佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える外観、南側の道路より見る。 photo©中山保寛
佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 下、左:ホビールーム、右:「アプローチテラス」 photo©中山保寛
佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 上、リビングからダイニングを見る。 photo©中山保寛
佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 上、左:「ユーティリティテラス」、右:衣裳部屋 photo©中山保寛
佐藤充 / SATO+ARCHITECTSが設計した、宮城・仙台市の「中山の家」です。
林縁の雛壇状に造成された敷地での計画です。建築家は、擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向しました。そして、擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与えました。
敷地は、1960年代に山を切り開き宅地造成された住宅地と山林のエッジにある。
もともと山林の一部だった斜面地を数年前に切土と3枚の擁壁によって雛壇状に造成された敷地であり、接道レベルに駐車場、擁壁上の平地に建築を配置するという定型化された建ち方が真っ先に想像される。
それは、私たちが無意識のうちに土木と建築を一切関係しあうことなく切り離して風景を捉えているからに他ならない。
「南光台東の家」を設計した際に、擁壁の崩壊メカニズムとその上に建つことの危うさについて把握していたことから、80坪という比較的ゆとりのある敷地に対し、安全に計画可能な敷地面積は、ごく僅かであることが見て取れた。
そこで、擁壁を宅地造成による「副産物」としてではなく、生活に寄り添う「壁面」と捉え、擁壁と建築が親密な関係を構築することで都市の風景、そこでの体験を豊かなものに変えることができないだろうか、と考えた。
2段目の平地を構成する擁壁の底盤を避けてヴォリュームを配置し、道路レベルの平地から立ち上げたヴォリュームと擁壁を跨ぐように上部で接続させた。上下2つの基礎と既存擁壁を刺し筋で接合し、せん断力の伝達を担保することで一体性を確保し、さらに3つの地面のレベルに合わせて3枚のスラブを配置し、全ての生活空間に雛壇状の地形との関係性を持たせている。
擁壁が成す微かな角度を手掛かりに、前面道路から1枚目の擁壁は、内外に貫入し、空間の流れを生むとともに、建主の趣味の観葉植物やサーフボードのメンテナンススペースとなり、2枚目の擁壁は、物干しスペースや家事の合間の気分転換を図るユーティリティーテラスを構成し、さらにレフ板として太陽光を北側から回折させ住まいの奥まで陽光を導く。
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佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える俯瞰、南西側より見下ろす。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える外観、南側の道路より見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える外観、西側より見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える外観、西側より1階の「アプローチテラス」を見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 下、出入口側から「アプローチテラス」を見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 下、「アプローチテラス」から出入口側を見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 下、左:ホビールーム、右:「アプローチテラス」 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 下、ロフトから「アプローチテラス」を見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階の上部への階段 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 上、階段側からリビングとダイニングを見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 上、リビングからダイニングを見る。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 上、左:テラス、右:キッチン photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階 上、左:「ユーティリティテラス」、右:衣裳部屋 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える2階、1階 上のリビングとダイニングを見下ろす。 photo©中山保寛

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階下 平面図 image©SATO+ARCHITECTS

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える1階上 平面図 image©SATO+ARCHITECTS

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える2階平面図 image©SATO+ARCHITECTS

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与える断面図 image©SATO+ARCHITECTS

佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「中山の家」。林縁の雛壇状に造成された敷地。擁壁を“副産物”ではなく“生活に寄り添う‘壁面’”と捉え、建築との“親密な関係”の構築を志向。擁壁を跨ぐように建築を配置して其々に暮らしに寄与する様々な役割を与えるコンセプトパース image©SATO+ARCHITECTS
以下、建築家によるテキストです。
擁壁と建築
敷地は、1960年代に山を切り開き宅地造成された住宅地と山林のエッジにある。
もともと山林の一部だった斜面地を数年前に切土と3枚の擁壁によって雛壇状に造成された敷地であり、接道レベルに駐車場、擁壁上の平地に建築を配置するという定型化された建ち方が真っ先に想像される。
それは、私たちが無意識のうちに土木と建築を一切関係しあうことなく切り離して風景を捉えているからに他ならない。
「南光台東の家」を設計した際に、擁壁の崩壊メカニズムとその上に建つことの危うさについて把握していたことから、80坪という比較的ゆとりのある敷地に対し、安全に計画可能な敷地面積は、ごく僅かであることが見て取れた。
そこで、擁壁を宅地造成による「副産物」としてではなく、生活に寄り添う「壁面」と捉え、擁壁と建築が親密な関係を構築することで都市の風景、そこでの体験を豊かなものに変えることができないだろうか、と考えた。
2段目の平地を構成する擁壁の底盤を避けてヴォリュームを配置し、道路レベルの平地から立ち上げたヴォリュームと擁壁を跨ぐように上部で接続させた。上下2つの基礎と既存擁壁を刺し筋で接合し、せん断力の伝達を担保することで一体性を確保し、さらに3つの地面のレベルに合わせて3枚のスラブを配置し、全ての生活空間に雛壇状の地形との関係性を持たせている。
擁壁が成す微かな角度を手掛かりに、前面道路から1枚目の擁壁は、内外に貫入し、空間の流れを生むとともに、建主の趣味の観葉植物やサーフボードのメンテナンススペースとなり、2枚目の擁壁は、物干しスペースや家事の合間の気分転換を図るユーティリティーテラスを構成し、さらにレフ板として太陽光を北側から回折させ住まいの奥まで陽光を導く。
宅地を形成するために形振り構わず敷地境界線を横断する擁壁は、どこか所有が曖昧であり、アプローチテラスの先に隣人の駐車スペースが繋がっている。それはまるで蛇口のその先に水道管を介して他の誰かの家が繋がっているように、意識が境界線を超えて他の誰かの生活につながっていくことを想像すると、擁壁と建築の親密な関係は、街並みと生活が地続きとなり、人々の暮らしを縫合するように都市に住むことの喜びを喚起できるのではないかと思う。
(佐藤充)
■建築概要
題名:中山の家
所在地:宮城県仙台市
主用途:専用住宅
設計:SATO+ARCHITECTS 担当/佐藤充、内海伯望、梅澤一燈
構造:Hafnium architects 担当/福山弘、真島嵩啓
施工:共栄ハウジング
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:264.07㎡
建築面積:49.68㎡
延床面積:87.20㎡
設計:2022年8月〜2023年4月
工事:2023年5月〜2023年12月
竣工:2023年12月
写真:中山保寛