SHARE 馬場正尊 / Open A(監修)、塚越智之+宮下淳平 / 塚越宮下設計による、東京・港区の、複合ビルの低層部のファサード改修「南麻布の幕屋」
馬場正尊 / Open A(監修)、塚越智之+宮下淳平 / 塚越宮下設計が設計した、東京・港区の、複合ビルの低層部のファサード改修「南麻布の幕屋」です。
三菱地所レジデンスがおこなうReビル事業のプロジェクト。
オフィスの上に集合住宅が積まれた複合ビルを2017年取得し、段階的に改修を行っている。今回はこのザ・パークレックス南麻布のファサードを改修し、建物や地域の魅力を高めることが求められた。
この一帯はかつて徳川綱吉の離宮があった場所で、北側にはお寺が点在する閑静な住宅地が広がっているが、南側は明治通りと首都高速があり騒然としていた。そこで南側の環境を和らげると同時に、点在する寺院と共に街並を形成していくことを考えた。
既存建物のアプローチは2層吹き抜けとなっていたが、その中央にガラス間仕切と入口があり屋内外に中途半端なスペースができていた。そこで入口の位置を吹抜けの端まで後退させ、少し過剰とも言える大きな軒下をつくり、敷地境界に沿って木製のスクリーンを掛けることにした。
このスクリーンは60mm角の桧材にM6の寸切りボルトを2列通したユニットを2階床梁から吊るし、それにM6寸切りボルトを横繋ぎしてできている。桧は寺院で良く使われている木材で耐久性が高く、その油分は排気ガスの成分を軽減してくれる。角材をボルトで編み込んだ様な裏表の無いつくりは、風圧に対して十分な強度を生みだすと共に、街路にも屋内にも美しい表情を見せてくれる。奥行き100mmに調整された角材はスクリーンとの距離や視線の向きによってその透明性を変化させ、車通りの多い南側の風景を様々な形で抽象化する。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
南麻布の幕屋
三菱地所レジデンスがおこなうReビル事業のプロジェクト。
オフィスの上に集合住宅が積まれた複合ビルを2017年取得し、段階的に改修を行っている。今回はこのザ・パークレックス南麻布のファサードを改修し、建物や地域の魅力を高めることが求められた。
この一帯はかつて徳川綱吉の離宮があった場所で、北側にはお寺が点在する閑静な住宅地が広がっているが、南側は明治通りと首都高速があり騒然としていた。そこで南側の環境を和らげると同時に、点在する寺院と共に街並を形成していくことを考えた。
既存建物のアプローチは2層吹き抜けとなっていたが、その中央にガラス間仕切と入口があり屋内外に中途半端なスペースができていた。そこで入口の位置を吹抜けの端まで後退させ、少し過剰とも言える大きな軒下をつくり、敷地境界に沿って木製のスクリーンを掛けることにした。
このスクリーンは60mm角の桧材にM6の寸切りボルトを2列通したユニットを2階床梁から吊るし、それにM6寸切りボルトを横繋ぎしてできている。桧は寺院で良く使われている木材で耐久性が高く、その油分は排気ガスの成分を軽減してくれる。角材をボルトで編み込んだ様な裏表の無いつくりは、風圧に対して十分な強度を生みだすと共に、街路にも屋内にも美しい表情を見せてくれる。奥行き100mmに調整された角材はスクリーンとの距離や視線の向きによってその透明性を変化させ、車通りの多い南側の風景を様々な形で抽象化する。
こうしてできた建物と木製スクリーンに挟まれた空間を「幕屋」と名付けることにした。
幕屋とは「幕を張ってできた小屋」を語源とする言葉で、そこから派生し演劇の開始を待つ「楽屋」や「簡易な神殿」を表すようになった。建物のアプローチに挿入されたこの幕屋は、オフィスや住人を訪ねた人が約束の時間を待つ場所であったり、近所を散歩する人が一休みできる小屋のような場所であるだけでなく、神殿のように神々しい光を落とす場所でもある。
都心を歩いているとどこもかしこも機能に埋め尽くされ何かをしないとそこに身を置けないかのように感じることがある。そうした中、スクリーンによって抽象化された風景をただ眺めたり、神々しい光を浴びるだけの場所があっても良いではないか。そうした余白がこの街に冗長性や豊かさをもたらしくれるはずだ。
■建築概要
プロジェクト名:南麻布の幕屋
施主:三菱地所レジデンス
監修:Open A
設計:ツ+ミ / 塚越宮下設計
構造設計:yasuhirokaneda STRUCTURE
照明設計:杉尾篤照明設計事務所
施工:きんでん
写真:長谷川健太
竣工:2020年7月
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | ファサード | 60mm角材 桧芯材 奈良産 |
外装・壁 | ファサード | 寸切りボルト SUS M6 |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません