SHARE Eurekaによる愛知県岡崎市の集合住宅「Dragon Court Village」
photo©Ookura Hideki / Kurome Photo Studio
Eureka/稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐が設計した愛知県岡崎市の集合住宅「Dragon Court Village」です。
以下、建築家によるテキストです。
地域・環境へと開かれた低密度な住宅群
9戸の賃貸長屋の計画。敷地はひとりが一台の車を所有する車社会の郊外住宅地である。各世帯が2台の駐車スペースをもち、敷地半分を車路と駐車場が占める。そして自然と導かれる法定容積を下回る低密度な計画条件のもとに、隣家と余白を共有し、地域・環境へと開かれた住宅群を目指した。
路地状空地が取り巻くポーラスな環境
風が通り抜け日陰を生み、室単位では無く群として快適な空間の秩序へと至るポーラスな建築である。サーキット状の路地と駐車スペースによって建築は周囲に余白をもち、風環境のシミュレーションによってボリュームが調整されることで半屋外空間が建築内を貫通する。この半屋外空間と来客を招き入れるアネックスを介して、生活が屋外・他者へと開かれ、さらには路地、地域にまで展開されることを意図した。駐車スペースは、高齢化やカーシェア等により車が減る将来、菜園やガーデニング、ドッグランなどへ転用され、建築は地域へ開かれたアクティビティに包まれる。
軒下空間の多様な領域性と共有
全体のボリューム構成は、5つのチューブ状の立体が入り組み、概観を許さないものとした。9つの住居は類似と差異をもった空間群の集合であり、全体としては大きなひとつの住居でもある。また、住戸間に配置したアネックス、ボリュームを横断するように設置した木の骨組みや地上部の基壇によって、各戸の区分や居住者の領域をさらに曖昧なものとしている。こうして生じる多重の領域性により、戸外に多様な共有の度合いが生まれることを計画した。
持続可能な住居の集合形式
今日の世界的な気候変動や異常気象を背景に私たちが行っているアジアでの都市・集落のフィールドワークにおいて、自然災害に柔軟な居住文化や環境に親和した慣習的な建築の振る舞い、またそれを継承する営みに出会う。そして同時に、土着的・伝統的な建築・集落の観察は、都市化が進む中でのそれの破壊と社会変化の受容をみることになる。時にイリーガルな高密度化を余儀なくされながらも、どうにかやりすごす暮らしは、半透明でグラデーショナルな空間の質と共にある生活の曖昧さ、つまり建築の寛容と更新性に支えられるところが大きい。この建築においてはそれらを具体的に援用した。具体的には、主室の下階、軒下に広がる空間であり、時間的変化を伴って生じる専有や複数世帯での共有を寛容する。また、木の骨組みが促す環境調節などの空間運営性、また余白の多い建て方が担保する増築などの更新性が、持続可能な集合居住を可能にすると考えた。
■建築概要
設計:Eureka/稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐
施工:太啓建設
所在地:愛知県岡崎市
用途:賃貸集合住宅
規模:地上二階
構造:木造(一部鉄骨造)
敷地面積:1177㎡
建築面積:360㎡
延床面積:508㎡