SHARE 川口裕人 / 1110建築設計事務所による、大阪・河内長野市の、住宅+事務所「公園と畑の家」
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、大阪・河内長野市の、住宅+事務所「公園と畑の家」です。
北側を畑、南側を公園に挟まれた敷地環境の中に建つ築45年の平屋を住居兼事務所に改修しました。
改修物件にまつわる「既存/新設」の対比関係だけではなく、ここでは「公園/畑」や「住居/事務所」などといった複数の対要素をどのように共存させるかが課題でした。
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以下は、改修前の様子。
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以下、建築家によるテキストです。
北側を畑、南側を公園に挟まれた敷地環境の中に建つ築45年の平屋を住居兼事務所に改修しました。
改修物件にまつわる「既存/新設」の対比関係だけではなく、ここでは「公園/畑」や「住居/事務所」などといった複数の対要素をどのように共存させるかが課題でした。
コストを抑えるために既存の構造体と間仕切は極力残す必要がありました。
唯一行った操作は、もともと南北に長く配されていたLDKを、庭のある南側(=公園側)に面して配置し直し、比較的静かな北側(=畑側)に面して事務所スペースを配置したことです。
しかし、「南=公園=住居スペース / 北=畑=事務所スペース」という構図が、この小さな家に対して少し構成力が強すぎて、公園と畑に挟まれて生活するという環境固有の感覚が分断されてしまうように感じました。
そこで、その関係性を崩すために住居スペースと事務所スペースの境界に大きなテーブルと小窓を挿入してみました。
この大きなテーブルは機能的には、住居側はダイニングテーブル、事務所側は打合せテーブルとなっています。
住居と事務所の境界面に同じ素材・同じ形状のテーブルを挿入して、対比的な構成の中に小窓を通した風景の繋がりをつくり、公園と畑に挟まれた環境に身を置く心地良さを増幅させようと考えました。
次に、既存部分と新設部分の関係についても対比的ではない「ある種の共犯関係」を散りばめることを考えました。
既存部分と改修部分のチューニングを行う感覚で、マテリアルが持つ微妙なニュアンスを現地で確認しながら、新しさの中にラフな違和感を与えること、空間に不確かなノイズを発生させることを意識しました。
玄関のパーケットフローリング材と図書室の天井の木毛セメント板の素地材の割付
床材のラワンベニアの板割寸法と障子の桟の割付と見付寸法
水回りの腰壁のタイルと玄関ポーチのタイルの質感
リビングの壁・天井の左官下地材と独立木柱の亜鉛めっき塗料の塗り厚
など、仕上と寸法のイレギュラーな関係を相互に関連付け、それぞれの要素が空間の伏線となるように編集しました。
その中で唯一「欄間ガラス付きの建具」という形式だけは、小さな関連性を持つ多様な要素群とは別に、一貫した構成要素として全体に展開させています。
この「欄間ガラス付きの建具」という形式は今回新たに持ち込まれたものではなく、もともと既存の住宅が持っていたボキャブラリーです。
アノニマスな空間が持つ形式を尊重し、既存のボキャブラリーを転用することで、この住宅に蓄積された時間を継承され、既存と新設という概念を越えた物語が続いていく、そんな余韻のようなものを空間に与えたいと考えました。
■建築概要
竣工年月:2017.08
所在地:大阪府河内長野市
用途:住宅+事務所
構造:木造
敷地面積:155.00m2
延床面積:96.35m2