SHARE arbolによる、兵庫・明石の住宅「明石の家」
arbolが設計した、兵庫・明石の住宅「明石の家」です。
この住宅は、兵庫県明石市の中心市街地から近く、明石城跡から続く丘陵地を切り開いた閑静な住宅地に立地する。
限られた敷地面積の中に、3つの中庭のある平屋とした。風や光、過ごし方に応じて庭を膨らませ、木の箱で囲んだ。プライバシーを確保しながら、身近に自然を取り込むとともに、室内から外へどこまでも拡がりも感じられるような、外と内の垣根を越えた豊かな暮らしを追求した。
建物の構成は、エントランスから奥に行くにしたがって3段階に分けられ、それぞれにちょっとした家庭菜園などを楽しめる中庭を持つ。手前は昔ながらの土間と家族のフリースペースである和室と「畑のある庭」、真ん中はセミパブリックなリビングダイニングと「観賞用の庭」、奥はプライベートエリアと洗濯物のための「ドライエリア」としている。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
3つの中庭に寄り添う平屋
この住宅は、兵庫県明石市の中心市街地から近く、明石城跡から続く丘陵地を切り開いた閑静な住宅地に立地する。
限られた敷地面積の中に、3つの中庭のある平屋とした。風や光、過ごし方に応じて庭を膨らませ、木の箱で囲んだ。プライバシーを確保しながら、身近に自然を取り込むとともに、室内から外へどこまでも拡がりも感じられるような、外と内の垣根を越えた豊かな暮らしを追求した。
建物の構成は、エントランスから奥に行くにしたがって3段階に分けられ、それぞれにちょっとした家庭菜園などを楽しめる中庭を持つ。手前は昔ながらの土間と家族のフリースペースである和室と「畑のある庭」、真ん中はセミパブリックなリビングダイニングと「観賞用の庭」、奥はプライベートエリアと洗濯物のための「ドライエリア」としている。
「畑のある庭」には、収穫も楽しめるよう、ブドウの樹を植えた。釣りが趣味なご主人のために、釣り竿のしなりをチェックするためのスペースでもある。「観賞用の庭」は昼間だけでなく、夜は室内の明かりを消して外部照明により庭の植栽が浮き上がるような非日常的なシーンも想定している。「ドライエリア」は、食卓に座ったときにリビングダイニングからの一部の視線は遮りながらも、足元の植栽や空の移り変わりが楽しめるよう窓の位置を工夫している。エントランスの土間には、薪ストーブを計画した。冬場にぱちぱちと燃える薪の音を子供たちに感じてほしいという、建主の思いが込められており、家族が薪ストーブを囲んでスキレット料理や焼き芋をして季節を楽しむ姿を想像しながら計画した。
自然採光については、太陽の直射日光というよりは、北側採光や外壁にバウンドした光、冬の日に静かに室内の奥まで差し込む西日、朝の思わぬ場所から落ちてくる光、木漏れ日のゆらぎ、3つの中庭に囲まれたリビングダイニングが、柔らかく穏やかな光に包み込まれるようなイメージである。
周辺環境に対しては、プライバシーに配慮して閉じられた建物でありながらも、木の表情が豊かな外壁や植栽によって街路をゆく人々の目を楽しませ、夜になると通風のためのスリットからわずかにこぼれる光によって、生活感のある温かな印象を生み出したいという思いで計画した。
素材については、床や外壁、普段は地味な役回りの胴縁や根太、垂木にも、工務店のこだわりがある多様な樹種を使ったことも特徴の一つである。
杉、ヒノキ、ヒバ、スプルース等、木の扱いに素晴らしく長けた工務店であったため、実現が可能となった。また、家具や造園、照明、インテリアは、建物全体とのイメージやライン等のバランスを整え、その意図をくみ取った各スペシャリストによって、一つ一つ丁寧に作り込まれていった。
3つの庭を介して、植物や土に触れ、風の心地よさや空の模様を楽しみ、季節や時間によって刻々と変わる陽の光を、室内に居ながらにして感じとる。暮らしの中に自然や植物を織り込むことで、日々の中でのささやかな気づきが生まれ、豊かな感性が育まれる住まいとなることを願う。
■建築概要
敷地面積:172.81 ㎡
延床面積:81.07 ㎡
1階床面積:81.07 ㎡
所在地:兵庫県明石市
クライアント:夫婦+子ども3人
仕上:外部 外壁:無垢板貼
内部 床:無垢板貼・琉球畳 壁:珪藻土塗 天井:珪藻土塗
工事期間:2017年1月~2018年07月
基本設計・現場監理:arbol
実施設計:arbol + はすいけ
施工:株式会社笹原建設
外構:荻野寿也景観設計
撮影:下村康典
照明:株式会社パルコスペースシステムズ
家具:萬代製作所