SHARE 成瀬・猪熊建築設計事務所による、東京都世田谷区の「経堂のカフェ併用住宅」
all photos©長谷川健太
成瀬・猪熊建築設計事務所が設計した、東京都世田谷区の「経堂のカフェ併用住宅」です。
これは住宅と、そこに住まう住人が営むカフェの、小さな複合建築である。
経堂の駅前商店街から一本入った住宅地に建っていた築50年の木造戸建て住宅を、既存の構造躯体を可能な限り残しながらスケルトンまで解体して、1階がカフェ、2階が住居という店舗併用住宅としてリノベーションした。
店舗併用住宅というビルディングタイプは、決して新しいものではないが、こうして店舗と住宅と関係を丹念に調整することで、ただ両者が隣接しているにとどまらない価値を作り出すことができる。住居にとってカフェは、住まい手が主体的にコントロールできる一番身近なパブリックスペースとして、位置付けられてゆく。
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以下、建築家によるテキストです。
住まいの延長としてのマイクロパブリックスペース
これは住宅と、そこに住まう住人が営むカフェの、小さな複合建築である。
経堂の駅前商店街から一本入った住宅地に建っていた築50年の木造戸建て住宅を、既存の構造躯体を可能な限り残しながらスケルトンまで解体して、1階がカフェ、2階が住居という店舗併用住宅としてリノベーションした。
具体的には、1階において、あえて平面を長手方向に2つに割くことで、前庭から裏庭まで貫通するカフェ空間を作り出すとともに、住居専用の玄関をカフェに圧迫されることなく確保した。住居エリアとカフェエリアは、床をモルタル仕上げの土足仕様とし、平面的に奥のテーブルスペースでつなげることで、建具の開け閉めで、領域を可変的に扱えるようにした。これによって住まい手は、必要に応じてカフェの一部を切り取り、一つの建物に居ながらにして、土足で過ごすことのできる「はなれ」を手に入れることができる。
断面的には、1階のカフェと2階の住居を幅340mmの細長い吹抜けでつなぐことで、高さ方向にも広がりを感じさせることを試みた。吹抜けには高さ900mmの腰壁を設けることで、1階のカフェからは2階の天井とトップライトだけが見え、2階からは身を乗り出すとカフェの様子を垣間見ることができるという、カフェ利用者と住まい手のどちらにとっても効果的な要素となっている。加えてここでは腰壁の上部をアクリルで塞ぐ一方、吹抜けを超えて連続する壁の仕上に特徴を持たせることで、音を防ぎながらも視覚的連続性の高い空間を実現した。
店舗併用住宅というビルディングタイプは、決して新しいものではないが、こうして店舗と住宅と関係を丹念に調整することで、ただ両者が隣接しているにとどまらない価値を作り出すことができる。住居にとってカフェは、住まい手が主体的にコントロールできる一番身近なパブリックスペースとして、位置付けられてゆく。
■建築概要
建物名称:経堂のカフェ併用住宅
所在地:東京都世田谷区経堂1-12-15
主要用途:店舗併用住宅
設計:
成瀬・猪熊建築設計事務所
担当:成瀬友梨 猪熊純 長谷川駿 大田聡(元所員)
構造 会社名 ㈲高橋建築工房 担当/高橋政則
コンサルティング 株式会社リビタ 担当/大嶋亮
施工:
山内工務店 担当/山内邦彦
工程:
設計期間 2015年4月-2015年10月
工事期間 2015年11月-2016年4月