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小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」
photo©市川靖史

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architecture|feature
KOMPAS建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・キッチン)住宅世田谷区リノベーション東京市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史

小室舞 / KOMPASが設計した、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」です。

1階で歯科医院を営む施主家族が暮らす、元々二世帯住宅だった築18年鉄骨造3階建ての店舗併用住宅の住居部分の改修計画です。3人家族の暮らしと不相応な二世帯住宅の間取りの改善、夏暑く冬寒く昼間から暗いという環境の改善、量販住宅的な空間の質の改善、という3つが改修の主目的でした。

リノベーションで木造やRCの既存躯体を露出して活かす手法は一般的ですが、耐火被覆で露出できない鉄骨造かつ内断熱を追加する必要により全面に内装を施さなければいけない状況の中で、どうやって単なる張りぼてでなく各内装に必然性を持たせられるのか、また、ワンルームという間取り内にどれだけ多様性や奥行きを共存させるかが内装における課題となりました。
まず、2・3階それぞれが家族用に計画された既存に対し、2階をパブリックな場としてのリビングダイニング、3階を寝室などのプライベートな場として使い分けることとし、予算の都合上プライベート側はなるべく既存を利用することとしました。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
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小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
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小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史
小室舞 / KOMPASによる、東京の住宅改修「世田谷のリノベーション」 photo©市川靖史

以下、建築家によるテキストです。


1階で歯科医院を営む施主家族が暮らす、元々二世帯住宅だった築18年鉄骨造3階建ての店舗併用住宅の住居部分の改修計画です。3人家族の暮らしと不相応な二世帯住宅の間取りの改善、夏暑く冬寒く昼間から暗いという環境の改善、量販住宅的な空間の質の改善、という3つが改修の主目的でした。

リノベーションで木造やRCの既存躯体を露出して活かす手法は一般的ですが、耐火被覆で露出できない鉄骨造かつ内断熱を追加する必要により全面に内装を施さなければいけない状況の中で、どうやって単なる張りぼてでなく各内装に必然性を持たせられるのか、また、ワンルームという間取り内にどれだけ多様性や奥行きを共存させるかが内装における課題となりました。
まず、2・3階それぞれが家族用に計画された既存に対し、2階をパブリックな場としてのリビングダイニング、3階を寝室などのプライベートな場として使い分けることとし、予算の都合上プライベート側はなるべく既存を利用することとしました。

主要空間の2階は間仕切りや吊天井をなくし、既存の梁を隠しつつ設備や照明を内包する梁型や垂れ壁で緩やかに仕切りながらもなるべくおおらかで気積の大きなワンルームを確保しました。

80㎡ほどの各階ごとに小さなバルコニー3つと各部屋にばらまかれた窓で外周に開口部は豊富でしたが、煩い前面道路と近接した隣地建物によってほとんど使われず閉じられており、間仕切りの多さも相まって昼間から暗い状態でした。

そこで3階中央で物置と化していたキッチンを撤去して2・3階をつなぐ吹き抜けにしてその上部にトップライトを配すことで、最も暗かった中央部に自然光を取り入れ、住居全体への煙突効果での自然換気も可能にしました。

そして既存開口部は外周部の環境に応じて取捨選択を行いました。唯一角で開けたバルコニーは不要な浴室跡を使って拡張してリビングと大きくつなぎ、他の使われていない開口部は換気等に必要な箇所以外は熱の逃げを防ぐように断熱材で閉じたり、造作家具と組み合わせることで見た目の統一を図りながら外部との距離をコントロールできるようにしました。

外壁沿いにキッチン・デスク・ベンチ・棚などの機能を散りばめ、断熱材の炭化コルクなどの特性を持つ内装材を場所に応じて用いることで、中央は空っぽながら各面ごとが個性を持ち、ワンルームながら場所ごとに変化をもたらしています。

落ち着いた色調の下層部から明るい色調の上層部を経て真っ白な吹き抜け空間へと断面方向にも素材感の変化を与え、平面方向と断面方向での多様性の掛け合わせに自然光が加わることで、奥行きと変化のある豊かなワンルームにできるのではないかと考えました。

大きなアイランドキッチンを囲みながら自然の移ろいを感じ、人々の暮らしと共に時間を重ねて深みを増す空間になることを祈っています。

■建築概要

世田谷のリノベーション
概要:住宅改修
現況:竣工(2019)
場所:東京都世田谷区
規模:鉄骨造3階建て内約100㎡
施主:個人
施工:株式会社古賀造
植栽:有限会社温室/塚田有一
写真:市川靖史

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
内装・床床

スレート石(東京水産流通)

内装・壁壁1

炭化コルク:MDファサード(Amorim)

内装・壁壁2

ジョリパット ゆず肌(AICA)

内装・キッチンキッチンカウンタートップ

モールテックス(原田左官)

