SHARE Eureka / 稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐による、埼玉の住宅「Eagle Woods House」
Eureka / 稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐が設計した、埼玉の住宅「Eagle Woods House」です。同作品の動画はこちらにあります。
敷地は、関東平野の中央を流れる古利根川の、自然堤防として生まれた森である。土砂が堆積し形成された森は、古くから村落が広がってきた。現在は圏央道などの整備や住宅地開発が進み、変化のただ中にある。一方、建主の幼期の遊び場だった森は、ここ20年暗く閉ざされ、下草が繁茂し、光が地表まで届かない状況だった。
そこで、まず森に分け入り、野帳に樹木植生や地形、環境、眺望、森を貫く計画道路等を記して地図を描いた。家族は将来、子供部屋や仕事場を森に増築する予定で、地図は、森の将来像を含めたものとなった。これは、森の緩やかな形成史を継いでいくように、新しい家族の暮らしを重ねていく作業である。今日、自然災害や気候変動により、大地の自明性が失われる中、住居を土地の大きな物語と結び、一方本来固定しない、変化する生活のダイナミズムを召喚する。
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以下、建築家によるテキストです。
棲むためのフィールドノート
敷地は、関東平野の中央を流れる古利根川の、自然堤防として生まれた森である。土砂が堆積し形成された森は、古くから村落が広がってきた。現在は圏央道などの整備や住宅地開発が進み、変化のただ中にある。一方、建主の幼期の遊び場だった森は、ここ20年暗く閉ざされ、下草が繁茂し、光が地表まで届かない状況だった。
そこで、まず森に分け入り、野帳に樹木植生や地形、環境、眺望、森を貫く計画道路等を記して地図を描いた。家族は将来、子供部屋や仕事場を森に増築する予定で、地図は、森の将来像を含めたものとなった。これは、森の緩やかな形成史を継いでいくように、新しい家族の暮らしを重ねていく作業である。今日、自然災害や気候変動により、大地の自明性が失われる中、住居を土地の大きな物語と結び、一方本来固定しない、変化する生活のダイナミズムを召喚する。
地図に基づき、森の眺望やアプローチから西側傾斜地へ建築を配置し、傾斜に沿った3段構成の基壇を設けた。そしてそれぞれ環境の異なる3つの半屋外空間を立体的にレイアウトした。それらと室内を覆うように大きく切妻屋根を架け、屋根にはルーフテラスを伴う天窓を設けた。ルーフテラスの両脇に設けた光井戸からは、薄暗い森の、室内奥へと光が届く。
コンクリート基壇と2階居室とに挟まれたピロティは、在来木造の主体構造に鉄骨梁を組み込んだ片持ち構造として、上部ボリュームをもち出し、森に対して開いた空間とした。このアプローチ側と裏庭側に設けたピロティは、物干しやガレージへの荷下しなどの日常的な営みの空間であり、これによって室内を斜面や屋外へと近づけ、森の風景を暮らしに編むことを考えた。
これら3つの半屋外空間は、立体的に室内外が連続するように、屋外階段や大きく跳ね出した軒下空間によって結ばれており、森と室内を横断する回遊性を実現している。暮らしの日常的機能性と遊戯性をバランスさせ、森と有機的な関係を育む。
湿潤な森にあるためガルバリウム鋼板を基調とした外壁としながらも、地表面から離隔できる場所はラワン羽目板とした。同じくピロティや軒下空間を実現する鉄骨梁は、木構造材の露出を避けた採用でもあり、環境に呼応した適材適所の素材構成や構造形式を選択した。屋根による全体性を軸としながら、森に応じた調整がハイブリッドを生む、臨床的な環境構築となっている。
このように、森を鷲掴みにするような大きく開かれた構成を、その部分において破り、崩していくアプローチを重ねることで、建築をより多層的な環境に、編み込んでいくことを試みた。
■建築概要
作品名:Eagle Woods House
所在地:埼玉県
主要用途:専用住宅
構造・規模:木造 地上2階
地域地区:市街化調整区域
敷地面積:1101.09m2
建築面積:87.12m2
延床面積:116.50m2
竣工:2017年12月
設計
Eureka
意匠:稲垣淳哉、佐野哲史、猪又直己、桂川大、末舛優介、原章史
構造:永井拓生
環境:堀英祐
施工
榊住建:千代岡英一、大野新次、山本浩二
撮影:黒目写真館/大倉英揮