今津康夫 / ninkipen!が設計した、滋賀・愛荘町の「招き屋根の調剤薬局」です。
かつての“残影”が残る旧宿場町での計画です。建築家は、この場所に相応しい在り方を求め、見える屋根面積を増やす“招き屋根”と半屋外空間を作る“通り庇”を備えた建築を考案しました。また、“厨子二階”で高さを抑えつつ気積も確保しています。
中山道65番目の宿場町、愛知川宿に位置する調剤薬局である。
広重の木曽海道六拾九次にも描かれた街道沿いには旧旅籠など往時を偲ばせる建築が今も使われており、かつて宿場町として賑わった残影が点在している。
それらのコンポジションに倣い、この場所にふさわしいプロポーションとスケールを模索した。
まずはじめに、二階のオフィス部分を厨子二階として、屋根の高さを抑えながらも勾配天井とすることで十分な気積を確保し、次に一階には通り庇を設け、前面道路の角度を受け止めながら土庇と連続させて半屋外の大きな縁空間をつくった。
さらに一、二階ともに棟木を後ろ側に偏心させて招き屋根とすることで、通りから見える屋根の面積を増幅させ、3枚の屋根と庇の重なりを可視化している。
薬局には元気になろうとする人々が訪れる。
木質化した佇まいと頭を垂れながら重なり合う2枚の屋根と1枚の庇が、当たり前の景色に溶け込み、何気ない日々の暮らしの一助となることを願っている。
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以下、建築家によるテキストです。
中山道65番目の宿場町、愛知川宿に位置する調剤薬局である。
広重の木曽海道六拾九次にも描かれた街道沿いには旧旅籠など往時を偲ばせる建築が今も使われており、かつて宿場町として賑わった残影が点在している。
それらのコンポジションに倣い、この場所にふさわしいプロポーションとスケールを模索した。
まずはじめに、二階のオフィス部分を厨子二階として、屋根の高さを抑えながらも勾配天井とすることで十分な気積を確保し、次に一階には通り庇を設け、前面道路の角度を受け止めながら土庇と連続させて半屋外の大きな縁空間をつくった。
さらに一、二階ともに棟木を後ろ側に偏心させて招き屋根とすることで、通りから見える屋根の面積を増幅させ、3枚の屋根と庇の重なりを可視化している。
薬局には元気になろうとする人々が訪れる。
木質化した佇まいと頭を垂れながら重なり合う2枚の屋根と1枚の庇が、当たり前の景色に溶け込み、何気ない日々の暮らしの一助となることを願っている。
■建築概要
名称:招き屋根の調剤薬局
場所:滋賀県愛荘町
用途:調剤薬局
設計:今津康夫 / ninkipen!
構造:片岡慎策 / 片岡構造
施工:よし工務店
庭:阪口
延床面積:131.75㎡
竣工:2024年4月
写真:河田弘樹