SHARE 鈴木岳彦建築設計事務所による、東京・世田谷区の「M邸」。線路沿いの延床10坪の建築。厳しい条件下で“動線空間を最小限”とする為、建物全体を貫く“らせん階段”に各空間が直接つながる構成を考案。階段と諸室が融合した様な“一室空間的な住まい”を作る
鈴木岳彦建築設計事務所が設計した、東京・世田谷区の「M邸」です。
線路沿いの延床10坪の建築です。建築家は、厳しい条件下で“動線空間を最小限”とする為、建物全体を貫く“らせん階段”に各空間が直接つながる構成を考案しました。それによって、階段と諸室が融合した様な“一室空間的な住まい”が生まれました。
延床面積10坪の、とても小さな住宅です。
京王線の高架化工事に伴う用地買収後に残った、9坪弱のくさび型の敷地に建ちます。施主は分筆前の、南側道路部分を含めた土地に建つ住宅に長く住まわれていました。
「この場所に住み続けたい」という強い想いから、分筆し建替えることを決断されました。
南側道路は高架を作る間一時的に線路が敷設されるため玄関が設けられず、北側は条例により外壁の後退を求められました。室内は動線空間を最小限としたい。自ずと、建物北側をアプローチとすること、北側中央の玄関を入るとそこが既に建物全体を貫くらせん階段の一部であること、住宅内のスペース同士をそのらせん階段が直接結ぶこと、が決まりました。
各スペースの極端な小ささ(ダイニングキッチンは約4畳、リビングは約2.5畳)とらせん階段の大らかさ(こちらも約2.5畳)によって、両者の主従関係はあいまいなものになります。各所のデザインはそのあいまいさを強化するように決定していきました。
階段まで伸びる各スペースの床仕上、リビングに伸びソファ化する踏板、階段が収納や玄関といった別の機能を兼ねること、常に階段の先に別のスペースが垣間見えるような構造や踏板や家具の在り方。
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以下、建築家によるテキストです。
延床面積10坪の、とても小さな住宅です。
京王線の高架化工事に伴う用地買収後に残った、9坪弱のくさび型の敷地に建ちます。
施主は分筆前の、南側道路部分を含めた土地に建つ住宅に長く住まわれていました。
「この場所に住み続けたい」という強い想いから、分筆し建替えることを決断されました。
南側道路は高架を作る間一時的に線路が敷設されるため玄関が設けられず、北側は条例により外壁の後退を求められました。室内は動線空間を最小限としたい。自ずと、建物北側をアプローチとすること、北側中央の玄関を入るとそこが既に建物全体を貫くらせん階段の一部であること、住宅内のスペース同士をそのらせん階段が直接結ぶこと、が決まりました。
各スペースの極端な小ささ(ダイニングキッチンは約4畳、リビングは約2.5畳)とらせん階段の大らかさ(こちらも約2.5畳)によって、両者の主従関係はあいまいなものになります。各所のデザインはそのあいまいさを強化するように決定していきました。
階段まで伸びる各スペースの床仕上、リビングに伸びソファ化する踏板、階段が収納や玄関といった別の機能を兼ねること、常に階段の先に別のスペースが垣間見えるような構造や踏板や家具の在り方。
結果的にスペースと階段という区別を超えて、小さなスペースが見え隠れしながら連なる一室空間的な住まいとなりました。極小のスペースに身体を親密に包まれながら、同時に家全体に居ると思える感覚。そんな「小さな広大さ」を実現しようと試みています。
(鈴木岳彦)
構造計画について
一般にスキップフロア型の建築では、吹抜で分割されたブロックごとにバランスよく耐震要素を配置する必要がある。しかし極めて小規模な本計画でそれを行うと、壁やブレースによって視線が遮られ空間の小ささが強調されてしまう。そこで出窓やらせん階段も主要な構造の一部と捉え、上下にずれる床面を一体化する役割を担わせた。それによって耐震要素を外壁に集約でき、建物全体を一室空間と認識できる開放性を実現した。
本計画のような扁平な形状の建物では通常、転倒防止の杭を打たなければ地震時などに基礎が浮き上がってしまうが、軽量鉄骨造バルコニーの支柱を建物本体の転倒防止の杖として利かせることでシンプルなベタ基礎のみで成立させた。
天井高を確保し、建設費を抑えるため、梁を105角に統一した。スパンが比較的大きい箇所では梁間隔を303とし、さらに床合板と接着することで十分な床剛性を確保している。
(井上健一)
カーテンについて
スペースの都合上シングルレールしか付けられずとも、寝る時は暗く、日中は明るく過ごしたいという気持ちは変わらない。そこで出した答えが、遮光とレースの二つの素材を一枚のカーテンに仕立ててしまおうということでした。中央に縫いつけたタッセル代わりのリボンで左右に寄せることで
遮光⇄遮光とレース半分ずつ⇄レース⇄カーテンなし
と細やかな調節が可能です。
(庄司はるか)
■建築概要
題名:M邸
所在地:東京都世田谷区
主用途:戸建住宅
設計監理:鈴木岳彦建築設計事務所
担当/鈴木岳彦
構造設計:井上健一構造設計事務所
カーテンデザイン:Haruka Shoji Textile Atelier
施工:株式会社真規家工務店
構造:在来木造
階数:地上2階
敷地面積:28.67㎡
建築面積:16.36㎡
延床面積:33.06㎡
設計:2021年10月~2022年5月
工事:2022年5月~10月
竣工:2022年10月
写真:西川公朗
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | |
外装・壁 | 外壁 | |
内装・床 | ダイニングキッチン床 | |
内装・床 | リビング床 | |
内装・床 | 個室床 | カバ桜直貼パーケットバリューフローリングオイル塗装(興亜通商) |
内装・床 | ロフト床 | |
内装・床 | 水廻り床 | |
内装・壁 | 壁 | PB t=12.5+EPG(エスケー化研) |
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