五十嵐敏恭と佐藤研吾による建築展「グルグル広がって上がっていく」の会場写真です。
建築と生き方の“表裏一体”を体現する二人の建築家の展覧会です。対話の中で見い出された“言葉”をキーに“思考モデル”とも言える作品を制作して展示しています。本展は、畝森泰行と金野千恵の事務所でもある東京台東区の“BASE”を会場に開催されます。会期は、2023年10月1日まで。展覧会の公式ページはこちらです。また、2023年9月23日・30日・10月1日に現地やオンラインで行われる関連イベントも企画されています(詳細は末尾に掲載)。
2組の建築家 五十嵐敏恭-Studio Cochi Architects と 佐藤研吾-Korogaro Association による展覧会「グルグル広がって上がっていく」を開催する運びとなりました。
2組の建築家がそれぞれの拠点作りの構想を機軸に対話し、共有し得るいくつかの言葉を見つけ、新たな建築やモノのかたちの試行錯誤を展示します。言葉による対話、作ったモノによる対話、あるいは両者をつなげる構想自体が並置されることによって、これからの建築、生きていく世界を思考していきます。
五十嵐敏恭によるステートメント
グルグル広げた対話の中から、お互いのモノづくりと今後の活動につながるかもしれない言葉たちを拾い、その言葉たちを共通のキーワードとしてお互い新しくモノを制作することを試みた。キーワードはお互いに共有できる言葉だが、ひとりでは発見できなかった言葉でもある。自分たちが立っているところから、お互いに少しだけ離れたところからの視点を織り交ぜることで生まれたモノを、対話の成果物として展示したいと思う。
佐藤研吾によるステートメント
両者の異なる思考モデルが提示されることは、興行上とても有効だとは思うが、展示している当事者からすれば「おい、お前はどう生きるんだ」というヒリヒリと迫ってくる大きな問いに焦燥する最中でもあるので気が気でない。だがしかし、フラフラが次第にグルグルと、移動と行動の残像がボンヤリとした軌跡として見えてくるようになれば、自分はもう少し上に行ける気がするのだ。なのでひとまずは建築をつづけていこうと思う。
以下の写真はクリックで拡大します
五十嵐敏恭によるステートメント
グルグル広げた対話の中から、お互いのモノづくりと今後の活動につながるかもしれない言葉たちを拾い、その言葉たちを共通のキーワードとしてお互い新しくモノを制作することを試みた。キーワードはお互いに共有できる言葉だが、ひとりでは発見できなかった言葉でもある。自分たちが立っているところから、お互いに少しだけ離れたところからの視点を織り交ぜることで生まれたモノを、対話の成果物として展示したいと思う。
(カタログ『グルグル広がって上がっていく』より)
五十嵐敏恭
1984年埼玉県生まれ。2006年ものつくり大学卒業。2005年沖縄県内の設計事務所へのインターンシップをきっかけに沖縄に移住。有限会社門一級建築士事務所を経て、2014年STUDIO COCHI ARCHITECTS設立。主な受賞歴に、2019年ARCHITECTURE ASIA AWARDS FOR EMERGING ARCHITECTS Bronze medalなど。
佐藤研吾によるステートメント
両者の異なる思考モデルが提示されることは、興行上とても有効だとは思うが、展示している当事者からすれば「おい、お前はどう生きるんだ」というヒリヒリと迫ってくる大きな問いに焦燥する最中でもあるので気が気でない。だがしかし、フラフラが次第に グルグルと、移動と行動の残像がボンヤリとした軌跡として見えてくるようになれば、自分はもう少し上に行ける気がするのだ。なのでひとまずは建築をつづけていこうと思う。
(カタログ『グルグル広がって上がっていく』より)
佐藤研吾
