山縣洋建築設計事務所が設計した、埼玉・さいたま市の「USⅠ」と「USⅡ」です。
家族が其々に暮らす隣接した二つの住宅の計画です。建築家は、隣合う条件を活かして、親世帯住居の外部空間を子世帯の住居でも取り込む構成を考案しました。そして、視線の抜け方も操作して四世代の家族が寄添える空間を作る事も意図されました。
さいたま市の駅に近い準工業地域に5年の歳月を経て2つの家をつくった。
1つ目の家USIは5年前に竣工したご両親の家でご主人のお母さんとの2世帯住宅だった。
敷地は66坪で庭には柿の木やヒメシャラなどの既存樹があったため、それらの樹木を残すように外部空間から検討した。1階のポーチ、中庭から外部階段を通って2階のテラスまでつながる外部空間のネットワークが生まれている。外部から考え、残余としての空間が内部になったような家である。
2つ目の家USIIはご実家の隣地の倉庫を解体してつくられたご長男家族のための住まいである。
敷地は18坪しかないため、敷地いっぱいに3階建てのボリュームを立ち上げるしかなかった。まとまった庭をつくることができないため、ご実家の外部空間を活かすことを考えた。特に敷地の中央にあった柿の木に向かい会うように2つの家がつくられている。
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以下、建築家によるテキストです。
外部空間のネットワークがつなぐ2つの家
さいたま市の駅に近い準工業地域に5年の歳月を経て2つの家をつくった。
道路は10mの幅員がありゆったりした街区であるが、街路樹はなく、倉庫や駐車場とアパートなどが混在し緑が少ない閑散とした周辺環境であった。
1つ目の家USIは5年前に竣工したご両親の家でご主人のお母さんとの2世帯住宅だった。
敷地は66坪で庭には柿の木やヒメシャラなどの既存樹があったため、それらの樹木を残すように外部空間から検討した。1階のポーチ、中庭から外部階段を通って2階のテラスまでつながる外部空間のネットワークが生まれている。外部から考え、残余としての空間が内部になったような家である。
2つ目の家USIIはご実家の隣地の倉庫を解体してつくられたご長男家族のための住まいである。
敷地は18坪しかないため、敷地いっぱいに3階建てのボリュームを立ち上げるしかなかった。まとまった庭をつくることができないため、ご実家の外部空間を活かすことを考えた。特に敷地の中央にあった柿の木に向かい会うように2つの家がつくられている。
ご長男の家は建蔽率いっぱいの3階のボリュームを道路側に寄せて配置し、北側の隣地のご両親の家との間に小さな外部空間をつくった。矩形平面の中央に直階段を配置した単純な構成であるが、階段により分節された2つの空間の床レベルを40cmずらしている。1階と3階は細かく空間が仕切られているが、2階のリビング・ダイニングは大きな一つの空間となっている。中央の階段はスチールのロッドで吊られていて空間をやわらかく分節している。
2階部分の北側のボリュームを削り取り、柿の木に隣接するテラスをつくった。このテラスから柿の木の向こう側にある隣地のご両親の家のテラスやダイニングに視線が通り、お互いの気配が感じられる距離感を生み出している。
家族の長い記憶が刻まれた柿の木のまわりに4世代にわたるご家族が寄り添うように住むために、外部空間のネットワークが生まれるように考えられた2つの住宅である。
■建築概要
名称:USI
所在地:埼玉県さいたま市
主用途:2世帯住宅
設計監理:山縣洋建築設計事務所
担当:山縣洋、安藤浩士
構造設計:坂根構造デザイン
施工:株式会社 嶋澤啓工務店
構造:木造
階数:地上2階建て
敷地面積:219.54m2
建築面積:138.00m2
延床面積:245.16m2
設計期間:2015年8月~2016年2月
工事期間:2016年3月~2016年9月
竣工:2016年9月
撮影:Forward Stroke Inc.
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名称:USII
所在地:埼玉県さいたま市
主用途:住宅
設計監理:山縣洋建築設計事務所
担当:山縣洋、諸星千絵
構造設計:坂根構造デザイン
施工:株式会社 嶋澤啓工務店
構造:木造一部鉄骨造
階数:地上3階建て
敷地面積:59.59m2
建築面積:35.51m2
延床面積:102.57m2
設計期間:2020年2月~2021年1月
工事期間:2021年2月~2021年11月
竣工:2021年11月
撮影:Forward Stroke Inc.