SHARE 竹田和行建築設計事務所+創楽建築設計事務所による、東京・駒込の、既存空家の寮を、地域の人が集まる居場所に改修した「こまじいのうち」
all photos©傍島利浩
竹田和行建築設計事務所+創楽建築設計事務所による、東京・駒込の、既存空家の寮を、地域の人が集まる居場所に改修した「こまじいのうち」です。また、竹田のウェブサイトでは、この建築の改修プロセス等の写真も見る事ができます。
一軒の空き家がつくった地域のつながりがある。東京の駒込にある「こまじいのうち」は地域の人が集まる居場所として平成25年10月にオープンした。この空き家はもともと寮であったため部屋が細かく分かれていた。そのため建物の約半分は物置となっていた。設計の依頼を受けたとき、物置のスペースを地域に解放するとともに、「こまじいのうち」が自立自転できる仕組みをつくることが望まれた。(現在はオーナーのご厚意で使用料をほぼ取らずに運営されている。)壁を壊して空間を広げ、一階はより多くの人が集まれるようにし、2Fはシェアオフィスとして収益源となるスペースにする。
※以下の写真はクリックで拡大します
以下は、建築家によるテキストです。
公共のセルフビルド
一軒の空き家がつくった地域のつながりがある。東京の駒込にある「こまじいのうち」は地域の人が集まる居場所として平成25年10月にオープンした。この空き家はもともと寮であったため部屋が細かく分かれていた。そのため建物の約半分は物置となっていた。設計の依頼を受けたとき、物置のスペースを地域に解放するとともに、「こまじいのうち」が自立自転できる仕組みをつくることが望まれた。(現在はオーナーのご厚意で使用料をほぼ取らずに運営されている。)壁を壊して空間を広げ、一階はより多くの人が集まれるようにし、2Fはシェアオフィスとして収益源となるスペースにする。
設計をはじめる前に何度か建物を訪れた。建物の状態は悪く、外階段は錆びて朽ちており、内壁の仕上げも剥がれてボロボロになっているところもあった。そのような建物に何故か多くの人達が集まってくる。近所の子供からお年寄りまで、みんなが自由に過ごせる場所。小さなスペースが足の踏み場もないほど、人であふれているときもある。オーナーが空き家を地域に解放することで自然発生的にコミュニティが形成されていた。それは昔、街にテレビが一台しかなかった時代に、テレビ目当てに人が集まって自然とコミュニティが形成されていたような光景に近いと思う。行政が管理的に提供する立場、市民が供給される立場であるような、「つくられた」公共ではなく、市民が自ら公共を「セルフビルド」していく新しい公共である。
リノベーションの費用は全て地域の利用者から集めた。また、地域の人達にDIYで参加してもらい個々人の想いが建築に残るようにした。そしてお金をかけずに空間を広げていくことを優先した(坪単価9万円)。そのためただ解体しただけの荒々しい空間やそのまま残された和室、新しく仕上げた白い壁、移設して再利用された古い建具、子供の身長が刻まれた柱、近所の留学生がボール紙でつくったスイッチプレート、オーナーのおじいさんが手づくりした看板、昔の職人がつくった欄間など、異なる性格のものが一つの空間に同時にある。そのような異なるものの集まりが順序なく混ざり合い、自然に存在しているような状態を目指している。「つくられた」感じのしない建築を、多くの人の「セルフビルド」の集積によって実現する。
■建築概要
作品名:こまじいのうち
所在地:東京都文京区本駒込
建築面積:70㎡
延床面積:100㎡
主要構造:木造
竣工:2016年7月
企画:林宏興
設計:竹田和行建築設計事務所+創楽建築設計事務所
構造:小坂大和
施工:松田建設+自主施工
撮影:傍島利浩