SHARE 矢橋徹建築設計事務所による、熊本・熊本市の、地震で被災解体された貸しビル跡地につくられた「オモケンパーク」
矢橋徹建築設計事務所が設計した、熊本・熊本市の、地震で被災解体された貸しビル跡地につくられた「オモケンパーク」です。
敷地は熊本市中心部上通りアーケード内にある熊本地震で被災解体された貸しビル跡地である。
クライアントと共有したことは、従来の家賃収益施設としての街との関わり方ではなくコスト回収を目的化しないイニシャルコストを抑えた最低収益を賄える小さな建築と、常時公園的利用をしながらもイベントや催し時は低額で借りることができるイベントスペースとしての運営を行うハブメディア的役割を通した円環的な街との関わり方を目指すことであった。
商業的使い方、公共的な使い方、公園的使い方、それぞれが重なり合うシェア拠点である。建築を含めた計画全体が地域活性のテコのような存在となることを期待している。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
敷地は熊本市中心部上通りアーケード内にある熊本地震で被災解体された貸しビル跡地である。
敷地のある上通りアーケードには終日多くの人が行き交っている。一方で個人商店は減少しナショナルチェーン店が増加する変化が見え始めている。統計によると2012年から2016年の間にチェーン店は12件増加している。利便性が高く現代的ニーズを捉えてはいるが平均的な街へ徐々にシフトしている時期ともいえる。平均化はシャッター通り化と合わせアーケードの抱える課題である。
クライアントと共有したことは、従来の家賃収益施設としての街との関わり方ではなくコスト回収を目的化しないイニシャルコストを抑えた最低収益を賄える小さな建築と、常時公園的利用をしながらもイベントや催し時は低額で借りることができるイベントスペースとしての運営を行うハブメディア的役割を通した円環的な街との関わり方を目指すことであった。
屋内空間のプライオリティや建設コストが低いプログラムのため、よりダウンサイジングされた環境負荷の小さい建築が求められた。そこで法的制限を最小限にするため100㎡以下のボリュームとし、基礎コンクリートを使用しない杭基礎とシンプルな鉄骨フレーム+CLTによる混構造(一部燃え代設計)の準耐火建築物としている。計画にあたって軒下空間、屋上広場、ポケットパーク、これら上通りアーケードに無い要素を計画が補完している。これらを積極的に開放し、表の賑やかな通りと裏の穏やかな場所をゆっくりとつなぐように段状の断面構成としている。スリット状に抜けを持つことで、日中の昼光利用による消費電力の削減効果が期待できるだけでなく、木々や光、人々の活動がアーケードに漏れ出し開かれた明るい空気をアーケードに届ける骨格となっている。
広場は透水レンガによる雨水循環、夏季のビル風を利用した打ち水による冷却効果など、近年顕著に見られる災害や環境変化への対策としている。敷地周辺には井戸が多く残っており、旧ビルが解体された際に現れた井戸は復旧している。親水としての利用だけでなく、災害時の生活用水として利用できる災害時のサポート拠点としての機能も備えている。
商業的使い方、公共的な使い方、公園的使い方、それぞれが重なり合うシェア拠点である。建築を含めた計画全体が地域活性のテコのような存在となることを期待している。
■建築概要
名称:オモケンパーク
計画地:熊本県熊本市中央区上通町7-7-1
竣工: 2019年5月
敷地面積:193.69㎡
建築面積:67.66㎡
延床面積:48.37㎡
規模・構造:鉄骨造+木造(CLT)
設計・監理:矢橋徹建築設計事務所
構造設計:黒岩構造設計事ム所
設備設計:木村設備設計
施工:熊本建設
写真撮影:八代哲弥(八代写真事務所)、平田克弘(hacophotoshop)