ジオ-グラフィック・デザイン・ラボと泉設計室と構造計画研究所が設計した、徳島市の「東部防災館 おきのすインドアパーク」です。
旧新聞印刷センターを転用した施設の計画です。建築家は、災害時にも平時にも活用できる建築との要件に、様々な箇所で両面に対応する“リバーシブルなデザイン”を志向しました。また、様々な関係者と共に設計者も運営に携わり“柔軟な場”を持続します。施設の公式サイトはこちら。
徳島市東部の埋立地、マリンピア沖洲に建つ徳島新聞社の旧新聞印刷センターが、機能移転に伴い2020年に徳島県に寄付されました。
築25年ですが、新耐震基準にも適合していることから、県は、この印刷センターを災害時の「広域物資輸送拠点」とし、かつ平時の活用用途とそのための改修提案、そして持続可能な事業計画を含めたハード・ソフト一体型の設計競技を行いました。
私たちは、徳島市内のインドアスポーツ施設が徳島駅前に移転し、屋上に設置されるフットサルコートが屋外になり雨の日の利用が難しいこと、子育て世代や中高生が雨の日に行く場所が少ないという意見に耳を傾け、子どもの可能性を伸ばすスポーツ&カルチャー&イベントスペース、カフェ、学童保育、防災がひとつの屋根のもと連携していく、おきのすインドアパークを提案し、設計者に選定頂きました。
この施設は社会インフラであった新聞の印刷センターの痕跡が感じられると同時に、平時と災害時の両面で使われることを前提にしたリバーシブルなデザインで徹底しました。
例えば、カフェスペースは、かつて新聞が刷り上がったのちにトラックに積み込むための発送センターがあった場所に設けました。厨房はもと管理人室を転用しています。室内外の仕切りはシャッターがあった場所に、災害時にも入って来ることの出来るトラック車高に配慮したポリカーボネートの引き戸を新設し、平時は障子のように開閉することで、カフェのテーブルのある場所と屋外が、キャノピー下とつながった活用が可能としています。
キッズパークは、広い場所を活かして、災害時には移動可能な運送用パレットでアスレチックのような凹凸のある遊び場所をつくっています。パレットの高さが140mmである凹凸のある場所は、子どもたちの好奇心を刺激しつつ、子どものスケールである安全性を両立させています。
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以下、建築家によるテキストです。
旧新聞印刷センターを様々なコンテンツがあるインドアの公園のような場所として生まれ変わらせる
徳島市東部の埋立地、マリンピア沖洲に建つ徳島新聞社の旧新聞印刷センターが、機能移転に伴い2020年に徳島県に寄付されました。
築25年ですが、新耐震基準にも適合していることから、県は、この印刷センターを災害時の「広域物資輸送拠点」とし、かつ平時の活用用途とそのための改修提案、そして持続可能な事業計画を含めたハード・ソフト一体型の設計競技を行いました。
私たちは、徳島市内のインドアスポーツ施設が徳島駅前に移転し、屋上に設置されるフットサルコートが屋外になり雨の日の利用が難しいこと、子育て世代や中高生が雨の日に行く場所が少ないという意見に耳を傾け、子どもの可能性を伸ばすスポーツ&カルチャー&イベントスペース、カフェ、学童保育、防災がひとつの屋根のもと連携していく、おきのすインドアパークを提案し、設計者に選定頂きました。
1階の中心には、天井高さが13mもある巨大な輪転印刷機室がありましたが、今回の改修工事で、自然光のあふれるインドアスポーツのメインコートとして生まれ変わらせました。輪転印刷機室は機能上、自然光をシャットアウトした暗室でしたが、その部屋の天井スラブを撤去しハイサイドライトを新設しました。この操作によって、施設中央に自然光にあふれる大空間が生まれ、既存の印刷センターが生まれ変わったことを象徴する空間となりました。
平時と災害時をつなぐリバーシブルなデザイン
東部防災館おきのすインドアパークは、社会インフラであった新聞の印刷センターの痕跡が感じられると同時に、平時と災害時の両面で使われることを前提にしたリバーシブルなデザインを徹底することで、様々なコンテンツパートナーの方々が、日常・災害時を通して主体的に連携をしていける余白を感じられるようにしました。
例えば、カフェスペースは、かつて新聞が刷り上がったのちにトラックに積み込むための発送センターがあった場所に設けました。厨房はもと管理人室を転用しています。室内外の仕切りはシャッターがあった場所に、災害時にも入って来ることの出来るトラック車高に配慮したポリカーボネートの引き戸を新設し、平時は障子のように開閉することで、カフェのテーブルのある場所と屋外が、キャノピー下とつながった活用が可能としています。
