川原達也+エレン・クリスティナ・クラウゼ / KAWAHARA KRAUSE ARCHITECTSによる、ベルリン建築ギャラリーでの自身の個展「EQUIVOCAL」です。会場構成も自身の作品として構想されています。会期は2021年4月24日まで。展覧会の公式ページはこちら。
EQUIVOCALと名付けたこの展覧会は,われわれの最初の10年の活動を振り返る現在ベルリンで開催中の個展となります.
EQUIVOCALとは,「幾つもの意味にとれる」とか「多義的」などと訳されますが,これはコーリン・ロウがその著作で頻繁に使うことばです.彼の批評の多くは,目で見てわかること(感覚)と,理解してわかること(知性)との重層的な,ときに対立的な関係を踏まえての観察に拠っていますが,われわれのタイトルの意味も彼の用法にならっています.
展覧会にはこれまでのプロジェクトから大小さまざまなスタディモデルのみを持ち込み,またギャラリースペース全体を使ったインスタレーションもあわせて制作しました.三角錐をさかさまにした各モジュールは,梱包材として使われる紙のバンドを薄くそいだものを転用しています.コンセプトモデルに見られるようなモジュールの立体は,紙バンドの線が作る面を通して現れ,これらモジュールを互いに回転させながら配置したインスタレーションは単純な長方形のギャラリースペースにたくさんのプリーツ(ひだ,折り目)を作り出します.
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会場で行われたパフォーマンスの動画
以下、建築家によるテキストです。
EQUIVOCALと名付けたこの展覧会は,われわれの最初の10年の活動を振り返る現在ベルリンで開催中の個展となります.
EQUIVOCALとは,「幾つもの意味にとれる」とか「多義的」などと訳されますが,これはコーリン・ロウがその著作で頻繁に使うことばです.彼の批評の多くは,目で見てわかること(感覚)と,理解してわかること(知性)との重層的な,ときに対立的な関係を踏まえての観察に拠っていますが,われわれのタイトルの意味も彼の用法にならっています.
展覧会にはこれまでのプロジェクトから大小さまざまなスタディモデルのみを持ち込み,またギャラリースペース全体を使ったインスタレーションもあわせて制作しました.三角錐をさかさまにした各モジュールは,梱包材として使われる紙のバンドを薄くそいだものを転用しています.コンセプトモデルに見られるようなモジュールの立体は,紙バンドの線が作る面を通して現れ,これらモジュールを互いに回転させながら配置したインスタレーションは単純な長方形のギャラリースペースにたくさんのプリーツ(ひだ,折り目)を作り出します.
コンセプトモデルが示すような中身の詰まった立体ではなく,中身がスカスカな立体に置き換えましたが,ギャラリースペースの真ん中に配置されたものと,極端に壁に寄せて配置されたもの感じ方,現れ方は不思議なほど異なります.壁際のモジュールはむしろしっかり中身の詰まったマッシブなかたまりとして,ときに壁が迫り出してできた袖壁のようにも感じられ,ギャラリースペースに親密なくぼみを現わします.それも観察の焦点の重心をすこし移せば,やはり透けた存在として背景に遠のき,ギャラリー全体が単純な一室空間として現われてきます.
見えていることや感じられることを手がかりに,それらをさらに解釈してわかること,わかったことが,翻ってさらに見えるものに影響し返すという,われわれがこれまで試みてきたテーマをこの単純なインスタレーションでも主題にしました.
会期の初め,ドイツではロックダウン中ということもあり,展覧会はショーウィンドウからの鑑賞のみとなっていましたが,この機会を利用してピアニストとダンサー,そして映像作家にこの空間を自由に解釈してもらい,そのパフォーマンスを配信するという試みも行いました.これまで面識もなかった3名のアーティストの音楽的,身体的,映像的な空間解釈が重なり合い,それらが共鳴する瞬間を目撃するのはとても貴重な経験で,展覧会のタイトルにもしたEQUIVOCALな側面を彼らがさらに補完してくれたのではないかと感じています.
■建築概要
Equivocal
Architektur Galerie Berlin
2021
KAWAHARA KRAUSE ARCHITECTS
プロジェクトチーム:川原達也、Ellen Kristina Krause
展覧会:Equivocal
2021年1月14日 – 2021年4月24日
写真:KAWAHARA KRAUSE ARCHITECTS