SHARE KUUによる中国上海の宿泊施設「TRAIN INN」
photo©Eiichi Kano
KUUが設計を手掛けた中国上海の宿泊施設「TRAIN INN」です。
ドイツ製の寝台車と中国製の食堂車をコレクトしていたクラインアントが、それらをそのまま利用してイン(小さな宿)として再生させるというプロジェクトである。我々に連絡が来た時は既に電車は敷地に配置済みで、それに合わせたプラットフォームとその上の屋根も施工中であった。当初依頼されたのは寝台車3台と食堂車2台の内装設計であったが、打ち合わせをしていく中で、レセプション機能を持つ小さな建築とその周りに生まれるであろう広場のデザインも受けることになった。
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以下、建築家によるテキストです。
TRAIN INN
ドイツ製の寝台車と中国製の食堂車をコレクトしていたクラインアントが、それらをそのまま利用してイン(小さな宿)として再生させるというプロジェクトである。我々に連絡が来た時は既に電車は敷地に配置済みで、それに合わせたプラットフォームとその上の屋根も施工中であった。当初依頼されたのは寝台車3台と食堂車2台の内装設計であったが、打ち合わせをしていく中で、レセプション機能を持つ小さな建築とその周りに生まれるであろう広場のデザインも受けることになった。
ここでの主役はあくまで電車そのものであるため、新築される建築を脇役にまわすべく配慮した。むしろ重要だったのは既に建ち上がっていたプラットフォームやその上の大屋根等の「強い」要素を、広場や電車間の空間と共にランドスケープで持って、何とかまとめることであった。
そこでランドスケープとして家具や照明を積極的にデザインし、この場に合う賑やかな環境を作ることとした。スチールで強いカーブを描く照明器具、その照明と一体化されたレンガブロックによるベンチ、木製テーブルとスツール、形が幾通りかあるセメント板の床そして植栽。それらを人がどのようにこの広場を歩き回るかを想像しながら配置した。木製家具は移動できるため、イベントごとに人の流れを組み直すこともできる。配置によってできたパターンはコンポジションでなく、またランダムでもない、雑多で自然な環境を作るものとしてそこに存在し得るよう考えた。
レセプション建築は幅を薄く、高さを高く、ガラスで覆い、また一番手前に配置することで中の広場や電車を見通せるように計画した。この建築を広場の一部分として扱う意図から、そのアウトラインを長方形平面のような定型でないくだけたものとし、エッジを使用目的に合わせて欠くなどしている。エントランス部のくぼみに始まり、外部カウンターと内部の席を近づけたり、内部から外部へと続くようなレンガのベンチ部でカーブにしたりと、直近の内外の関係を特徴づける仕組みを持つ。
都心部から地下鉄で20分くらいの郊外にあり、ベッドタウンとしての開発を待つ周辺環境は、倉庫や卸売業などが立ち並び、どちらかというと殺伐としている。そんな場所に唐突に現れたこの施設はテーマパーク的なスタートでありながら、実際には近所に住むお年寄りや子供による公園のような使われ方や、近所のホワイトカラーによる食堂的な利用がなされ、そのあり方は微笑ましいものになっている。
■建築概要
プロジェクト名:TRAIN INN
設計:KUU (K.M. Tan、佐伯聡子、Zhen-Yan Wu , 松下晃士)
写真:Eiichi Kano
竣工:2013年11月
場所:中国上海