1989年神奈川県生まれ。2013年早稲田大学大学院修士課程修了。石山修武のSTUDIO GAYAを経て、2020年一般社団法人コロガロウ/佐藤研吾建築設計事務所主宰。福島県大玉村で藍染めの活動をする歓藍社に所属。デザインワークショップ「In-Field Studio / 荒れ地のなかスタジオ」を主宰。福島、神奈川、インドという複数の拠点を往還しながら、創作活動に取り組んでいる。主な受賞歴に、2017年第36回SDレビュー鹿島賞など。
主催者からのテキスト
金野千恵による「表現と批評の場をめざして」
2022年の秋、10年ぶりに沖縄を訪れ、モンスーンアジアの建築のおおらかさに圧倒されるなか、五十嵐さんの建築に出会った。分厚い葉肉の植物や強い日差しと拮抗しながら人の暮らしを守る覆いであり、地から生えた岩場のようにも感じられるほど、その地に建つべくして建った姿に感じられた。
特性ある場所にじっと拠点を構え、その定点から外側を見ようという彼の姿勢を現した建築を感じたのだ。他方、佐藤さんはインド、福島県郡山、今後は神奈川県二宮町という複数に拠点を構え、その間を運動しながら自らのあり様を形作ろうとする。彼が手がける作品も、一つ一つの要素の意味よりは、要素が複数集まることで生まれる関係性や、その間に広がる想像の余白を大切にし、受け取る個々人の中に全体を浮かび上がらせるものである。
建築家の仕事は、その生き方と建築のあり様が表裏一体に現れる。このことを鮮やかに体現する二人が、新しく各々の設計、創作活動の拠点を計画するこのタイミングに二人展を開催できることを嬉しく思い、心躍っている。
畝森泰行による「五十嵐さんと佐藤さんについて」
五十嵐敏恭さんと佐藤研吾さんは、ともにひとりで事務所を代表する建築家である。その設計行為は自らものをつくることと地続きで、さらに自身の生活もそれら建築活動と切れ目なく連続している。都市から離れた自然豊かな場所を拠点に持ちつつ、けれどふたりの建築には独特な違いと異なる魅力を感じる。
例えば五十嵐さんの自邸は、沖縄の大自然に溶け込むように建っている。どっしりと根を張るように建つその存在感と開け放しの快楽さは、大地と建築が、あるいは自然と人間が分かち難いという普遍的な問いを私たちに投げかける。一方、福島やインドなど複数の拠点を行き来する佐藤さんの建築は、場所や時間を超えて異なるものが集まる複雑さと自由さを持っている。それは藍染めや地域おこしなどいくつも生業をもつ彼自身の生き方ともリンクしており、その横断的で動的な姿勢にどこか懐かしさも覚える。
強く絶対的なものにストレートに向き合う五十嵐さんと、相対的に世界を捉え、時にその捻れのなかにつくる意味を見ようとする佐藤さんが、今回私たちのBASE全体を使って展示する。ともに現場主義で、またリアルであることが指標にあり、そういう彼らの言葉と新しい表現に出会えることが大変楽しみである。
■展覧会概要
展覧会タイトル:グルグル広がって上がっていく/Dialogue vol.3 COCHI・KOROGARO
会期:2023年9月21日(木)~2023年10月1日(日)
営業時間:11:00-17:00
休廊日:なし
会場:BASE(東京都台東区浅草橋3-12-6)
入場料:無料
出展作家:五十嵐敏恭・佐藤研吾
主催:+BASE(畝森泰行・金野千恵)
冊子編集:岡本雄大
───
イベント①:OPENING DIALOGUE
開催日時:2023年9月23日 17:00-19:00
登壇者:五十嵐敏恭、佐藤研吾
オンラインでの聴講が可能です。
聴講方法は追ってinstagram等でお知らせします。
───
イベント②:CROSS TALK
開催日時:2023年9月30日 17:00-19:00
登壇者:五十嵐、佐藤研吾、佐藤敬、Aleksandra Kovaleva(KASA)、湯浅良介
───
イベント③:CLOSING TALK
開催日時:2023年10月1日 17:00-19:00
登壇者:五十嵐敏恭、佐藤研吾、畝森泰行、金野千恵