高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図
photo©関拓弥

高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図

高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図外観、東側道路より見る。左:江戸長屋、右:明治棟(登録有形文化財) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、1階、カフェから庭を見る。(建築家による解説:現わしになった既存柱の列が屋外の鉄骨柱まで連続して見える) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階、テラス。(建築家による解説:既存から延長した形状の立体的なフレームに植物やカフェ席、日除け布などが絡まる) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図俯瞰、西側より見る。(建築家による解説:谷中霊園の緑に囲まれた地域に開かれた庭) photo©関拓弥

高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureが設計した、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」です。
歴史ある花店を改修した文化的拠点の計画です。建築家は、文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向しました。また、新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図されました。店舗の場所はこちら(Google Map)。
また、本プロジェクトについての書籍『note。 花重リノベーション』の情報も末尾に掲載します。

谷中霊園の入口にある150年の歴史をもつ老舗花屋の改修計画。
経営難に直面していた歴史ある花屋を地元企業が運営ごと買取り、地域に開いた文化的拠点として蘇らせた。
登録有形文化財を含め、歴史的な佇まいや履歴を残しながら、これからも変化し続けることを許容する「動的な保存」によって、地域の文化を未来につなぐことを目指した。

建築家によるテキストより

「花重」は、営みと建物がともに残る数少ない事例である。計画にあたっては、何を残し何を変えるのかを概念的に整理した。
建築を生きた状態のまま保存するために、新旧という概念ではなく時間軸で構成を捉え直し、「核となる基本的な骨格」と「変化し続けるもの」が同時にある状態を目指した。

建築家によるテキストより

これまでの保存再生はオリジナルな状態を最上として復原・再現をする手法や、これまでの履歴を含んだ今の状態を維持する凍結保存などが多く行われてきた。特に石積みの文化においては、石のもつ時間軸の長さ故、対立的な表現を用いて新しく手を加える部分を明快にする手法が多く取られる。一方木造軸組建築は、木という材料の耐久性や加工のしやすさから、その時々のニーズに合わせて変わっていくことが出来る。

「花重」は江戸から昭和にかけての増改築の中で、古いものと新しいものが二項対立ではなく、オーバーラップしながら共存している状態を常に続けてきた。古くなった建築を壊して昔の姿のまま復元するでもなく、真新しい建築につくり変えるでもなく、その間の状態をキープしながら営みと建築が動き続けてきた。今回の改修計画も、これまでの動きの中の一つの段階であり、これからも生き続けていく状態を目指して「動的な保存」として計画した。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図鳥瞰、西側より見る。(建築家による解説:奥に見える緑は谷中霊園) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図俯瞰、西側より見る。(建築家による解説:谷中霊園の緑に囲まれた地域に開かれた庭) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図外観、東側道路より見る。左:江戸長屋、右:明治棟(登録有形文化財) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図明治棟、1階、花店のスペース。(建築家による解説:中央のテーブルはフラワーアレンジメントの舞台にもなる) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図明治棟、1階、つなぎ棟越しに戦前棟のカフェを見る。(建築家による解説:緑が映り込むガラス床下には大谷石積みの地下倉庫が見える) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図左:つなぎ棟、厨房、右:明治棟 photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、1階、カフェから庭を見る。(建築家による解説:現わしになった既存柱の列が屋外の鉄骨柱まで連続して見える) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、1階、カフェから庭側を見る。(建築家による解説:既存柱の列が屋外の鉄骨柱まで連続する) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図屋外テラス。(建築家による解説:フレームの中で植物、床、階段、手摺など様々なエレメントが自由に振る舞う) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図屋外テラス。(建築家による解説:右手の戦前棟から外に出ることができ、カフェの屋外席として犬連れも楽しめる) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図フレームとスラブの詳細。(建築家による解説:テラスは上からボルト接合し、梁の上に載っているだけのような意匠とした) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図柱の足もとを見る。 photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図フレーム越しに2階への階段を見る。(建築家による解説:曲線を描く手摺は地上に降りるとつる性植物の拠り所となる) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階、テラス。(建築家による解説:既存から延長した形状の立体的なフレームに植物やカフェ席、日除け布などが絡まる) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階、テラスから1階の屋外テラスを見下ろす。(建築家による解説:植物や人の居場所が混在している) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図フレーム・階段・テラスの詳細 photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図外観、フレームと戦前棟を見る。(建築家による解説:戦前棟と鉄骨フレームが連続する) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図戦前棟、2階、客席(建築家による解説:吹き抜けには日除け用の布がかかる。テラスの手すりが室内まで続いている) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図庭側から前面道路を見る。(建築家による解説:街へつながる路地) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図明治棟、2階、従業員の為のスペース。(建築家による解説:既存を活かしながら復原的整備をした。窓の外に江戸長屋の屋根が見える) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図配置図(改修後) image©MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図1階平面図 image©MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図2階平面図 image©MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図断面図 image©MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図鉄骨フレームダイアグラム image©MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図配置図(改修前) image©MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図改修前、東側全景 photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図改修前、(建築家による解説:つぎはぎ状態の戦前棟外観。敷地奥に建っていた建物の解体後の様子) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図ジャッキアップ中の明治棟外観 photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図接合部のモックアップ(梁と梁受け) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図接合部の原寸スタディ模型 photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図柱頂部の接合面の機械加工の様子。(紀陽工作所) photo©関拓弥
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図鉄骨接合部(建て方試験時)。(建築家による解説:柱、梁受け、梁が誤差 0.1mmの精度で接合している) photo©関拓弥

