SHARE 中村拓志 / NAP建築設計事務所による、広島県尾道市の「Ribbon Chapel」
all photos©Koji Fujii / Nacasa and Partners Inc.
中村拓志 / NAP建築設計事務所が設計した、広島県尾道市の「Ribbon Chapel」です。
また、この作品は、ヨーロッパ主要建築家フォーラムによるアワード「リーフ賞」最高賞を受賞しました。
敷地は造船業を営む企業が経営するリゾートホテルの一角。瀬戸内海を臨む結婚式用のチャペルである。我々はこの建物に美しい島々を眺望するための展望台を設けることを提案。木登りをした人が木の幹からそっと頭を出して外の景色を覗き込むように、建築も木々の隙間から控えめに頭を出そうと考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は造船業を営む企業が経営するリゾートホテルの一角。瀬戸内海を臨む結婚式用のチャペルである。我々はこの建物に美しい島々を眺望するための展望台を設けることを提案。木登りをした人が木の幹からそっと頭を出して外の景色を覗き込むように、建築も木々の隙間から控えめに頭を出そうと考えた。形状は二本の階段によるダブルスパイラル。2つの鉄骨階段が脚となって建物を支え、階段同士はダンパージョイントによって揺れを吸収した上で、基礎は免震構造とした。その結果わずか直径100ミリの繊細な柱で支持することが可能となり、スパイラルリボンが自律的に上昇気流を描く外観となった。バネに似た形状のため、支保工を外すと40ミリ沈み込むことが予想されたが、それを計算に入れた設計がなされた。このような複雑な鉄骨架構は、造船職人たちの高度な技術によって実現可能となった。
別々にスタートした二本のリボンが、ゆったりと上昇スパイラルを描きながら一つになる様は、新郎新婦が晴れて一つになる結婚までの道のりを象徴している。実際、式の中で新郎新婦が別々のスパイラル階段を徐々に昇って最頂部で出会い、抱擁し、庭で見守る参列者から祝福されるという式典も想定している。我々は、このようなふるまいそのものをシンプルに建築化したのである。
■建築概要
作品名:Ribbon Chapel
所在地:広島県尾道市
主要用途:礼拝堂
敷地面積:3000㎡
延床面積:72.2㎡
階数:地上1階
敷地条件:都市計画外
主要構造:鉄骨造
杭・基礎:独立基礎 免震構造
竣工:2013年1月
以下は、リーフ賞受賞にあたってNAP建築設計事務所が公開したリリースです。
株式会社NAP建築設計事務所(所在地:東京都世田谷区)は、当社代表である建築家 中村拓志が設計した「Ribbon Chapel(リボンチャペル)」が、次世代の世界基準となる建築デザインに与えられる「リーフ賞」最高賞を受賞したことを発表します。
日本人の最高賞は2012年の藤本壮介氏以来、二度目となります。
「Ribbon Chapel」は広島県尾道市のリゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」にある礼拝堂で、主に結婚式用の教会として使われています。
リーフ賞は、ヨーロッパ主要建築家フォーラム(Leading European Architects Forum)の運営で、次世代の基準となる作品を評価し、建築デザインの発展を目的とする国際建築賞。
中村 拓志
1974年東京生まれ。神奈川県鎌倉市、石川県金沢市で少年時代を過ごす。
1999年明治大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。
同年隈研吾建築都市設計事務所入所。2002年にNAP建築設計事務所を設立し、現在に至る。
建築をコミュニケーションデザインと考え、人が自然や建築と関わり、愛着を感じることをモットーに設計している。
■関連リンク
>新建築2014年7月号