稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐 / Eurekaが設計した、福井・吉田郡の住宅「Silver water cabin」です。
過去に豪雪等を経験した地域に計画されました。建築家は、災害への“レジリエンス”を主題として、地面と距離をとる高基礎の建築と雪を切り離し地域の植生も考慮した外構を考案しました。また、内外で色彩を連続させ繋がりと生活の彩りも作る事も意図されました。
医療従事者である建主の多忙な日常をアシストし、幼い子供たちの成長とともに、家族が過ごすための積雪寒冷地に建つ住居である。設計にあたり、気候変動の渦中にあって、地域の風土に根ざした暮らしのかたちを発見したいと考えた。
敷地は2004年にも市街地河川氾濫のあった福井平野に位置する。九頭竜川にごく近く、ハザードマップにより水害が懸念された。また、福井県は2018年、記録的豪雪に見舞われており、建主は緊急時の病院出勤に備えて道路除雪状況による敷地選定を行った。建主のパーソナリティから導かれた公衆衛生や気象災害に応じた、建築のレジリエンスがテーマの住宅計画である。
まず、水や雪から逃れ、やり過ごすために、高基礎で建築をGLから1.2m持ち上げ、その上に木造の軸組みを構えた。周囲のマウンドは雪を建築から離し、地域植生の樹木や食べられる果樹などを植えた起伏のあるランドスケープをつくった。
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以下、建築家によるテキストです。
風土や公衆衛生に向き合い共存する積雪寒冷地の住居
医療従事者である建主の多忙な日常をアシストし、幼い子供たちの成長とともに、家族が過ごすための積雪寒冷地に建つ住居である。設計にあたり、気候変動の渦中にあって、地域の風土に根ざした暮らしのかたちを発見したいと考えた。
敷地は2004年にも市街地河川氾濫のあった福井平野に位置する。九頭竜川にごく近く、ハザードマップにより水害が懸念された。また、福井県は2018年、記録的豪雪に見舞われており、建主は緊急時の病院出勤に備えて道路除雪状況による敷地選定を行った。建主のパーソナリティから導かれた公衆衛生や気象災害に応じた、建築のレジリエンスがテーマの住宅計画である。
まず、水や雪から逃れ、やり過ごすために、高基礎で建築をGLから1.2m持ち上げ、その上に木造の軸組みを構えた。周囲のマウンドは雪を建築から離し、地域植生の樹木や食べられる果樹などを植えた起伏のあるランドスケープをつくった。
ピロティ状のエントランスと勝手口、物干しスペースは木トラスのアーケードで住宅の表裏が連なっている。慣習的に道路沿いにカーポートが並ぶ住宅地の街並みにおいて、暮らしの風景を地域へと開いている。
室内は、高低差のある大きなワンルームに切妻屋根を架けた構成だ。2つの天窓を繋ぐディフューザーは、開口部を絞った室内に自然光を拡散する。屋外の柱や植栽と近い緑を基調とした色彩を内装へと展開することで、冬季の生活を彩り、外や自然へ意識を導く。
今日の私たちを取り巻く災禍は、人間が環境を操作することは不可能であることを露わにし、新たな自然観や社会観を浮かび上がらせる。この地ももとより九頭竜川の流れが河岸段丘をなし、丘の上に集落が広がり、近年になって川べりの田畑が宅地開発で整備された。その上に子供たちが遊び、学び成長する時間や、家族の健康寿命が重なり、そして災害への備えがある。異なるタイムスパンによる事物と営為が織り合わさるように、住居は成り立っている。
■建築概要
題名:Silver water cabin
所在地:福井県吉田郡
主用途:専用住宅
設計:Eureka 稲垣淳哉+佐野哲史+永井拓生+堀英祐
担当:佐野哲史、原章史、竹味佑人(元所員)、間宮苗子(元所員)
階数:地上2階
構造:木造在来工法
外構・造園:荻野寿也景観設計 担当/荻野彰大
テキスタイル:オンデルデリンデ 担当/久米希実、植村遥
敷地面積:533.20㎡
建築面積:133.29㎡
延床面積:156.79㎡
設計:2017年10月~2019年5月
工事:2019年6月~2020年3月
竣工:2020年3月
写真:Ookura hideki / Kurome Photo Studio、 Ogino Toshiya