以下、建築家によるテキストです。


谷中霊園の入口にある150年の歴史をもつ老舗花屋の改修計画。
経営難に直面していた歴史ある花屋を地元企業が運営ごと買取り、地域に開いた文化的拠点として蘇らせた。
登録有形文化財を含め、歴史的な佇まいや履歴を残しながら、これからも変化し続けることを許容する「動的な保存」によって、地域の文化を未来につなぐことを目指した。

「花重」は、営みと建物がともに残る数少ない事例である。計画にあたっては、何を残し何を変えるのかを概念的に整理した。
建築を生きた状態のまま保存するために、新旧という概念ではなく時間軸で構成を捉え直し、「核となる基本的な骨格」と「変化し続けるもの」が同時にある状態を目指した。

敷地には複数の建物があり、本計画が始まった時点では全7棟があった。今回の計画では計4棟を保存再生している(登録有形文化財の明治棟、その隣の江戸長屋棟、奥にあるつなぎ棟と戦前棟)。その他の棟は調査を踏まえて解体し、庭として地域に開いた。

時代の変化に合わせて辿ってきた履歴は、柱や梁に刻まれた痕跡として残っており、かつての空間構成が辿れるものとして保存した。また、各建物は時代ごとに異なる架構を持っているが、すべて寸尺の木造的寸法体系であり、建物群に通底する長い時間軸をもつ「核となる基本的な骨格」として架構を現すこととした。

これまでの保存再生はオリジナルな状態を最上として復原・再現をする手法や、これまでの履歴を含んだ今の状態を維持する凍結保存などが多く行われてきた。特に石積みの文化においては、石のもつ時間軸の長さ故、対立的な表現を用いて新しく手を加える部分を明快にする手法が多く取られる。一方木造軸組建築は、木という材料の耐久性や加工のしやすさから、その時々のニーズに合わせて変わっていくことが出来る。

「花重」は江戸から昭和にかけての増改築の中で、古いものと新しいものが二項対立ではなく、オーバーラップしながら共存している状態を常に続けてきた。古くなった建築を壊して昔の姿のまま復元するでもなく、真新しい建築につくり変えるでもなく、その間の状態をキープしながら営みと建築が動き続けてきた。今回の改修計画も、これまでの動きの中の一つの段階であり、これからも生き続けていく状態を目指して「動的な保存」として計画した。

時代ごとに分断されていた各棟をひとつながりの空間として連続的に感じられる構成にした。また、既存の架構を連続させるようにして新たな架構を庭へと伸ばした。新たな架構は鉄骨で既存木架構よりも現代的なプロポーションとした。

既存の建物群と隣接するにあたって、仮設的、暫時的なものではなく、時代を越えていく強度のある存在であることが必要だと考え、木造の仕口や継手のように組まれる乾式のボルト接合を採用している。かつての伝統的な木造架構が技術の粋を集めてつくられたように、現代の技術を駆使した極めて精度の高い機械加工による継ぎ手を実現することとした。

