SHARE 戸石あき / lemnaによる、東京・池袋の店舗「コ本や honkbooks」
戸石あき / lemnaが設計した、東京・池袋の店舗「コ本や honkbooks」です。戸石はスキーマ建築計画出身の建築家。店舗の公式サイトはこちら。
コ本やはメディアプロダクションも行う古書店で2016年東京都王子にオープンしてから展覧会、上映会、トークショーなどのイベントを通してファンを獲得してきた。
王子では路面店を構えていたが、イベントスペースの拡充を求め、池袋に移転することとなり、プロジェクトは始まった。資金面も限られていたためDIYで工事し、設計者である私を含め、王子店時代からの常連、アーティスト仲間を巻き込んで作られた。表通りに面した建物の2階にあり、時間帯によって入店方法が異なるテナントは外から全く見えず、事情により看板も出せない。本来、小売店として弱点となるこのような状況に、小規模であり、顧客に密着してきたコ本やにしかできないような形を目指し設計された。
元々古書店以外の活動も活発でWebサイトやSNSでの露出頻度も高いことから、インターネット上に露出するものが”店構え”であるとしてとらえ、写真を始め、口コミなどによって出来上がるバーチャルなイメージによって行って見たいと思わせることが課題となった。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
コ本やはメディアプロダクションも行う古書店で2016年東京都王子にオープンしてから展覧会、上映会、トークショーなどのイベントを通してファンを獲得してきた。
王子では路面店を構えていたが、イベントスペースの拡充を求め、池袋に移転することとなり、プロジェクトは始まった。資金面も限られていたためDIYで工事し、設計者である私を含め、王子店時代からの常連、アーティスト仲間を巻き込んで作られた。
表通りに面した建物の2階にあり、時間帯によって入店方法が異なるテナントは外から全く見えず、事情により看板も出せない。本来、小売店として弱点となるこのような状況に、小規模であり、顧客に密着してきたコ本やにしかできないような形を目指し設計された。
元々古書店以外の活動も活発でWebサイトやSNSでの露出頻度も高いことから、インターネット上に露出するものが”店構え”であるとしてとらえ、写真を始め、口コミなどによって出来上がるバーチャルなイメージによって行って見たいと思わせることが課題となった。
バーチャルイメージではテナントの離れた2室と廊下という特殊な条件を活かし、唯一引きの取れる廊下をすっと見通すことはできるが、密度の詰まった店内は、死角が多い。またアップではどこを見ても違う景色で、見る人の想像力を掻き立て、全体が想像しきれないミステリアスさを生み出す。
実際に訪れると、その特殊な入店方法、イベントや棚作りに合わせ変容し続ける店内は常に新鮮さを与える。変容を受け入れるため、建築には引き算のみを施し、ほとんどの什器を移動可能、解体可能なもので計画した。
唯一の固定本棚エリアと、フレキシブルに使われるthecaと呼ばれる部屋を、余地となる廊下で繋いだ構成は訪れた客に往来を生み、どれだけ長居しても飽きさせないようになっている。
実店舗であることの意味が問われる現在において、それぞれの特色が強くなければ、訪れてもらうことは難しい。その中で弱点の多い立地であったからこそ、強いキャラクターを持った”店構え”を作ることができた。
必要なものはインターネットで済んでしまう今、実店舗に求められるのは発見や体験、未知なるものを紹介してくれる運営者の意思なのかもしれない。
そのようなコ本やの強い意志に促され、これからの小売店のあり方を提案するものとなった。
■建築概要
コ本や honkbooks
所在地:東京都豊島区池袋 2-24-2 メゾン旭2F
竣工:2019年9月(2019年11月3日オープン)
計画面積:75㎡
マテリアル:アカマツ, 単管パイプ, ラワン合板
クライアント:thoasa
設計・施工:lemna
写真:aki toishi