SHARE 米田雅樹 / ヨネダ設計舎による、三重・玉城町の、美容室と住宅「Nhouse + forest bois」の写真
米田雅樹 / ヨネダ設計舎のウェブサイトに、三重・玉城町の、美容室と住宅「Nhouse + forest bois」の写真が14枚掲載されています。
『風土環境の享受と構え』
周囲を田園に囲まれたのどかな環境.
建主は美容師として独立して14年、隣の市の賃貸物件にて営業をしていたが、自身が育った町に戻り、美容室を営みたいと願い続け、数年かけてこの土地を見つけた.
計画地.小さな里山がある集落のメイン道路.
集落の入口となるゆるい坂道をのぼった先、のびやかに曲がるコーナーに面する.
道路をアプローチしていくとまだ小さな建物を抱くように緑の里山が近づいてくる.
さらに近づくと、里山が背後に隠れ、だんだんと建物が大きくなる.
ひとと里山と建物の関係が変化する.
ゆるく設けた境界の屋内にくぐるように入ると、それまでは相関関係だったひとと里山と風土との在り方が、同じ相の中で混ざりあっているような関係をつくった.
この風土の空気そのものを感じる、東屋や橋の下のような質の場所.
家族とお客さんのお互いのプライバシー確保と職住の分離から1 階を美容室、2階を住居として明快に分離したプランとした.
建築予算の中で建築することと、用途上必要な絶対面積を確保させるために、建物はシンプルな角型とし、一般的な大きさのぺアガラスで多くの外皮を構築し、空間の要望と合理性を追求した.
建物の外面は、通りの往来、車のヘッドライト、来客者の視線、意識の流れを考慮し、アプローチ側と里山側で開口比率を大きく変え、場の階層をつくった.
1階、2階とも秩序をもった柱を立てた.それらが知覚の基準となることで、室内と山々や風土の風景との関係、一体感が生まれる.
明るさばかりでなく、適度なくらがりの場も欲しいという要望もあり、2階の住居部の広間と個室を隔てる土壁は天井と縁を切り、パレットのように濃淡を持ちながら光、風、家族の空気がひとつに混ざる1室空間をつくった.
この土壁は家族と空間をつなぐ住まいの背骨であると共に、冬季、薪ストーブの蓄熱層としての役割も果たす.
紀伊半島は特に台風が多く来襲する.
この風土と共存する地域に立ち並ぶ牛舎を参考に、台風時は最外周層の小径スチール柱を利用し、屋外広告用垂れ幕を転用した防風ネットをつけることでこの地域の風土に参加した.