神谷勇机 / 1-1 Architectsが設計した、愛媛・伊予市の「House KJ 輪郭と線」です。
区画整理で生まれた“変形旗竿”地に計画されました。建築家は、“拠り所のない”状況下で“新たな関係性の構築”を目指し、旗と竿を貫く“幅1間”の量塊を主とした建築を考案しました。そして、環境を肯定し暮らしの一部となる建ち方を志向しました。
愛媛県の郊外に位置する大きな田園を宅地開発した区画の1つに計画した住宅。
区画全体は、新しく造成された土地であるが、もともとの田園とそれを囲む細い既存道路が高低差を含む歪な形状であったことから、対象敷地は一連の区画整理の中で最後に生まれた変形旗竿形状であると考えられた。そのため、様々な角度を持った敷地境界線と建物に囲まれることになり、敷地のどこに立っても拠り所のない隣地との距離感と希薄な関係性を感じた。
本計画では、歪な輪郭を持った変形旗竿地における建物と敷地境界線との距離を設計することで、隣地を含んだ外部との新たな関係性の構築を試みたプロジェクトである。
具体的には、変形旗竿地の旗部分と竿部分を貫くように幅1間の細長いボリュームを挿入するように配置する。そうすることで、変形敷地の中で拠り所となる強固な軸を持った内部空間がつくられる。内部の各スペース全てが、東西両側に手を伸ばせば届きそうな距離の外壁面を持ち、そこに隣地との関係を調整しながら外部へとつながる開口と溜まりの場となる軸から少し膨らんだ場所を配置していく。
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以下、建築家によるテキストです。
愛媛県の郊外に位置する大きな田園を宅地開発した区画の1つに計画した住宅。
区画全体は、新しく造成された土地であるが、もともとの田園とそれを囲む細い既存道路が高低差を含む歪な形状であったことから、対象敷地は一連の区画整理の中で最後に生まれた変形旗竿形状であると考えられた。そのため、様々な角度を持った敷地境界線と建物に囲まれることになり、敷地のどこに立っても拠り所のない隣地との距離感と希薄な関係性を感じた。
本計画では、歪な輪郭を持った変形旗竿地における建物と敷地境界線との距離を設計することで、隣地を含んだ外部との新たな関係性の構築を試みたプロジェクトである。
具体的には、変形旗竿地の旗部分と竿部分を貫くように幅1間の細長いボリュームを挿入するように配置する。そうすることで、変形敷地の中で拠り所となる強固な軸を持った内部空間がつくられる。内部の各スペース全てが、東西両側に手を伸ばせば届きそうな距離の外壁面を持ち、そこに隣地との関係を調整しながら外部へとつながる開口と溜まりの場となる軸から少し膨らんだ場所を配置していく。
住まい手は、暮らしの中で南北に延びた軸を行き来しながら生活することになるが、その中で逐一見え隠れする隣地は、高低差を含む変形した境界や様々な設えとその距離の取り方によって、動的に変化する。断面計画は、細長いワンルーム空間にスキップフロア状に各スペースが点在することで、家族との距離を適度に感じながら、隣地と立体的な関わりが生まれるように配慮した。
高い隣地の擁壁がすぐそばにそびえ立ち、柔らかい光の入る小さな場所に腰かけたり、低い隣地のフェンスが遠くに見える開放的な場所で食事をしたりと、区画整理で生まれたばらばらと乱立する設えと歪な隣地境界線との関係を設計することで、それら全てを肯定し、住まい手の暮らしの一部になるような建ち方が、この場所にふさわしいと考えた。
■建築概要
作品名:House KJ 輪郭と線
所在地:愛媛県伊予市
主要用途:住宅
設計:1-1 Architects 一級建築士事務所(神谷勇机)
構造:小松宏年構造設計事務所
施工:株式会社川下建設
構造:木造
敷地面積:252.50m2
建築面積:62.53m2
延床面積:100.90m2
設計期間:2020年6月~2021年4月
施工期間:2021年5月~2022年4月
写真:1-1 Architects 一級建築士事務所