内装・キッチンキッチンカウンター

突板:VIVOナラアイロニーエフェクト(安多合板)

※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません


This project concerns the renovation of our clients’ duplex residence which is situated above their ground floor dental practice. The overall building is a 3-storey steel structure which is 18 years old. The three main purposes of the renovation were to: 1. Improvement and re-planning of the spatial layout to suit a family of 3 instead of a 2 generation family, 2. Improvement of environmental quality to mitigate overheating in summer, retain warmth in winter and increase natural daylight, 3. Improvement of spatial quality and modernisation of finishes.
The exposure of existing timber or concrete structures is the usual approach in this type of project. In this case, however, the fireproofing to the existing steel structure and additional insulation required to the external envelope made this inappropriate and difficult. The key design challenges were, therefore, how to apply a convincing logic to the internal finishes and how to create diversity and depth of layer within a single room.
The existing residence was originally designed to accommodate one family per floor. The facilities of each floor were amended so that the 2nd Floor would become a communal living & dining space with the 3rd Floor being a private space containing bedroom and bathrooms. Due to a limited budget, amendments to the 3rd Floor were kept to a minimum.
On the 2nd Floor the existing partition walls and ceilings were demolished to create a large living & dining space of generous volume. The new grid ceiling covers the existing beams and creates service runs for lighting and equipment without compromising ceiling height.
Another issue with the original residence was the overall lack of light. Although each 80sqm floor had 3 tiny balconies and lots of windows, these always had to be shut with curtains closed due to noisy frontages and overlooking issues. This made the living spaces dark even during daytime. This issue was solved in two ways.
Firstly, the now unused, centrally located 3rd Floor kitchen was demolished to allow an atrium to be created, bringing natural light into the darkest parts of the building. This atrium terminates in a glazed openable roof light which also provides natural stack ventilation to the whole residence and enables an indoor planting area alongside.
Secondly, each facade opening was then evaluated and categorised according to quality. Those openings that provided light while not hindering privacy or introducing noise were expanded. A prime example of this was the balcony to the living room, which was enlarged into a generously sized new window by demolishing the existing, now unused bathroom. The remaining openings were either closed and insulated to increase thermal performance, kept for ventilation purposes, or integrated into built-in furniture to improve their appearance and control distance to external surroundings.
To create spatial quality within the new single space on the 2nd Floor functional built-in furniture such as kitchen units, desks, benches, and shelves were distributed along the perimeter walls. The walls themselves are finished with functional materials such as carbonized cork for insulation which are assigned to specific locations. This allows the central space to remain open plan as well as uniquely characterising each part of the perimeter creating diversity of place.
Material transitions in section are also created, moving upward from dark to light tones terminating in the white atrium. Combining diversity in both plan and section together with natural light, the simple single room design is intended to be abundant with variety of texture and depth of layering. It is hoped that this space will age in tandem with our clients’, enriching their lives by allowing them to experience nature while gathered around the large island kitchen.

SETAGAYA HOUSE RENOVATION
PROJECT : House Renovation
STATUS : Completed (2019)
LOCATION : Setagaya, Tokyo, Japan
AREA : approx. 100sqm in 3 storeys steel building
CLIENTS : Private
CONSTRUCTION : Kogazo Inc.
LANDSCAPE : Onshitsu / Yuichi Tsukada
PHOTOGRAPHY : Yasushi Ichikawa

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    サンゲツは、住宅、商業施設、オフィス、ホテル、医療福祉施設など、さまざまな空間で使われるインテリア素材を提供し、人々が空間をデザインするよろこびをお届けしてきました。
    単にインテリア素材を供給するのではなく、人々がそのインテリア素材を使い、デザインし、その空間で楽しみ、安らぎを得ること。それがサンゲツの社会での役割と考え「Joy of Design デザインするよろこびを」をブランドコンセプトに掲げ、豊かな生活文化の創造を目指しています。
    その企業活動の一環として、2017年に『サンゲツ壁紙デザインアワード』を立ち上げました。

    みなさまの応募作品からまだまだ広がる壁紙の可能性を実感し、今年も『第4回サンゲツ壁紙デザインアワード』を開催します。

    sangetsu-award.jp

    [テーマ]
    『Joy of Design』
    [課 題]
    『Joy of Design』をテーマに「壁紙」というプロダクトの特性をふまえ、「誰が何をしてどのように
    過ごすための空間か?」を想定し、壁紙をデザインしてください。
    壁紙は単体で成立するものではありません。空間に貼られることで、初めて壁紙として成立します。
    気持ちが明るくなる病室、心に残るホテル、活発なコミュニケーションが生まれる教室、仕事がはかどるオフィス。壁紙ひとつで、居心地をつくることも、人々の表情を変えることもできます。
    壁紙というプロダクト単体ではなく、想定した空間内における意義や効果を考えたうえで、壁紙をデザインし、デザインコンセプトを説明してください。

    sangetsu-award.jp

    商品化された過去の受賞作品や審査風景の様子も下記に紹介します。

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    辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第4回「建築を『つくってもらう』ことの難しさ」

