佐藤充 / SATO+ARCHITECTSによる、宮城・仙台市の「南光台東の家」です。
西に眺望があり地盤で建築範囲が制限された敷地に計画、条件の中で環境を謳歌できる事を目指して主屋を拡張する可動式建具で覆われた半屋外空間を考案、生活領域の多様化と環境への応答の役割を担う事が意図されました。
敷地は仙台市中心部から車で20分程の住宅地の南西端に位置する。
敷地西側には高さ7mの擁壁の下に緑豊かな木々が生い茂り、さらにその先には雄大な奥羽山脈を見渡せる眺望に優れた場所だ。
敷地の履歴を調査すると、3年前まで宅地どころか平らな地面すら存在しない雑木に覆われた斜面地であった。敷地の1/3(西側敷地境界から4.8m)の範囲には、擁壁底盤が潜り込み、底盤上の埋戻土には建築を支持するほどの地耐力はない。
この西に開けた好立地と擁壁底盤による建築範囲の制限という悪条件の間で、趣味のアウトドアを好きな時に楽しんだり、在宅ワークの息抜きに爽やかな風を感じたりと、豊かな環境を思い切り謳歌できるような住宅を目指した。
そこで、擁壁底盤を避けた建築可能な範囲に断熱、気密を施した主屋(UA値0.4W/(㎡・K)、C値0.5㎠/㎡)を配置し、それに並列して西側に2層の半屋外空間を設け、ポリカーボネイト波板で造られたラフな建具で覆った。延床面積の3割を占める半屋外空間は、土台と主屋から延長した小屋梁先端を繋ぐ斜め通柱と吊り柱によって2階床を宙に浮かせ、1階を無柱にすることで埋戻土に対して建物荷重を作用させない。
建築範囲の制限を克服すると同時に、外部からの視線を遮りつつ良好な環境と眺望をめいっぱい取り込める状況を作り出した。
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以下、建築家によるテキストです。
擁壁の上の建ち方
敷地は仙台市中心部から車で20分程の住宅地の南西端に位置する。
敷地西側には高さ7mの擁壁の下に緑豊かな木々が生い茂り、さらにその先には雄大な奥羽山脈を見渡せる眺望に優れた場所だ。
敷地の履歴を調査すると、3年前まで宅地どころか平らな地面すら存在しない雑木に覆われた斜面地であった。敷地の1/3(西側敷地境界から4.8m)の範囲には、擁壁底盤が潜り込み、底盤上の埋戻土には建築を支持するほどの地耐力はない。地盤改良杭を支持地盤に到達させようにも底盤が地中障害となる。よって敷地面積167㎡のうち安全に建築可能な範囲は底盤の位置を除く100㎡程と判明した。一見、西に開けていること以外に特筆すべきことがない敷地は、不確かな地性と確かな地性とで成り立っていた。
この西に開けた好立地と擁壁底盤による建築範囲の制限という悪条件の間で、趣味のアウトドアを好きな時に楽しんだり、在宅ワークの息抜きに爽やかな風を感じたりと、豊かな環境を思い切り謳歌できるような住宅を目指した。
そこで、擁壁底盤を避けた建築可能な範囲に断熱、気密を施した主屋(UA値0.4W/(㎡・K)、C値0.5㎠/㎡)を配置し、それに並列して西側に2層の半屋外空間を設け、ポリカーボネイト波板で造られたラフな建具で覆った。延床面積の3割を占める半屋外空間は、土台と主屋から延長した小屋梁先端を繋ぐ斜め通柱と吊り柱によって2階床を宙に浮かせ、1階を無柱にすることで埋戻土に対して建物荷重を作用させない。
建築範囲の制限を克服すると同時に、外部からの視線を遮りつつ良好な環境と眺望をめいっぱい取り込める状況を作り出した。それは、アウトドアリビングやワークスペースといった生活領域となる他、夏季の強烈な西日の緩衝帯、冬季の陽光を蓄える温室になる。また、秋から春にかけて奥羽山脈から吹き降ろす風 “泉おろし”をラフな建具が裏漉しするように柔らかな風へと変換して半屋外空間を満たす。
住宅をUA値、C値といった数値で評価し、数値=価値と判断されがちな昨今において、数値に換算出来ないラフな設えの半屋外空間は、主屋と四季に呼応しながら能動的に暮らしをアップグレードする環境デバイスとなる。
不確かな地の宙を漂う半屋外空間は、確かな地に建つ主屋を拡張する。巨大な土木構築物に寄り添う住まいを模索した結果、ここでの生活や身体は、敷地を越えて西側の環境に向かって解き放たれ、住宅性能値を追い求めても到達し得ない豊かさを獲得した。
(佐藤充 真島崇啓)
■建築概要
名称:南光台東の家
計画地:宮城県仙台市泉区
用途:住宅
設計:SATO+ARCHITECTS 佐藤充 真島崇啓(元スタッフ)
施工:共栄ハウジング
敷地面積:167.09m2s
建築面積:77.23m2
延床面積:141.32m2
竣工年月:2019年10月
撮影:中山保寛