SHARE 中村拓志&NAP建築設計事務所による、埼玉・所沢市の「狭山樹林葬地」。霊園内に計画された墓地。地域の自然環境を背景とした“循環の死生観”のもとに、森に還った故人を偲び“対話できる”ような建築を志向。放物面として設計された礼拝所は60m先にある森からの音を祈る人に届ける
中村拓志&NAP建築設計事務所が設計した、埼玉・所沢市の「狭山樹林葬地」です。
霊園内に計画された墓地です。建築家は、地域の自然環境を背景とした“循環の死生観”のもとに、森に還った故人を偲び“対話できる”ような建築を志向しました。そして、放物面として設計された礼拝所は60m先にある森からの音を祈る人に届けます。
管理休憩棟と礼拝堂に続く三部作の一つとして、狭山湖畔霊園内に計画された墓地である。
東京都民の水がめと呼ばれる多摩湖・狭山湖の水源を涵養する森が滋養した水に人は生かされ、死後はこの森の大地に還る。そのような循環の死生観のもと、祈りの対象を森に見出した。元々立っていたクスノキと森を墓標とし、森を遥拝することで、森に還った故人を偲び、対話できるような建築を目指した。
中心には高さ1mの緑の小さな丘状の墓所と、祈りやお参りのための礼拝所を60m先の森に向け配置した。礼拝用のベンチに腰を下ろすと、緑の丘が構内道路や墓地を隠し、森と直接繋がって見える。屋根でも壁でもある放物面が、祈る人を背後からくるむ。
御影石のベンチの座面は、座る位置を特定して頭の中心が放物面の焦点にくるよう削り出されている。建築が遠方からやってくる弱い波長や音を一点へと集めるパラボラアンテナの役割を果たし、座ると突然、遠方の森の枝葉の擦れる音や鳥や虫たちの鳴き声が覚醒したように聞こえ出す。それはとても個人的な体験である。森のささやきが座った人にだけ届き、語りかけた言葉は森へ響くだろう。
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以下、建築家によるテキストです。
管理休憩棟と礼拝堂に続く三部作の一つとして、狭山湖畔霊園内に計画された墓地である。
東京都民の水がめと呼ばれる多摩湖・狭山湖の水源を涵養する森が滋養した水に人は生かされ、死後はこの森の大地に還る。そのような循環の死生観のもと、祈りの対象を森に見出した。元々立っていたクスノキと森を墓標とし、森を遥拝することで、森に還った故人を偲び、対話できるような建築を目指した。
中心には高さ1mの緑の小さな丘状の墓所と、祈りやお参りのための礼拝所を60m先の森に向け配置した。礼拝用のベンチに腰を下ろすと、緑の丘が構内道路や墓地を隠し、森と直接繋がって見える。屋根でも壁でもある放物面が、祈る人を背後からくるむ。
御影石のベンチの座面は、座る位置を特定して頭の中心が放物面の焦点にくるよう削り出されている。建築が遠方からやってくる弱い波長や音を一点へと集めるパラボラアンテナの役割を果たし、座ると突然、遠方の森の枝葉の擦れる音や鳥や虫たちの鳴き声が覚醒したように聞こえ出す。それはとても個人的な体験である。森のささやきが座った人にだけ届き、語りかけた言葉は森へ響くだろう。
■建築概要
題名:狭山樹林葬地
所在地:埼玉県所沢市大字上山口2050番地
主用途:樹木葬
設計:中村拓志&NAP建築設計事務所
担当/中村拓志、劉洋
施工:株式会社村山土建
構造設計:株式会社アンス
構造:S造
敷地面積:9679.37㎡
建築面積:6.69㎡
延床面積:6.69 ㎡
設計:2020年6月~2022年3月
工事:2022年3月~2022年8月
竣工:2022年8月
写真:Ben Richards
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 外側 | モルタル造形t=40mm(ANS) |
外装・屋根 | 屋根 内側 | 再生木材曲げ加工 t=26mm(リュクスアンドデザイン) |
外装・屋根 | 集音板 | アルミヘラ絞り加工(北嶋絞製作所) |
外装・床 | 床 | |
外装・壁 | 立上り壁 | 無垢御影石削り出し t=130mm |
外構・造作家具 | 献花台、ベンチ | 無垢御影石削り出し |
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