SHARE プリズミック・ギャラリー、成瀬友梨+猪熊純 プロジェクト展
以下、建築家による展覧会についてのテキストです。
Growing from context 成瀬友梨+猪熊純 展
いきいきとした風景を作りたいと思っています。それは2つの意味において。
ひとつは、建築がそれ自体で完結しないこと。建築が、人やモノや周辺環境と関わりあい、一体的な風景を生み出すこと。アクティビティや環境と共にある風景、インタラクティブな風景。
もうひとつは、世界に多様性を取り戻すこと。同じような建築ばかりになり場所性が消えつつある中で、その場所らしいということ。新しいバナキュラー。
これら2つは、結局似たことを言っています。建築のなりたちを、毎回ゼロから探すこと。人・モノ・周辺環境、時には社会的状況まで、建築に関わるあらゆるコンテクストを拾って育て、顕在化すること。
一つの原理の追求でもなく、単なる条件の整理でもなく、コンテクストと生成原理の関係の追及。
生物はそれ自体活き活きとした美しさを持ち、同時に世界に豊かな生態系を生み出します。それは、種の中に初めから、コンテクストを引き受けた原理が無数に蓄積されているからです。建築もそういうものでありたいと思います。
今回の展示は、そんな考え方が、様々な形で現れている作品たちです。内装ではモノや人との関わりであったり、家具では素材との関係であったり、建築プロジェクトでは、敷地からプログラムまでを包括的に反映しているものもあります。
会場について
この会場もまた、他のプロジェクトと同様、ギャラリーの空間、展示物、見に来てくださる人々を、どう活かして、全体の風景を作るかを考えました。展示物一つ一つに対しそれぞれ展示台を与え、台を床と同じ赤色に染めています。
展示物は、完全な白模型から、たくさんの色や素材が使ってあるものまで多種多様です。白い展示台であれば、白模型だけが背景に溶けてしまう所を、赤い展示台は、それらの特性を最大限にいかし、全てをいきいきと見せてくれます。
床と同じ色であるため、床までこの展示のために塗ったような、拡がりのある空間となっています。この場所を歩く人にとっても、赤い地形の中を散策するような体験になればよいと思っています。
また、細かな配置に関しては、窓から見える風景を活かし、青山霊園側に緑の多い模型、町並みを望む側に街の模型を置き、それぞれのプロジェクトを、部屋の外まで広げています。必要とされた会議スペースは、会場と分離せず、あえて中央に置き、模型に囲まれた休憩スペースのようになっています。
この会場は、作品を見せるための背景であり、同時に、私たちの設計の仕方を原寸で体験できる作品でもあります。
>より多くの写真が成瀬猪熊建築設計事務所のウェブサイトに掲載されています。