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    川の向こう側で建築を学ぶ日々青木遥香辻琢磨論考渡辺隆中川敦玲長谷川健太
    辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第4回「建築を『つくってもらう』ことの難しさ」

    建築を「つくってもらう」ことの難しさ

    text:辻琢磨

     
    つくる人がいて初めて建築が生まれる

    ここまで、初回の導入から、判断基準の話、事務所の見せ方の話と続けて紹介してきたが、今回は施工者との関わり方について筆を進めたい。

    一般的には、設計者が「施工者」としてやりとりするのは工務店やゼネコンの監督さんであるが、実は、厳密に言えば彼らはつくる人ではない。どういうことか説明しよう。

    意図をつくり手に伝えるとした時、設計事務所のボスは、まず現場担当のスタッフに設計意図を伝え、担当スタッフが現場監督さんと話し、監督さんが実際につくる人(各業種のリーダー)に作業内容を伝え、そのリーダーがチームメンバーに伝える、という幾重にも連なる伝言ゲームで工事現場は動いていて、現場監督はその中継人であるということだ。

    そしてその伝言ゲームの人数は建築の規模に比して増える。時には自ら汗を流す建築家や監督さんもいるかもしれないが、あくまでも我々設計者の仕事は設計することであり、現場監督の仕事は工程と予算とつくることをコントロールすることである。実際に重たいハーネスを背負いヘルメットを被って汗を流し10時と12時と15時に一服を挟みながら身体を動かすのは職人さんである。現場監督の先にいる彼らの存在を設計者は忘れてはならない。それを前提に、下記読み進めていただければ幸いだ。

     
    施工者との理想的な関係とは

    建築という複合芸術は、お金と要求を出す施主がいて、空間に置き換える設計者がいて、それを実現する施工者がいて初めて建てることができる。その三者のバランスが、特に「予算」という共通言語で結ばれるからこそ、建築はある種の緊張感を持って立ち上がる。

    理想的な関係は、大変理解ある施主が潤沢の予算をこれまた理解ある施工者に預け、設計者が存分にその力量を発揮して名作が生まれる。というものだが、現実にはそのような機会はめったに無い。

    施主はできるだけ良い建築をそれに見合う価格で手に入れたい、施工者は効率良く適正な利益を生み出したい、設計者はその間に揺られながらも作品とすべく、見積もりを何度も取って調整を重ね、晴れて着工となるのがほとんどだろう。

     
    見積もりの存在意義

    僕が独立したての頃は、この「見積もり」というルールが何故存在しているのかよくわからなかったのだが、それこそ渡辺さんに事細かく教えてもらって、どうやって見積もりをコントロールするのかや、見積もりが予定予算より超過した場合の施主対応などについてよくアドバイスをもらっていた。
    このエッセイの読者の中にももしかしたら見積もりって何?という人がいるかもしれないので、僕なりに少し説明しておく。

    まず、建築家が設計する建築(建物ではない)は、スーツで言うフルオーダーメイドのような「一点物」で、且つ建築を構成する部品(工種)がとてもたくさんあるので、設計して建築についての詳細情報が決定されてからでないと値段が決まってこない。基礎はいくら、柱はいくらで、内装の床や壁はこの仕上げ、キッチン、トイレ、蛇口、それぞれの機器はこれでいきます、外装材はこれ、屋根はこれと、、まずもって形が決まっていないと何も進まないし、形が決まっていたとしても、その他にも決めるべき箇所は山のようにある。設計者はまず施主との対話の中で設計案をまとめ、その机上の建物をつくると果たしていくらかかるのかを施工者に考えてもらうのだ。この作業が見積もりである。

    だいたい建築家は誰もやったことのない独創的な建築を目指す(そうでなければ作家性が成り立たず、ハウスメーカーや工務店が設計した方が早いし安い)ので、この見積もりが結構高くなるのが一般的だ。施工者としては誰もやったことのない施工が想定されればされるほど、見積もりもその難易度に応じて設定することになるからである。だから何度も調整して優先順位の低い要素から最低限の機能を満たした上で減額していく。これがVE (Value Engineering)である。

    この時設計者は施工者に対して例えば「この建築は新しいカタチをしているけれど、よくよく考えると一般的な工法でできますよ」だとか、「一見複雑に見えますが実は単純な幾何学の反復なので簡単に施工できますよ」といった言葉とアイデアで、独創的ながらもなるべく見積もりを抑える努力をしつつ、出てきた見積もりが正しく適切に見積もられているかを精査する役割を担っている。

