
SHARE 津川恵理 / ALTEMYによる、東京の「まちの保育園 南青山」。ビル内の保育園。領域や活動が混ざりあい重なる在り方を目指し、“大らかな大地の様な床”や“曲線”で園全体を構成する計画を考案。見る人によって解釈が変わる“地形”は子供達に自由な発想での場の使い方を促す




津川恵理 / ALTEMYが設計した、東京・港区の「まちの保育園 南青山」です。
ビル内の保育園のプロジェクトです。建築家は、領域や活動が混ざりあい重なる在り方を目指し、“大らかな大地の様な床”や“曲線”で園全体を構成する計画を考案しました。そして、見る人によって解釈が変わる“地形”は子供達に自由な発想での場の使い方を促します。
「まちの保育園」を運営するクライアントがビル内保育園を新設することとなり、そのプロポーザルに採択された。
まちの保育園が大切にしたのは、さまざまな表現言語を通して子どもたちの創造性が引き出されること、アトリエ(園全体のアイデンティティ形成の場)では、個人もしくは小グループでの創造活動が起こり、コミュニティの場となることだった。
まちの保育園と対話を重ね、保育の可能性から建築が導かれた。
設計方針としては、①子どもたちの活動領域を建築が規定しないこと、②建築に対して自由な解釈が生まれる場とすること、③心躍り身体が動き出すような風景をつくることである。都市は勾配・凸凹を多く発見でき、多様な解釈で身体を介入させる余地がある。一方、建築と身体が触れ合う機会はほとんどない。その機会は家具に奪われている。そこに違和感を覚え、新しい内部空間の姿を模索した。
「まちの保育園 南青山」では、年齢や身長の異なる園児たちの活動に明確な境界を設けず、大らかな大地のような床や曲線で保育園全体を構成することで、各領域や活動が混ざりあい、重なっていくことを目指している。
0歳児・1歳児の乳児室は採光のため西側に配置し、必然的に乳児用トイレも隣接して配置される。そのため、ビル側の共用PSからの排水勾配を考慮し、乳児室の床レベルを構造スラブから500mm嵩上げする必要があった。しかし、ビル内の共用部から乳児室までは、バリアフリー法等により段差を一切設けてはならない。
避難経路や移動等円滑化経路の傾斜路、排水の経路といった計画上守らなければならない勾配を、コンピューテーショナルな技術も駆使しながら、ひとつの統合された「地形」として設計した。この「地形」は見る人によって解釈が変わる曖昧さを持ち、子どもたちが自由な発想で場の意味を見つけていく。曲線を描く平面線形は大きな地形に陰影を生み、個人がひっそりと隠れられる場所もつくる。陰と陽、その両方が現れる環境を意識している。
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以下、建築家によるテキストです。
感性のランドスケープ
「まちの保育園」を運営するクライアントがビル内保育園を新設することとなり、そのプロポーザルに採択された。
まちの保育園が大切にしたのは、さまざまな表現言語を通して子どもたちの創造性が引き出されること、アトリエ(園全体のアイデンティティ形成の場)では、個人もしくは小グループでの創造活動が起こり、コミュニティの場となることだった。
まちの保育園と対話を重ね、保育の可能性から建築が導かれた。
設計方針としては、①子どもたちの活動領域を建築が規定しないこと、②建築に対して自由な解釈が生まれる場とすること、③心躍り身体が動き出すような風景をつくることである。
都市は勾配・凸凹を多く発見でき、多様な解釈で身体を介入させる余地がある。一方、建築と身体が触れ合う機会はほとんどない。その機会は家具に奪われている。そこに違和感を覚え、新しい内部空間の姿を模索した。
「まちの保育園 南青山」では、年齢や身長の異なる園児たちの活動に明確な境界を設けず、大らかな大地のような床や曲線で保育園全体を構成することで、各領域や活動が混ざりあい、重なっていくことを目指している。
この保育園を設計する上でビル側から用意された室には、南面の大開口と、西面の小さな開口からのみ採光が確保されていた。保育園の多くを占めるアトリエは、南面からの採光を中心として、2~5歳児の一体保育の場として計画した。
