を借景とする庭といった、敷地から望む多方向の風景を重ねた庭をつくり出している。