SHARE 矢野泰司+矢野雄司 / 矢野建築設計事務所による、高知のレストラン「Balloon restaurant」
矢野泰司+矢野雄司 / 矢野建築設計事務所が設計した、高知のレストラン「Balloon restaurant」です。
高知市の繁華街から少し離れた、幹線道路沿いに建つ建物の一部を夫婦が運営するレストランに改修する内装計画である。
既存建物は地上3階建ての鉄骨造で、1階が駐車場ピロティ、2階と3階を飲食店・事務所にテナント貸しにしており、2階の約半分が今回の改修範囲となった。主な要望としては、厨房と一体の大きなカウンター席、独立したテーブル席、ワインセラー室、アクセサリー作家でもある奥さんの製作場所、といったものだった。敷地周辺は幹線道路から一つ通りに入ると住宅街や学校のある落ち着いた静かな場所だった。ここで、朝から夕方まで料理の仕込みやアクセサリーの製作を行い、夕方から深夜まで営業する毎日を想像すると、レストラン然とした場所を作るだけでは不十分だと思った。今後、夫婦が人生の大半を過ごす場所として、家の延長のようにリラックスできる空気感も必要である。
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以下、建築家によるテキストです。
Balloon restaurant
高知市の繁華街から少し離れた、幹線道路沿いに建つ建物の一部を夫婦が運営するレストランに改修する内装計画である。
既存建物は地上3階建ての鉄骨造で、1階が駐車場ピロティ、2階と3階を飲食店・事務所にテナント貸しにしており、2階の約半分が今回の改修範囲となった。主な要望としては、厨房と一体の大きなカウンター席、独立したテーブル席、ワインセラー室、アクセサリー作家でもある奥さんの製作場所、といったものだった。
敷地周辺は幹線道路から一つ通りに入ると住宅街や学校のある落ち着いた静かな場所だった。ここで、朝から夕方まで料理の仕込みやアクセサリーの製作を行い、夕方から深夜まで営業する毎日を想像すると、レストラン然とした場所を作るだけでは不十分だと思った。今後、夫婦が人生の大半を過ごす場所として、家の延長のようにリラックスできる空気感も必要である。そこで、レストランで食事するという非日常性と家で過ごしているような居心地の良い日常性が混ざり合った状態を目指そうと考えた。そのどちらにも定まらない曖昧さは、機能(レストラン)が先行して慣習的な振る舞い方を定めてしまうような不自由さから逃れ、個人経営ならではの自由な活動の展開も期待できるだろう。
具体的に、非日常性は客席の約8m四方の鉄骨造らしい広々とした一室空間、厨房と仕切りの無い長手5mの巨大カウンター席、6人がゆったり座れるテーブル席の重量感のある大きな机、天井と同じ高さ2.3mの入口とワインセラー室の建具、等によって感じられる。日常性は夫婦の所有するアンティーク照明や家具、観葉植物、書籍を配置しながら家のような雰囲気が所々生まれるように設計を進めた。また、旦那さんの料理や奥さんが集めたガラスや陶器の魅力的な形の食器がお客さんの記憶に鮮やかに残るように、各種仕上げを存在感はありながらも主張の強くない素材と色にした。
夜、建物の外を通ると、レースカーテン越しに食事をしている人のシルエットや風船のような形のペンダントランプの明かりが宙に浮いたように見える。サイン計画は入口に小さな店名「balloon」の切り文字のみとした。大きな開口から見える軽やかで温かみのある光景が車や自転車で行き交う人達へ強い印象を与えられると考えたからである。
■建築概要
主要用途:飲食店
専有面積:95㎡
構造:鉄骨造
規模:地上3階(2階)
設備設計:後藤美奈子
家具:COMMON 岡部創太(協働設計)
写真:西森秀一
施工:フクヤ建設+ライフ・カラーズ
竣工:2018年