SHARE 藤原徹平による、東京・渋谷区のパヴィリオン「ストリート ガーデン シアター」のレポート。木組みと植物が絡み合い都市に必要な人の居場所を提供
- 日程
- 2021年7月1日(木)–9月5日(日)
藤原徹平が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「ストリート ガーデン シアター」のレポート。木組みと植物が絡み合い都市に必要な人の居場所を提供しています。“パビリオン・トウキョウ2021”の一環として制作された作品です。作品の設置場所はこちら(Google Map)。開催期間は2021年9月5日(日)まで。
こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート
藤原徹平が設計したパヴィリオン「ストリート ガーデン シアター」の敷地は、東京・渋谷区の旧こどもの城前である。
前面道路と敷地内の建物に挟まれたコンパクトなスペースに設置されている。前面道路の歩道は歩行者の往来も多く、東京の都心部と言ってよい場所だ。歩いていればこのパヴィリオンは必ず目に入るだろう。
実際に、このパヴィリオンを訪問した時に、この場所でのあり方が非常に熟慮されているように感じた。
藤原は、パビリオン・クリエイターとして人が集まるような作品を作ると同時に、実際にこの場所に貢献できる建築であることや、今の東京の都心部に必要な施設としての提案も、このパヴィリオンに込めたのではないだろうか。
実際にパヴィリオンの内部に入ると、ひんやりとした涼しさを感じる。それは直前に雨が降っていたこともあるが、植栽が十分に配置されていることも効果を発揮しているのだろう。そしていたる所に休憩できるベンチが設けられている。ご存知のように都心部の公共空間に実際に座ることができるベンチは少ない。不足する休憩場所であるベンチをこのパヴィリオンで提供することも試みられている。それは期間限定のものではあるがこの地域で働く人や訪問する人の日常に貢献するはずだ。ベンチに座ってみると、木組みと「植木梁」が歩道からの視線をほどよく遮り、公共空間の中にいるが包まれているような安心感を感じる。この距離感もこの建築で意識されていることだろう。
そのような日常に貢献する側面と同時に、このパヴィリオンを目的として訪問した人達へのパヴィリオン内を散策する楽しさも考慮され設計がなされている。パヴィリオン内には高低差があり、階段を上っていくことで、最も高い場所へを上り進むことができる。またそこに至るまでの時間はそれほど長くないが、空間体験としての面白さがある。
階段を上っていくと、建物の2階程の高さにまで上がることができるだろうか。そこからは都市の風景が少し変わった視点から眺められると共に、同じ敷地内にある岡本太郎のアート作品も新鮮な角度から見ることが可能になっている。
藤原は、パヴィリオンを設計するという依頼に対し、その要望に応えるだけでなく、それ以上の回答と視点を提示した。このパヴィリオンを訪問し体験することで建築設計について取り組み方や姿勢をも学ぶことができるだろう。
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こちらはワタリウム美術館で展示されている、藤原によるパヴィリオンの資料
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作品解説とクレジットはこちら
プロジェクトがスタートした2018年当初、藤原徹平(1975年〜)は、演劇のルーツとしての道の歴史に着目し、「劇場のような道」というテーマでパビリオンを設計・構想していました。しかし、新型コロナウイルス感染症による世界の急激な変化に伴い、プランを一新させました。藤原は、江戸から脈々と受け継がれてきた園芸文化を東京のレガシーとして提示する「植物と人のための劇場」をつくることにしたのです。
出来上がったパビリオンは、木組みと植物が複雑に絡み合った姿をしています。「植木梁」と名付けられた植木鉢を載せた梁は、構造体であり、植物の居場所をつくる小さな建築であり、人が都市で腰を休めるファニチャーでもあります。「植木梁」には、植木鉢が多数出演する他、野菜や雑草や花やハーブなど様々な植物が植えられています。
植物と人間の応答の場、都市の習慣を育てる場として捉え、植物変化を感じていくような、出来事のデザインも多数試みます。皆さまに、様々な形で都市の小さな森づくりに参加いただければと考えています。協賛:株式会社エヌ・シー・エヌ / 株式会社FORM GIVING
植栽協力:東京都農業振興事務所
設計:フジワラテッペイアーキテクツラボ 藤原徹平、中村駿太、Patrick Wheare、稲田 玲奈、寺内 玲、久米 雄志
構造設計:池田昌弘(Natural Sense) 池田昌弘 + 株式会社エヌ・シー・エヌ 福田浩史 伊藤真治 岡本悠佑 菊池裕香
施工:株式会社エムテック 小澤睦/スーパーロボット
リサーチ・プログラム企画:山川陸 + 板倉勇人+ Fujiwalabo
ジン・グラフィック制作:伊澤沙里 + 美山有 + Fujiwalabo
■開催概要
Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13
パビリオン・トウキョウ 2021
開催時期:2021年7月1日(木)~9月5日(日)
鑑賞時間:各パビリオンごとに異なります。最新情報を公式サイトにてご確認ください。
*一部のパビリオンには休館日がございます。また、入場料や事前予約が必要な会場がありますのでご注意ください。
会場:新国立競技場周辺エリアを中心に東京都内各所
パビリオン・クリエイター:藤森照信、妹島和世、藤本壮介、石上純也、平田晃久、藤原徹平、会田誠、草間彌生
特別参加:真鍋大度 + Rhizomatiks
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、パビリオン・トウキョウ2021実行委員会
企画:ワタリウム美術館
公式サイト:https://paviliontokyo.jp/