SHARE 1-1 Architectsが計画を進めている、ジンバブエの児童養護施設「HC3 – Harare Child Care Center –」
1-1 Architects(神谷勇机+石川翔一)が計画を進めている、ジンバブエの児童養護施設「HC3 – Harare Child Care Center –」です。このプロジェクトは現在クラウドファウンディングで資金を集めています。
また、この計画は、SDレビュー2014に入選しています。
アフリカのジンバブエに児童養護施設を計画した。
– 敷地 –
ジンバブエは、アフリカ南部に位置する国であり、計画地はその首都ハラレの郊外の貧困層が住む、決して治安が良いとは言えない場所である。
※以下の写真はクリックで拡大します
– 施主 –
施主は、ジンバブエにて現地語(ショナ語)を教える語学講師であり、過去に身内をエイズで亡くした経験を持つ。そのため、彼女は両親をエイズなどで亡くした孤児を助けたいという強い想いを持っていた。しかし、敷地はあるが、建屋の資金までは工面できない状況で、現地の設計事務所に依頼できず、我々に相談が持ちかけられた。– 背景 –
ジンバブエでは、孤児を親族が引き取ることが法規で定められているため、子ども達は寝る場所はあるが、食事を与えられない状況が多く存在する。ジンバブエには食事を提供する施設がまだまだ少なく、子どもたちが食事を求めて毎日何十kmも歩き続けなければならず、その道中での悲惨な事故も後を経たない。
– 建築プロセス –
この施設は子ども達に食事を与え、安心できる場を提供することを目的としている。地域住民や現地の建築学科の生徒で、建築に使用するレンガから一緒に作成し、それを組み上げるというプロセスをふむことで、人のつながりを生み、コスト削減だけでなく、地域の治安改善や使用者の所有意識を高める。そのため、誰もが建設に参加できるプランや現地の構法を採用した。これは、将来のメンテナンスも容易にする。
さらに、縮尺模型ではあるが、実際に約5万個のレンガを積み上げるというプロセスを経験し、ひとつひとつ手順を確かめながら、現地の住民が問題なく施工できるかどうか確認した。さらに、この模型をもとにジンバブエの学生とともに1/1の部分モックアップを作成することで、空間と工法の確認を行った。
– 平面計画 –
まず、防犯のために敷地境界線上に壁を建て、そこから3m離したところに建物の外壁を配置する。この壁は防犯上、この地域ではどうしても必要であるため、建物の壁を透き積みにすることで、コスト削減と子どもたちの目線での空間の広がりを感じられるように配慮した。建物の周囲には水回り等の機能を配置し、残りの部分に広い共用部を設け、 透き積みの腰壁でゆるやかに区切ることで、分節されつつも、同一の空間を共有できるよう意識した。
– 資金計画と持続性 –
現在我々は、クラウドファンディングを利用して資金を集めている。
https://readyfor.jp/projects/Zimbabwe_HarareChildCareCenter
従来にはなかった「多くの個人からの小額資金の流れ」をつくることが目的である。最終的にこのプロジェクトやプロセスをまとめた本(資料)を製作し、現地に残すことで、自ら企画し、自ら資金を集め、自ら設計し、自ら施工するノウハウを残せると考えている。そして、それが今後ジンバブエにおいて、建築家のいない状態でのケアセンターの増設に必要に有効である。この建築はプロトタイプにすぎない。彼らの手でケアセンターが複数建設されて、はじめてこの建築が意味を持ち始める。
我々は、単にボランティアをしているのではない。「建築」を通して、途上国の状況を変える仕組みをつくりたいと考える。
■建築概要
作品名:HC3 – Harare Child Care Center –
所在地:ジンバブエ ハラレ
敷地面積: 599.20m2
建築面積: 300.24m2
延床面積: 297.24m2
構造:レンガ造
外部仕上レンガ表し
内部仕上げ:レンガ表し(一部モルタル)
設計期間:2014年2月~2014年7月
施工期間:2015年1月~2015年4月(予定)
設計:1-1 Architects(神谷勇机+石川翔一)