新たに加えるカウンターやカフェテーブルなどは、各時代を横断的につなぐ存在として設え、人や植物の居場所となる。これらの架構に取り付くエレメントが加わっていくことによって、新旧や屋内外、人と植物といった二項対立がなくなり、全体が連鎖的につながることを実現した。

■建築概要

題名:花重リノベーション

所在地:東京都台東区谷中

主用途:花屋、カフェ

設計:MARU。architecture
 担当/高野洋平、森田祥子、諸星佑香、朝日啓仁(元所員)
施工:ヤマムラ(既存部)、雄建工業、紀陽工作所、ビーファクトリー(新設部)、アゴラ造園(外構)

構造:川端建築計画(既存部)、テクトニカ(新設部)、東京芸術大学
保存:たいとう歴史都市研究会
家具:藤森泰司アトリエ
照明:加藤久樹デザイン事務所
外構:SfG landscape architects
構造:既存部 / 木造(竹小舞土壁、補強部は荒壁パネル)、新設部 / 鉄骨造
階数:地上2階、一部地下1階

敷地面積:329.58㎡

建築面積:134.97㎡

延床面積:193.11㎡

設計:2020年11月~2021年12月

工事:2022年4月~2023年5月

竣工:2023年5月

写真:関拓弥

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外装・屋根屋根

瓦、ガルバリウム鋼板

外装・壁外壁

下見板張り
左官
ガルバリウム鋼板

内装・床明治棟1階、つなぎ棟、戦前棟1階 床

樹脂モルタル:モールテックスBEAL

内装・床明治棟2階 床


転用古材板張り

内装・床戦前棟2階 床

ラワン合板OS塗装

内装・壁明治棟1階 壁

荒壁パネルの上漆喰塗(あじま漆喰)

内装・壁明治棟2階 壁

石膏ボード [補強部は荒壁パネル] の上漆喰塗
杉板材古色塗

内装・壁つなぎ棟、戦前棟1階 壁

石膏ボード [補強部は荒壁パネル] の上漆喰塗
石膏ボードの上EP塗装

内装・天井明治棟1階 天井

既存材古色塗

内装・天井つなぎ棟、戦前棟1・2階 天井

ラワン合板OS塗装、既存梁材は古色塗

内装・照明照明

スポットライト:EFS7044B 他(遠藤照明
間接ライン照明:FXH-LED 他(DNライティング
屋外スポットライト:AD-3137-L 他(山田照明
シーリングライト:SLD50Modular Lighting
ブラケットライト:mob.26/silverNEW LIGHT POTTERY
屋外ゴボスポットライト:GT31Gantom

外構・床外構

コンクリート洗い出し舗装、一部土系舗装

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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません


MARU。architectureによる書籍『note。 花重リノベーション』

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高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 photo courtesy of MARU。architecture
高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureによる、東京・台東区の店舗「花重リノベーション」。歴史ある花店を改修した文化的拠点。文化を未来に繋ぐ為の“動的な保存”として、“核となる基本的な骨格”と“変化し続けるもの”が同時にある建築を志向。新旧や内外の対立がない“連鎖的に繋がる”空間も意図 image courtesy of MARU。architecture

マル・アーキテクチャによる改修プロジェクト「花重リノベーション」における、その時々で「note。」という形でまとめた彼らの思考の断片を、1冊の書籍の中に散在させたドキュメント。
解体前から工事中、完成に至るプロジェクトの変遷を追った写真、協働者や同時代を生きる建築家との対話を通して、批評を取り込み、自分たちの思考を多面的に浮かび上がらせることを試みている。マル・アーキテクチャが目指す「変化し続ける動的な建築」について、その可能性を彼らが模索する様子が描かれた一冊。

リリーステキストより

note。 花重リノベーション
MARU。architecture
2024年7月17日刊行
著者:高野洋平+森田祥子
発行:マル・アーキテクチャ
写真・編集・デザイン:関拓弥
対談:平田晃久、山田紗子+鈴木心、金田充弘+鈴木芳典、藤森泰司+石橋亜紀、大野暁彦
寄稿:たいとう歴史都市研究会
定価:3200円+税
判型:B5判
頁数:360頁|全カラー

