SHARE 五十嵐淳建築設計事務所による、北海道江別市の住宅「大麻の勾り家」
all photo©Sergio Pirrone
五十嵐淳建築設計事務所が設計した、北海道江別市の住宅「大麻の勾り家」です。
敷地は江別市中心部と札幌市のちょうど中間点に位置する大麻という街にある。札幌駅まで電車で20分という立地により1964年前後からベッドタウンとして開発が進み、札幌市などからの転入者が急増した典型的なニュータウンであるが、現在は高齢化も進み、今回の建物が竣工した直後にも、南側の住宅が壊され、おそらく来年の春から工事が始まり住宅が建つことが予想される。「House D」や「hat H」の敷地もそうであったが、設計の拠り所とはならない、周辺のコンテクストである「ささやかな状態」と、そのずっと向こう側に存在する「大きな状態」とをバランス良く思考しながら設計を進めた。
※以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
「大麻の勾り家」
敷地は江別市中心部と札幌市のちょうど中間点に位置する大麻という街にある。札幌駅まで電車で20分という立地により1964年前後からベッドタウンとして開発が進み、札幌市などからの転入者が急増した典型的なニュータウンであるが、現在は高齢化も進み、今回の建物が竣工した直後にも、南側の住宅が壊され、おそらく来年の春から工事が始まり住宅が建つことが予想される。「House D」や「hat H」の敷地もそうであったが、設計の拠り所とはならない、周辺のコンテクストである「ささやかな状態」と、そのずっと向こう側に存在する「大きな状態」とをバランス良く思考しながら設計を進めた。全面道路側には二台分の駐車スペースと冬場の排雪の堆積スペースを考慮しつつ、同時にアトリエ空間に安定した採光を取り入れる為、ほぼ真北へヴォリュームを振り大きな開口を開ける。この開口部は採光の為であるのと同時に大麻駅へ向かう人達にアトリエでの作業を知っていただく役割も兼ねている。これらの操作により、必要スペースの確保やその他の与件をクリアーしつつ、古い街区にたいしての繋がりのような構えを得た。一方、庭側についても、この平面配置計画により多様な与件に対応している。庭側の隣地の角には家型の小屋を設置し母屋や、北海道特有の塀などを立てずに曖昧な領域が何となく連続していく状態を考慮し、周辺の隙間と関連していくような庭を南に向けて確保。その庭にたいして室内と屋外のキッカケとなる縁側のような空間を設置している。この縁側は平面の「くぼみ」と絡み合うことで、より関係性を強めている。縁側の屋根は光を柔らかく拡散するフロスト状のポリカーボネイトを使用。内部は、道路側から真ん中に配置された部屋に入ると右側に凍結深度分下がってアトリエがあり、左側にはLDKなどの主室を配置。箱と箱を小さな縁側のような場所が空間同士を繋いでいる。アトリエでは様々の画材や素材を使用するのだが、孤立した空間とはならないように他の空間と繋がりながらも離れている、または離れているようで繋がっているような感覚となるように考慮。2階にはベッドルームなどを配置し小さな縁側の位置だけが1階から反転している。単純な幾何学な平面でありながらも、多様で複雑な空間体験をしながら日々の生活が繰り広げられ、さらに多様の外部との関係性も得られるような建築となっている。
■建築概要
延床面積:98.70㎡
設計期間:2013年9月〜2015年5月
工事期間 2014年12月〜2015年5月
設計:(株)五十嵐淳建築設計事務所
構造設計:長谷川大輔構造計画
施工:(株)丸繁 赤坂建築
写真:Sergio Pirrone