
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.003 KIAS イシダアーキテクツスタジオ「善福寺公園の住宅」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
KIAS イシダアーキテクツスタジオ「善福寺公園の住宅」
少し前のこと。KIAS イシダアーキテツスタジオによる、都内の住宅(1階の一部にアートギャラリーを内包)を拝見した。
緑豊かな公園に面した敷地。その特徴を余すことなく、(だけど極めて自然な形で)建築に取り込んでいて、そのスタンスと手腕に大きな感銘を覚えた、、、、!
現地で石田さんとも色々お話しすることが出来たのだけど、石田さんが経験を積んだ、ヘルツォーグ&ド・ムーロンのお話や、スイス建築の考え方の話、レイチェル・ホワイトリードなどのアーティストの話など、建築と思想の背景にある膨大なレファレンスのお話も伺えたのが興味深かった。
やはり、建築を設計者の固有の経験と解釈の束のように考える見方が、僕自身は好きだなと。
1階のギャラリーは、ホワイトキューブなのだけど、公園側の面に大きな開口部が取られていて、公園の緑がまるで、ギャラリーの壁のように感じられるのが凄く良かった。ホワイトキューブでありつつ、サイトスペシフィックな空間になっている感覚があった、、、、!
ちょうど展示されていた作品群が赤いペインティングだったのだけれど、緑との補色関係でお互いが輝いて見えた。
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2階の居住空間に上がると、リビングに大きな丸窓が。
丸窓は、個人的に近年は篠原一男を参照して使われる印象が多かったのだけれど、石田さんに伺ったところ、自然を空間に持ち込もうと考えて、辿り着いたのが丸窓だったのだそう。
日が差し込んだ時に、室内に円形や楕円形の光と影が浮き上がるとのこと。伺った時間帯は日が差し込んでいなかったので、実際には体験できなかったのだけれど、矩形の窓から入る光とは違った意味を持つ光を導入できることは想像ができた。
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また、丸窓の横には、公園に面して大開口が設けられており、あえて壁の厚みを感じされるように額縁が回されている。建築家による住宅などでは、額縁は、消されることも多いのだけど、その存在に向き合うと、額縁が必要とされる場面も存在するのだと気付かされる。
建築全体を回ってみて細部に至るまで非常に丁寧に設計されて作られていることがよく分かるし、非常にアイデアが込められた建築であるにも関わらず、なにかそれが当然のことというように存在しているようなある種の「王道感」も兼ね備えているのが印象的だった。
なんというか、日本だけど日本ではない、並行世界のようなものが存在しているとして、その世界にとってのスタンダードな住宅という感覚というか、、、、、。
長くスイスで建築に向き合い、その思想と、日本での経験や建築思想を融合しながら、独自の建築をつくり続けている石田さんのスタンスは、興味深いし、状況を客観視するような視点もあり、非常に勉強になった、、、、!
そして、今回の内覧会でも、一階ギャラリーにて、珈琲やレモネードが振舞われていて、そのホスピタリティにも驚かされた、、、、!(お施主さんと仲が良いカフェが出張してくれたとのこと)(前回の石田さんによる集合住宅の内覧会時にもスタバのコーヒーが振舞われていた)
こういうイベントや状況を考えることもまた建築なのだと言っているようにも感じられた、、、、!
お施主さん、石田さん、ご竣工おめでとう御座います!!!
(訪問日:2025年7月26日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。22年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するWebメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。



