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以下、建築家によるテキストです。

地上から屋上まで巡るように庭が展開する都市住宅

東京都心の住宅である。
建て込んだ住宅街に立地するため、3階と屋上レベルの解放感を最大限享受しつつ、立体的に庭を設けることで下層階も含めて明るく開放的な住宅とした。
コロナ禍によって変化した、暮らし方、働き方、家族との時間の変化に適応した、新しい都心の暮らしを実現した。

4つの庭

時間の流れを体感できる暮らしを実現するため4つの庭を多方向に積み上げた。

玄関ドアを開けると正面に「エントランスガーデン」が見える。
幹の樹形に導かれるように階段を登ると頭上に水平方向に枝葉を広げたイロハモミジがお出迎えする。エントランスガーデンは、様々な方向、室から眺めることができそれぞれ違った風景を作り出す。

「リビングガーデン」にはオーバーハングした樹形のプリペットセンセーションの下にベンチを設けた。
キッチン側の窓からは、飲み物や料理の受け渡しが可能。リビングガーデンを見上げると「バスガーデン」が見える。袖壁と腰壁によって適切な開口サイズはプライバシーを確保し、浴室とバスガーデンの一体利用を意図した。浴室にはサウナと水風呂が併設され、バスガーデンは「外気浴」スペースとなる。バスガーデンから螺旋階段を登ると「スカイガーデン」に出る。都心の眺望が一気に広がる開放的なビューが楽しめる。

台形の庭

限られた敷地、建物面積の中でいかに広がりを感じさせるか。「台形の庭」が果たす役割は大きい。
「エントランスガーデン」、「リビングガーデン」は奥行き方向にパースがかかることで実際よりも奥行きを感じられる。漆喰仕上げの壁は光を柔らかく拡散させ、空と同化した背景となり、どこまでも空間が広がっている錯覚を与える。鈍角の入隅は空間を柔らかく包み込む。

3つの階段

4層フロアを繋ぐため、階段が床面積を大きく占める。そこで単なる移動空間ではなく「滞在空間」として捉えることにした。その結果、階数以上に幾重にも重ねられた多様な空間が生み出された。

1, 2階を繋ぐ「ライブラリー階段」の踊り場には壁面収納があり、アートや花、本などが納められている。絨毯敷きの床と落ち着いた色使いの設えは、階段に座ったり、床に寝そべって本を読んだり、寛ぎの空間となる。イロハモミジの木漏れ日が床に落ち暖かな縁側空間のようである。

2, 3階を繋ぐ「音楽階段」の踊場にはピアノが設置されている。リビング空間から半階高い所にあり、ピアノの音色が上部から降り注ぐ。ささらや段板をできるだけ細く軽やかにすることで、階段を通してエントランスガーデンからリビングへ光が入り込む。

3階とR階を繋ぐ「アイビー階段」はバスガーデンの植物の上を通過する。つる系植物を足元に配し、将来的には階段がグリーンで包まれる。

■建築概要

題名：Spiral Gardens House
家族構成：夫婦＋子供1人
所在地：東京都目黒区
設計：IKAWAYA建築設計　担当／井川充司＋廣瀬彩子＋今田夕稀
施工：本間建設
構造設計：井上健一構造設計事務所
設備設計：ZO設計室
キッチン製作：戸塚製作所
造園デザイン：SOLSO
構造：木造
敷地面積：121.49㎡
延床面積：131.63㎡、1階：50.59㎡、2階：52.86㎡、3階：28.18㎡
工事期間：2022年7月～2023年3月
竣工：2023年3月
写真：三嶋一路

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