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    川の向こう側で建築を学ぶ日々青木遥香辻琢磨論考渡辺隆中川敦玲長谷川健太
    2020.07.01 Wed 19:20
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    武田幸司 / Ginga architectsによる、宮城・仙台市の住宅「SGA フタ+ハコ/回遊する住まい」
    photo©小関克朗

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    architecture|feature
    Ginga architects武田幸司小関克朗住宅図面あり宮城仙台
    武田幸司 / Ginga architectsによる、宮城・仙台市の住宅「SGA フタ+ハコ/回遊する住まい」 photo©小関克朗
    武田幸司 / Ginga architectsによる、宮城・仙台市の住宅「SGA フタ+ハコ/回遊する住まい」 photo©小関克朗

    武田幸司 / Ginga architectsが設計した、宮城・仙台市の住宅「SGA フタ+ハコ/回遊する住まい」です。

    周りには緑も多く、住宅地の東の際にあることから、東側の崖越しに眺望が大変良い敷地であった。しかし、東西が市道に挟まれた敷地であり、プライバシーを確保しながら、眺望の良さを最大限に生かす、閉じながら開くような住まいを求められた。

    そこで、プライバシーの高い中庭やテラスのような半外部空間を内包する低めの『ハコ』と、庇がある『フタ』ような大屋根、それらを建ぺい率一杯まで広げ、『ハコ』から『フタ』をパカっと持ち上げたように見えるシンプルな建ち方とした。

    建築家によるテキストより
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    Ginga architects武田幸司小関克朗住宅図面あり宮城仙台
    2020.07.01 Wed 11:35
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    小堀哲夫・山﨑健太郎・西田司が出演する、書籍『”山”と”谷”を楽しむ建築家の人生』の出版記念オンライントークイベントが、代官山蔦屋書店主催で開催

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    日程
    2020年7月13日(月)
    architecture|exhibition|book
    小堀哲夫西田司山﨑健太郎
    小堀哲夫・山﨑健太郎・西田司が出演する、書籍『”山”と”谷”を楽しむ建築家の人生』の出版記念オンライントークイベントが、代官山蔦屋書店主催で開催
    小堀哲夫・山﨑健太郎・西田司が出演する、書籍『‟山”と‟谷”を楽しむ建築家の人生』の出版記念オンライントークイベントが、代官山蔦屋書店主催で開催されます
    store.tsite.jp

    小堀哲夫・山﨑健太郎・西田司が出演する、書籍『“山”と”谷”を楽しむ建築家の人生』の出版記念オンライントークイベントが、代官山蔦屋書店主催で開催されます。開催日は2020年7月13日。事前に参加券の購入が必要です。

    社会とともに変わっていく価値観や経済状況に振り回されず、創造的な生き方を実践している建築家たちの姿を描き出した『”山”と”谷”を楽しむ建築家の人生』。

    今回のトークイベントでは、登山や海外での実測調査など、好奇心の赴くままに活動していたら、いつの間にか建築にハマっていたという小堀哲夫さんをゲストに招き、建築を目指してからの人生の“山”と“谷”についてのお話に加え、コロナ禍での設計者の働き方などについて編者の山﨑 健太郎さん、西田 司さんと議論いただきます。

    大学で建築を学んでいる学生たち、あるいは独立して迷われている方や、これから建築の仕事を通して、どうやって前向きに生きていこうかと悩んだり、不安に思っている若い人たちに参加いただけたらと思います。

    store.tsite.jp
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    小堀哲夫西田司山﨑健太郎
    2020.07.01 Wed 10:42
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    河原泰建築研究室が最優秀提案者に選定された、島根・安来市の「やすぎはく愛クリニック」設計プロポーザルの提案の画像
    image©河原泰建築研究室

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    architecture|competition
    島根医療施設河原泰
    河原泰建築研究室が最優秀提案者に選定された、島根・安来市の「やすぎはく愛クリニック」設計プロポーザルの提案の画像 image©河原泰建築研究室

    河原泰建築研究室が最優秀提案者に選定された、島根・安来市の「やすぎはく愛クリニック」設計プロポーザルの提案の画像です。

    さくらアーケードのクリニック(やすぎはく愛クリニック増改築工事プロポーザル)

    内科・整形外科の外来診療と人間ドッグなどを行う健診センターという2つの機能をもつクリニックのプロポーザル提案です。
    外来診察ゾーンは既存建物を活用しながら大改修を行い、それに併設するような形で健診センターを新築する提案です。
    健診センターは、予防医療推進の見地から、誰もがふらっと気軽に訪れることができる建物とするため、さくらアーケードと呼ぶ大屋根の下のコリドーから個々に独立した屋根をもつ健診小部屋を巡るショッピングモールのようなつくりとすることを提案しています。

    建築家によるテキストより
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