0歳児・1歳児の乳児室は採光のため西側に配置し、必然的に乳児用トイレも隣接して配置される。そのため、ビル側の共用PSからの排水勾配を考慮し、乳児室の床レベルを構造スラブから500mm嵩上げする必要があった。しかし、ビル内の共用部から乳児室までは、バリアフリー法等により段差を一切設けてはならない。
避難経路や移動等円滑化経路の傾斜路、排水の経路といった計画上守らなければならない勾配を、コンピューテーショナルな技術も駆使しながら、ひとつの統合された「地形」として設計した。
この「地形」は見る人によって解釈が変わる曖昧さを持ち、子どもたちが自由な発想で場の意味を見つけていく。曲線を描く平面線形は大きな地形に陰影を生み、個人がひっそりと隠れられる場所もつくる。陰と陽、その両方が現れる環境を意識している。
完成した地形に少し戸惑う大人たちには脇目も振らず、子どもたちは走り回り、私たちも驚くような身体の躍動を見せていた。先入観がなく可能性に溢れた子どもたちが、環境と身体の触れ合いを通じて豊かな表現活動を生み、創造的な環境がつくられていくことを願っている。
■建築概要
作品名:まちの保育園 南青山
所在地:東京都港区南青山
主要用途:保育所
建主:ナチュラルスマイルジャパン株式会社
───
設計
建築・監理:ALTEMY 担当/津川恵理、小西隆仁、丁周磨、戸村陽
電気設備:EOSplus 担当/高橋翔、廣瀬尚也* (*元所員)
機械設備:Gn設備計画 担当/五木田正和
テキスタイル:Talking about Curtains 担当/佐藤未季
サイン:Donny Grafiks 担当/山本和久
家具制作(置き家具のみ):ナガサワ 担当/戸村健郁
特殊家具設計制作:studio arche 担当/甲斐貴大
エントランスアート:SHIMURAbros 担当/シムラブロス ユカ、ケンタロウ
───
施工
建築:ミライズ 担当/方田賢志
大工:一ノ瀬工芸 担当/一ノ瀬廣幸
空調:和合設備 担当/若月正弘
衛生:gleam 担当/森林俊之
電気:屋電工 担当/屋高弘
三次元腰壁制作:ヌーマ・アート・ワークス 担当/坂充央
特殊左官(隆起床):原田左官工業所 担当/江口克利、横山栄一、熊谷亨、滝田佳子、チッサ・ノー
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階高:4500mm
アトリエ:最大3150mm ※隆起床のため変動あり
乳児室:2850mm
主なスパン:7,200×16,200mm ※ポーラ青山ビル 本体の数値
敷地面積:2,465.81㎡ ※ポーラ青山ビル 本体の数値
建築面積:381.63㎡
延床面積:381.63㎡
設計期間:2022年3月~2023年10月
施工期間:2023年10月~2024年2月
写真:GION
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・床 | アトリエ 床(隆起部) | 左官仕上げ:カーサブランカベース コテ仕上げ(ハネダ化学)+トップコート エコビコ(オルトレマテリア) |
内装・床 | アトリエ 床(平面部) | コルクフローリング t=4mm:トッパーアートコルク AT-HM-05(東亜コルク) |
内装・床 | 乳児室 床 | フローリング t=12mmウレタン塗装:OK6TH 挽板フローリング [オーク] ウレタン艶消しホワイト(ナカムラコーポレーション) |
内装・床 | 幼児用トイレ、乳児用トイレ 床 | ビニル床シート:消臭トワレNW NS4856(東リ) |
内装・床 | 調理室 床 | ビニル床シート:NSアクアトレッド NS4406(東リ) |
内装・床 | エントランス 床 | ビニル床シート:マーモリウム リアル ML-3860(田島ルーフィング) |
内装・壁 | 主要箇所 壁 | ビニルクロス:WF7187(東リ) |
内装・天井 | 主要箇所 天井 | 岩綿吸音板 t=9.5mm:ソーラトン・スターダスト4柄(吉野石膏) |
内装・天井 | 調理室 天井 | ケイカル板 |
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