井上雄貴が設計した、千葉・流山市の、設計者の自邸「風光棲家」です。
閑静な住宅街に建つ二世帯住宅です。建築家は、隣家や世帯間の距離感の調整と独立性を求めて、中庭を核とする構成と中東伝統建築を参照した風光を取り込む環境装置を考案しました。また、内部でも時の移ろいを感じとれる住環境をつくる事を意図しました。
敷地は商業、マンション、戸建の開発ラッシュが進む流山おおたかの森駅から少し離れた閑静な低層住宅密集地である。
住み手は夫婦と小さな子ども2人、両親合わせた6人であり、隣家や家族内・世帯間の距離感を重要視することと、限られた床面積の中でスペースの兼用化、両親への生活動線配慮から平家とする条件で設計が始まった。
住宅密集地の敷地に対し、一面が道路、残り三面が隣地となっており、外壁に窓を設けたとしても隣家の窓と向き合う条件となることから、外壁の窓は極力避け、中庭と天窓を設けることで周囲からプライバシーを確保しつつ、風と光を内部に取り込む計画とした。
中東の伝統建築であるウインドタワーは上空の風を内部に取り込む仕組みであるが、本計画では風だけでなく光も取り込む環境装置として現代風にアレンジした。
建物中央に位置する中庭を囲う壁は屋根面から約3m上空に向かって立上がり、南面に向かってV字状に開けている。ここから風を取り込み、光を受け、建物内部に拡散する仕組みとした。このV字の壁により、反対側には小さい三角形が2つ形成され、南側から風が入ると正圧負圧の関係により、中庭に溜まった淀んだ空気が小さい三角形から上空に抜け、空気を自然に循環することが可能となる。
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以下、建築家によるテキストです。
敷地は商業、マンション、戸建の開発ラッシュが進む流山おおたかの森駅から少し離れた閑静な低層住宅密集地である。
住み手は夫婦と小さな子ども2人、両親合わせた6人であり、隣家や家族内・世帯間の距離感を重要視することと、限られた床面積の中でスペースの兼用化、両親への生活動線配慮から平家とする条件で設計が始まった。
住宅密集地の敷地に対し、一面が道路、残り三面が隣地となっており、外壁に窓を設けたとしても隣家の窓と向き合う条件となることから、外壁の窓は極力避け、中庭と天窓を設けることで周囲からプライバシーを確保しつつ、風と光を内部に取り込む計画とした。
中東の伝統建築であるウインドタワーは上空の風を内部に取り込む仕組みであるが、本計画では風だけでなく光も取り込む環境装置として現代風にアレンジした。
建物中央に位置する中庭を囲う壁は屋根面から約3m上空に向かって立上がり、南面に向かってV字状に開けている。ここから風を取り込み、光を受け、建物内部に拡散する仕組みとした。このV字の壁により、反対側には小さい三角形が2つ形成され、南側から風が入ると正圧負圧の関係により、中庭に溜まった淀んだ空気が小さい三角形から上空に抜け、空気を自然に循環することが可能となる。
中庭を囲うように二世帯共有のコモンリビング、水回り、各世帯のリビング・寝室を配置し、回遊性を確保している。中庭を中間領域として位置づけることで、二世帯間のプライバシーを確保しつつ、お互いの生活の様子も認識でき、コミュニケーションの場にもなる。
それぞれの部屋には天窓を配置することで、中庭からの風が各部屋に導かれ、天窓を通り抜ける。そして、中庭の上空に浮かぶ壁は直射光を受け、各部屋に柔らかい光を拡散させる。中庭に対し、各リビングが位置する東西面は開放可能なガラス貼り、トイレや風呂が位置する南北面は壁とし、機能に応じて中庭との向き合い方を変えている。
金属板で覆われ、窓の存在が消えているこの建物は住宅密集地において異彩を放ち、周囲から独立した環境が生まれている。室内にいながらも天候や時間による光、空気の状態変化の移ろいが感じとれる豊かな住環境を整えた。
■建築概要
名称:風光棲家
所在地:千葉県流山市
主要用途:戸建二世帯住宅(設計者自邸)
家族構成:親世帯夫婦2人+子世帯夫婦2人+子ども2人 計6人
意匠設計:井上雄貴(某組織設計事務所所属)
構造設計:U′plan
施工会社:北村住建
地域地区:第一種低層住居専用地域・防火指定なし・法22条区域
階数:平屋建て
主体構造:木造軸組工法
最高高さ:6020㎜
軒高さ:2995㎜
敷地面積:197.60㎡
延床面積:116.08㎡
建築面積:118.45㎡
容積率:58.75% 制限値150%
建蔽率:59.95% 制限値60%
設計期間:2019年05月~2019年12月
工事期間:2020年01月~2020年8月
建築写真:北村住建 平形康久