妹島和世+西沢立衛 / SANAAによる、TOTOギャラリー・間での建築展「環境と建築」をレポートします。進行中のプロジェクト模型中心に構成され、展示物の組み合わせや配置を現場で徹底的に検証調整することで、会場構成による体験自体も建築として捉えられるような展覧会になっています。展覧会期は2021年10月22日~2022年3月20日まで(※事前予約制)。展覧会の公式サイトはこちら。
こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート
SANAAの展覧会がTOTOギャラリー・間で始まる。本来はオリンピックの開催期間に、訪日する外国の方々に日本を代表する建築家の展覧会を見てもらおうと企画されたものであるが、コロナ禍によりそれはかなわず、一年を越える延期の末開催にこぎつけたのが本展である。SANAAとしてのギャラリー間での展覧会は2003年に続き2回目である(妹島単独での展示は1993年に開催されている)。
まず今回の展覧会の特徴のひとつは進行中のプロジェクトの模型を中心に展示されていることだろう。妹島と西沢の解説によれば、実際に事務所で使用されているスタディ模型や、それを展示の為に制作しなおしたもので構成されているのだという。また、西沢はギャラリー間の特徴となっている中庭を挟んで、上下のフロアに展示スペースが分かれていることの難しさにも言及していた。
本展では、下階のギャラリーでは、それぞれの建築がたつ敷地と、その敷地の状況を読み込み設計された建築の関係性を伝える事が意図されたのだという。その為、多くの模型はフロア付近に配置されており、閲覧者は上から眺める形で、模型を観覧することになる。
中庭を挟み、上階のギャラリーに上がると、よりヴォリュームの大きな模型群を目にすることになる。最も大きなスケールは1:1でつくられている「ニューサウスウェールズ州立美術館 シドニーモダンプロジェクト」の模型である、屋根部分と床部分が精密に作られておりガラスの入り方が検討されている。その他にも「新香川県立体育館」に関しては、3つのスケールの模型が展示されており様々な段階で建築が実現されるための検討が行われていることがよく分かる。上下階を何度か行き来していると、建築のおける検討のフェーズを追体験することができる感覚を覚えるし、建築家がアイデアを構想するための抽象的な思考と、実際に建てるための具象的な思考を行き来していることが実感できる展示となっている。
昨今、建築展では実寸大のインスタレーションを構築したり、映像によって建築の雰囲気を詳細に伝える試みが行われていることは弊サイトの読者ならばよく知っているだろう。本展は建築模型中心の展示であり、筆者は王道的な建築展の形式だとも感じた。それを妹島に投げかけたところ「これが自分たちにとっての『ふつう』の展示なんです」とのことであった。
内覧会時であったため、建築家やギャラリー間の皆さんから展覧会のプロセスも色々と伺う事ができた。
その中でも印象的だったのが、妹島と西沢がこの展示の為に現場に張り付き、直前まで展示される模型の配置や見せ方をかなりの熱意をもって取り組んだということである。
会場の様子を写真に写してしまうと、空間に建築模型が点在されている風景に見えるのだが、実際にこの空間の中を歩き回っていると、一般的な展示と比較し、通路幅をかなり狭めて模型を配置していたり、無関係とも思われる球体が浮かんでいたり、椅子のある部分があったりなかったりと、寸法の操作や模型やオブジェクトの配置によってギャラリー内に、動線や回遊性、体験が生まれていることが分かる。
もちろん図面でも計画されたそうのだが、やはり現地(現場)に模型を置いてみて、如何にこの場所性にフィットした展示とすることができるのか、また模型同士の関係性によって、ここだけの特別な経験を生み出すことができないか、という事が厳しく検討実践されたのだそうだ。そういう数多のエピソードを聞いていると、妹島と西沢によるSANAAが、この建築展に関しても、建築物の設計と同じように取り組んだのだという事がよく分かる。
本展は、建築模型を見るという経験と、建築模型等の配置と組み合わせによってうまれた“会場構成という建築”を体験する建築展と言えるのではないだろうか。また、本展会場内に、2021年12月に出版される3巻からなるSANAAの作品集の見本も展示されている。コルビュジエの作品集を想起される横長のつくりで内部デザインもクラシックな印象で興味深い書籍だった。この書籍もまた本展と同様、SANAAが情熱と意志を込めてつくっていることが分かる。
本記事でも出来るだけ詳細にレポートすることを勤めたが、是非実際に足を運んで体感してもらいたいと思う。
以下の写真はクリックで拡大します
■展覧会概要
展覧会名(日):妹島和世+西沢立衛/SANAA展 「環境と建築」
展覧会名(英):KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA: Architecture & Environment
会期:2021年10月22日(金)~2022年3月20日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日・年末年始休暇[2021年12月27日(月)-2022年1月6日(木)]
入場料:無料、事前予約制*
*新型コロナウイルス感染拡大防止の一環として、会期中は展覧会、 Bookshop TOTO(東京都港区)共通で事前予約制を導入して開催します。
会場:TOTOギャラリー・間
主催:TOTOギャラリー・間