SHARE 永山祐子 / 永山祐子建築設計による香川県土庄町の「豊島横尾館」
photo©Nobutada Omote
photo©Daichi Ano
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以下、建築家によるテキストです。
豊島横尾館
2013年の瀬戸内国際芸術祭、夏会期に開館した横尾忠則氏の美術館。瀬戸内海豊島の港町家浦の集落の3棟からなる古民家のリノベーションと一部増築を行った。非日常空間と日常空間が隣りあう特徴的な敷地であった。この美術館で目指したのは建築と作品が一体となった空間。建築という3次元表現を絵画的な2次元表現に近づける事を考えた。色彩情報を消す赤ガラス、明度をコントロールする黒ガラス、反射面としての効果を持つガラスなど様々なスクリーンによって空間の中に2次元的シーンが生まれる。赤ガラスは美術館のテーマである“生と死”、 隣り合う“日常と非日常”の境界としてある。片方の世界からもう一方の世界を見た時、風景はモノクロに展開する。横尾作品である庭の赤い石も消える。横尾作品のコラージュのように、作品とスクリーンによって生まれたシーンが3次元空間の中で一体となっている。シーンは人の動き、太陽の光の状態で刻一刻と変化する。一度として同じシーンの組み合わせはない。「生と死」は横尾忠則作品の根底にあるテーマであり、私たちの日常の中に流れる共通のテーマでもある。常に変化し、循環し続けるシーンの集合体として豊島横尾館を考えた。
地域とのつながり
この美術館の重要な役割は高齢者の多く住む離島の日常の中に活力を与える新しいきっかけとなる事であり、それがクライアントの強い思いであった。地域の人々と美術館が作られていく過程、さらに美術館そのものを共有するために、美術館をよく知ってもらう機会を設けてきた。餅撒きイベントを通しての説明会。瀬戸内国際芸術祭の期間中には赤いガラス越しに建設過程が見られるようにした。庭のインスタレーションの池底のタイル絵は住民と一緒に製作した。「生と死」のテーマから、この場所で葬儀も行えるようになっている。美術館であると同時に地域の重要な拠所となり、生命の循環のエネルギーがこの美術館からはじまって地域全体に広がっていくことを望んでいる。開館直前の島民への内覧会の際には1000人程度の人口のうち3割強の人が訪れ、その非日常空間をまっさきに体験してもらった。今では島のおじいさん、おばあさんたちが芸術祭で訪れる人々に豊島横尾館の話をしてくれる。
■建築概要
豊島横尾館
アートワーク,コンセプト : 横尾忠則
建築設計 : 永山祐子建築設計 / 担当 : 永山祐子,山岸大助
構造設計 : 昭和女子大学 森部康司研究室
施工 : ナイカイアーキット
所在地 : 香川県土庄町
TESHIMA YOKOO HOUSE
art and concept : Tadanori Yokoo
architects : YUKO NAGAYAMA & ASSOCIATES
敷地面積 444.27m2
建築面積 184.88m2
延床面積 179.65m2
階数 地上1階 一部2階 構造
木造 一部鉄筋コンクリート造
工期 2012年11月~2013年7月