SHARE 中本尋之 / FATHOMによる、広島市のヘアーサロン「maitre」
中本尋之 / FATHOMが設計した、広島市のヘアーサロン「maitre」です。
常に人が絶えないガヤガヤした周辺環境の中でサロンのブランディングをどのように確立させていくべきかを一番に考えた。
エントランスはアーケード内という半屋外の外部環境を利用し、工事中の仮囲い等で使われるターポリンという布を外装材に用いている。
入れ替わりの激しいアーケード内に連なるファサード、常にどこかが改装工事中だったりする。
それを逆手にとって工事中の仮囲いと完成されたファサードの中間のような柔らかい店構えを考える事で店舗のファサードの時間軸を曖昧にしている。布をくぐって階段を上がると広がるのはモルタル、垂木とステンレスで組まれた無機質な空間。
これらの無骨な材質をあえて取り込む事で、空間をジェンダーレスな空間に作り込んでいる。カット面から向かって左側の壁は既存ボードを解体することで偶然現れた荒いコンクリートの躯体をそのまま残し、
再び既存壁の木下地を組み直し、その面にミラーやカウンターを取り付けた。
コンクリート、ステンレス、ミラー、透明アクリなど、反射率や透過率の異なる様々な素材に自分の姿が投影されるという不思議な感覚に陥る壁面に仕上がった。
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以下、建築家によるテキストです。
maitreは広島市中区本通のアーケード内の二階に店舗を構える女性専用ヘアーサロン。
常に人が絶えないガヤガヤした周辺環境の中でサロンのブランディングをどのように確立させていくべきかを一番に考えた。
エントランスはアーケード内という半屋外の外部環境を利用し、工事中の仮囲い等で使われるターポリンという布を外装材に用いている。
入れ替わりの激しいアーケード内に連なるファサード、常にどこかが改装工事中だったりする。
それを逆手にとって工事中の仮囲いと完成されたファサードの中間のような柔らかい店構えを考える事で店舗のファサードの時間軸を曖昧にしている。
布をくぐって階段を上がると広がるのはモルタル、垂木とステンレスで組まれた無機質な空間。
これらの無骨な材質をあえて取り込む事で、空間をジェンダーレスな空間に作り込んでいる。
カット面から向かって左側の壁は既存ボードを解体することで偶然現れた荒いコンクリートの躯体をそのまま残し、
再び既存壁の木下地を組み直し、その面にミラーやカウンターを取り付けた。
コンクリート、ステンレス、ミラー、透明アクリなど、反射率や透過率の異なる様々な素材に自分の姿が投影されるという不思議な感覚に陥る壁面に仕上がった。
ミラーフレームはサロンにおいては鏡に映る世界と現実世界の間にある境界線である。その線をなくすのではなく、
透明アクリルボックスで組むことで枠の構造自体をスケルトン化させる事で、境界には線ではなく透明な空洞が生まれる。
その中で虚と実の二つの視界が溶け、混ざり合う事ができないか試みている。
アーケードの騒がしい空間とプライベートなサロン空間、
その間に生まれるギャップをこのように視点や感覚を今までの常識から少しずつ外れ、ずらし、小さなぼかしをたくさん形成する事で
日常との境界を少しずつ曖昧にし、
非日常的な空間へと生まれ変わらせる事で、女性のもつ言葉では表現しきれない美しさをより引き出す事ができるのではないかだろうか。
喧騒的な都市の現実から少し浮遊させた特別なひと時をこの空間で過ごしてもらえたらと思う。
■建築概要
名称:maitre
計画地:広島県広島市中区本通7-27-2F
設計:中本 尋之(FATHOM)
ロゴデザイン:大井 健太郎(LISTEN)
ディレクション:榎本 太一
特注金物:村田 進(賀茂クラフト)
特殊塗装:庄野 樹護(Shono Paint Works)
施工:坂本 圭(坂本工務店)
竣工年:2019年10月
建築面積:122.4㎡(エントランス及び2F)
用途:美容院
写真:足袋井竜也(足袋井写真事務所)