キッズパークは、広い場所を活かして、災害時には移動可能な運送用パレットでアスレチックのような凹凸のある遊び場所をつくっています。パレットの高さが140mmである凹凸のある場所は、子どもたちの好奇心を刺激しつつ、子どものスケールである安全性を両立させています。
1階のメインコートでは、日常的にはバレーボール、バトミントン、フットサルなどの利用が多く、休日は剣道や空手の大会など各種団体の利用が多くなってきています。床は運動用のゴムシートの上にOSB合板を敷いていますが、災害時にフォークリフトの荷重を想定した設計としています。
2階には、防音仕様のダンススタジオや、イベントスペース、キッチンスタジオ、クラフトスタジオなどで、カルチャー教室を指定管理者が主催したり、利用者自ら企画されたイベントが開催されています。こちらは、災害時には一次避難所として利用される想定で設計しています。
ヴィジュアル・アイデンティティとサインデザインは、6Dの木住野氏に依頼しました。新聞の印刷センターのざっくりとした大空間の魅力であると同時に、災害時に広域物資輸送拠点となること自体をデザインとして重要視しました。その結果、ざっくりとした大空間の魅力に対応した単管パイプとターポリンを使ったサイン計画となっています。
指定管理の代表者として、様々なコンテンツパートナー、県と共に、連携した運営を実践する
前田が代表を務めるジオグラフィックデザインと、スポーツ施設の運営実績が豊富なシンコースポーツ四国が共同事業体を結成して、2023年9月のオープン以降、指定管理会社として、おきのすインドアパークの広報・施設管理・レンタルスペース・教室やイベント開催などの運営を行っています。
オープン以降、スポーツやカルチャーを組み合わせたイベントを開催しており、親子連れを中心に賑わいを見せています。
2024年春からは、徳島市内で英語保育の実績が豊富なCOLORSが、英語の学童保育サービスを3階で行い、近隣の小学校への送迎サービスも開始します。同時に学童保育に来た子どもたちやご両親がスポーツやカルチャー教室に参加する機会を指定管理者が創出する予定です。
私たちは「雨の日でも一日中過ごせて、様々なコンテンツが一つ屋根の下にあるインドアの公園のような場所」という、設計時のビジョンを、指定管理者とコンテンツパートナーが共有して発展させ、対面での利用者の方々へのヒアリングやSNS運用で見えてくる意見を取り入れ、多主体が連携して新しいコンテンツをを生み出しています。設計事務所のスタッフも、デザイン面での運営をフォローしています。
この指定管理の体制が 10 年間、”柔軟に継続・発展していく場を創出”するにより、子どもの可能性を伸ばすスポーツ&カルチャー&イベントスペース、カフェ、学童保育、防災が連携していく、東部防災館おきのすインドアパークの価値と文化を形成していきます。
■建築概要
題名:徳島県立東部防災館 おきのすインドアパーク
所在地:徳島県徳島市東沖洲1丁目8
主要用途:スポーツ施設、カルチャー教室、学童保育、子育て支援、飲食(災害時:広域物資輸送拠点)
建主:徳島県
設計:ジオーグラフィック・デザイン・ラボ 担当/前田茂樹、中野照正、川端竜平、中島咲、藤本雅広(元所員)、STOPIN ANDREA(元所員)
泉設計室 担当/泉真治、佐々木司
構造:構造計画研究所 担当/石塚広一、大西雄一郎、西田拓真(元所員)
設備:島津設計 担当/機械:島津充宏、西寿隆(元所員) 電気:細沼昭勝
照明計画:ツキライティングオフィス 担当/吉楽広敦、佐藤未由希
サインデザイン・VI:6D 担当/木住野彰悟、加藤乃梨佳
ファブリック:fabricscape 担当/山本紀代彦、森永一有、西垣佑哉
監理:岡島建築事務所 担当/瀬尾卓芳
創和建築設計 担当/鎌田龍二
施工:姫野組 担当/後藤田康司
美土利建設 担当/森本直樹
空調:四国工販
衛生(管):津乃峰設備、福富工業
電気:四国電気工業
敷地面積:7,988.42㎡
建築面積:5,001.03㎡
延床面積:9,106.30㎡
地下1階:371.01㎡
1階:4,750.23㎡
2階:3,071.23㎡
3階:7,06.24㎡
R階:107.98㎡
PH階:99.61㎡
建蔽率:62.61%(許容:70%)
容積率:110.10%(許容:200%)
階数:地下1階 地上3階 塔屋1階
撮影:PicnicWork、藤本伸吾(sinca)