SHARE 藤本寿徳建築設計事務所による”須波の家”
以下、建築家によるテキストです。
「須波の家」
敷地は瀬戸内海を望む新興住宅地にある。
設計にあたっては海への眺望がいいだけの家でなく、瀬戸内海に漂うのどかでおおらかなひろがりがそのまま室内空間に持ち込まれたような住宅を目標とした。
敷地や室内のどこに立っても海が見えるような平面である。山側に中庭を設けることで海側だけでなく山側にも生活が開かれ、海と山との間にあるこの一帯の広がりそのものが生活の場として意識できるようにした。
おおらかな空間を実現するためにシェル構造の屋根とした。スラブ厚120mmシングル配筋、大きさは10m×18mである。中庭を含む室内外全体を包みこむことで、屋内と屋外との意識の違いが少ない住空間となっている。
屋根は深い庇で直射日光を遮ると同時に、視線を下方に広がる海へ向かわせる形状となっている。
アーチのスラストを押さえるために通常必要となる海側の通りの柱や梁が大きくならないよう平面的に工夫した。間仕切り壁がスラストに抗するよう部屋を配置し、水廻りや収納の配置はXY方向のバランスが良い耐力壁となるよう決定している。
シェル中央を支える柱はやじろべえの支柱のようにはたらかせることで細くすることができる。断面寸法は100×60mm、100×100mmである。この柱をサッシに組み込むことでさらに室内外の境界を希薄にすることができる。
恣意的な決定を避け、生活のシークエンスや室内環境、敷地の周辺環境との対応を同時に叶える空間構成が、単純な構造形式で成立している豊かでシンプルな家を理想としている。
■建築概要
所在地:広島県三原市
設計:藤本寿徳建築設計事務所
竣工年:2009年
構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
規模:
敷地面積 308.54㎡
延床面積 115.58㎡