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井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioによる、神奈川・相模原市の「環状リビングの家」。商業地に建つ“完全分離型”の二世帯住宅。将来的な周辺の変化も想定した建築として、南側隣地との間に“空隙”を作る断面構成を考案。子世帯は在宅勤務のある生活に応える為に居場所が連なる“環状の空間”とする
井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioによる、神奈川・相模原市の「環状リビングの家」。商業地に建つ“完全分離型”の二世帯住宅。将来的な周辺の変化も想定した建築として、南側隣地との間に“空隙”を作る断面構成を考案。子世帯は在宅勤務のある生活に応える為に居場所が連なる“環状の空間”とする外観、北側の道路より見る、夜景 photo©渡邊聖爾
井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioによる、神奈川・相模原市の「環状リビングの家」。商業地に建つ“完全分離型”の二世帯住宅。将来的な周辺の変化も想定した建築として、南側隣地との間に“空隙”を作る断面構成を考案。子世帯は在宅勤務のある生活に応える為に居場所が連なる“環状の空間”とする子世帯、2階、「食堂」から3階側を見る。 photo©渡邊聖爾
井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioによる、神奈川・相模原市の「環状リビングの家」。商業地に建つ“完全分離型”の二世帯住宅。将来的な周辺の変化も想定した建築として、南側隣地との間に“空隙”を作る断面構成を考案。子世帯は在宅勤務のある生活に応える為に居場所が連なる“環状の空間”とする子世帯、2階、居間から「食堂」と台所を見る。 photo©渡邊聖爾

井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioが設計した、神奈川・相模原市の「環状リビングの家」です。
商業地に建つ“完全分離型”の二世帯住宅の計画です。建築家は、将来的な周辺の変化も想定した建築として、南側隣地との間に“空隙”を作る断面構成を考案しました。また、子世帯は在宅勤務のある生活に応える為に居場所が連なる“環状の空間”としました。

住宅の建て替え計画である。依頼主の両親が住んでいる古家を取り壊し、息子夫妻と両親が同居する完全分離型(後述する)の2世帯住宅をつくる計画だ。

計画地は、駅前の商業地である。古家は、商店街に面している立地で元々はクリーニング店を営んでいたので、店舗としての役割を主につくられており、採光面や通風面が考慮されておらず、居住空間であるダイニングや居間に関しては、暗く風通しが悪い状態であった。

一方で南側は現状駐車場となっており、良好な日射が現時点では得られそうであることが確認できた。ただ、現状では南側は旧クリーニング店での作業場となっており、居住空間となっておらず、せっかくの採光を生かし切れていない状態だった。

建築家によるテキストより

将来的な南側の採光への考慮から、本計画では、2階と3階の建物ボリュームと南側隣地の間に一定の空隙を設けることで、仮に南側に高い建物が建ったとしても1階にも2, 3階にも良好な採光が得られるようにと考えた。空隙は、想定建物が目いっぱいに建ったとしても4mは取れるので、ある程度の明るさは確保できる状態だ。

また、道路側は、2, 3階が逆に突き出たような形となり、1階は大きな軒ができ雨を避ける計画となっている。この軒下部分は駐車場としても利用され、両親の仕事柄荷物の出し入れが頻繁に行われることから、大きな軒が大活躍している。

建築家によるテキストより

2階と3階の子世帯エリアに関しては、採光面でも面積的にも比較的自由度の高い計画とすることができた。

子世帯夫妻は、在宅での仕事も多く居住スペースとワークスペースが同居する生活スタイルであった。実際に生活するのは夫妻2人のため、このような性格の生活スタイルの場合は、大きな1つの空間をつくるというよりは、それぞれ1人でいても、2人でいても心地よく過ごせるくらいの中くらいの空間がいくつもあるような、空間をつくることを考えた。

具体的には2階をメインの居住エリアとして、階段を中心に、キッチン、ダイニング、ワークスペース、ラウンジ的な空間、水回りを配置している。

住宅によくあるリビングというようなTVとソファがセットになっているような場所はなく、ラウンジと称したちょっとお酒を飲みながら歓談できるような場所をワークスペースの横に設けている。各スペースは、6畳から10畳程度のこじんまりとした空間が壁を隔てるのではなく、収納家具や階段を隔てながら緩やかに繋がり、環状にぐるぐると回遊できる構成となっている。

建築家によるテキストより

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