北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用
photo©miyashita design office 加瀬秋彦

北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用

北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、通り側より見る、夕景 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、庭側より見る、夕景 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、正面:廊下、右:テナント7 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、中央廊下からテナント6を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦

北村直也建築設計事務所が設計した、岐阜の「かまや多治見」です。
明治の長屋を改修した複合施設です。建築家は、伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案しました。また、用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用しました。施設の公式サイトはこちら

敷地は岐阜県多治見市、観光の中心に位置し、面する通りでは陶磁器に因んだイベントが頻繁に開催される。
長屋をリノベーションし、新しく1階は飲食・物販のテナント、レンタルスペース、茶室、2階はオフィスを中心としたテナントとした。

プロジェクトは当初の規模から拡大し個人だけでなく、国、地方自治体である多治見市、多治見まちづくりNPOであるDMOが関係する官民共同のものとなった。中心となるクライアントは陶芸を作るための電気窯の職人であるが、若手陶芸家育成のためのシェア工房を主催し、自らも陶芸家としてなど多技にわたり活躍している。この度、当施設複合施設「かまや」のオーナーとなる。

建築家によるテキストより

同地域は陶磁器関係の産業を主要として成り立っている。タイルを代表とした量生産を行う大企業、伝統的な作品を作り続ける人間国宝、海外でアートピースとして取引されている作品を作る若い作家、陶磁器関係といっても多様な活動が行われている。この街の気風として昔からの伝統的なこと、新しい出来事もどちらも同様に大切にされている。そういった生き生きとした対比からインスピレーションを得て新しくリノベーションを行った。

建築家によるテキストより

計画敷地に面するオリベストリートの街並みは景観条例があるわけではないがそれぞれの建物所有者がお互い気遣いあって昔ながらの風景を守っている。
計画建物について、明治時代に建てられ2023年現在で築145年となり、元々は住居、商店、借家など長い期間の中で様々な使われ方をされ何度も増改築が行われてた形跡があった。
メイン通りに面する北側ファサードは近隣建物の例に漏れず昔ながらの街並みに合わせた佇まいとなっていた。一方、裏側となる南側は昭和以降に増築され、木構造部は手で触るとボロボロ崩れてしまうほどに全体的に損傷が大きかった。

リノベーションはメインストリートに面する北側は昔ながらの街並みに合わせ瓦屋根は傷みが激しかったので新たに瓦を葺き直し、木の真っ黒な外観とし、裏面は全て撤去し全く新しくガルバリウム素地の屋根と外壁で銀色の外観とし、表裏の印象を大きく変えた。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、東側より見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、北側の道路より見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、メインエントランスを見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、メインエントランス側から通り土間を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、庭側のエントランス側から通り土間を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、通り土間からキッチンを見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、通り土間からテナント1側を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、通り土間側からギャラリーを見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、ギャラリーから開口部越しに庭を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、ギャラリー側からテナント3側を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、テナント3の壁の詳細 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、既存壁と新設壁の取り合い photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階、通り土間から2階への階段を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、正面:廊下、右:テナント7 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、テナント7から廊下越しにテナント5を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、廊下から中央廊下を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、左:テナント6、手前:中央廊下 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、中央廊下からテナント6を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、廊下から吹抜越しに庭側を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、架構を見上げる。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、テナント4から中央廊下側を見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、テナント6 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階、建具の詳細 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、庭側エントランスを見る。 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、庭側エントランスを見る、夕景 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、庭側より見る、夕景 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、庭側より見る、夕景 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用外観、通り側より見る、夕景 photo©miyashita design office 加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用1階平面図 image©北村直也建築設計事務所
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用2階平面図 image©北村直也建築設計事務所
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用立面図 image©北村直也建築設計事務所
北村直也建築設計事務所による、岐阜の「かまや多治見」。明治の長屋を改修した複合施設。伝統も新規も尊重する地域性に着想を得て、道側は周辺と調和する“黒色”とし庭側を“銀色”とした“表裏の印象”が異なる建築を考案。用途同士の相乗効果も意図して透明素材を多用断面図 image©北村直也建築設計事務所

以下、建築家によるテキストです。


敷地は岐阜県多治見市、観光の中心に位置し、面する通りでは陶磁器に因んだイベントが頻繁に開催される。
長屋をリノベーションし、新しく1階は飲食・物販のテナント、レンタルスペース、茶室、2階はオフィスを中心としたテナントとした。

プロジェクトは当初の規模から拡大し個人だけでなく、国、地方自治体である多治見市、多治見まちづくりNPOであるDMOが関係する官民共同のものとなった。中心となるクライアントは陶芸を作るための電気窯の職人であるが、若手陶芸家育成のためのシェア工房を主催し、自らも陶芸家としてなど多技にわたり活躍している。この度、当施設複合施設「かまや」のオーナーとなる。

同地域は陶磁器関係の産業を主要として成り立っている。タイルを代表とした量生産を行う大企業、伝統的な作品を作り続ける人間国宝、海外でアートピースとして取引されている作品を作る若い作家、陶磁器関係といっても多様な活動が行われている。この街の気風として昔からの伝統的なこと、新しい出来事もどちらも同様に大切にされている。そういった生き生きとした対比からインスピレーションを得て新しくリノベーションを行った。

計画敷地に面するオリベストリートの街並みは景観条例があるわけではないがそれぞれの建物所有者がお互い気遣いあって昔ながらの風景を守っている。
計画建物について、明治時代に建てられ2023年現在で築145年となり、元々は住居、商店、借家など長い期間の中で様々な使われ方をされ何度も増改築が行われてた形跡があった。
メイン通りに面する北側ファサードは近隣建物の例に漏れず昔ながらの街並みに合わせた佇まいとなっていた。一方、裏側となる南側は昭和以降に増築され、木構造部は手で触るとボロボロ崩れてしまうほどに全体的に損傷が大きかった。

リノベーションはメインストリートに面する北側は昔ながらの街並みに合わせ瓦屋根は傷みが激しかったので新たに瓦を葺き直し、木の真っ黒な外観とし、裏面は全て撤去し全く新しくガルバリウム素地の屋根と外壁で銀色の外観とし、表裏の印象を大きく変えた。

既存内部は廊下と呼べるものがなく、部屋が連続する空間となっていた。新しくテナントを設ける計画のため、既存架構に耐力壁を加え部屋を区切り、機能としては廊下だが既存建築の持つおおらかさを損なうことのない計画とした。

1階は既存部分で天井の高い部分をギャラリーとしたり、暗いメインエントランスから通り土間へ続く先に明るい南の庭を作り既存空間の面白さを引き出すように心がけた。新設部分について透明素材を多用し、飲食や物販のテナントが個別のものではなく相乗効果を期待して空間同士の関連性を持たせた。

2階は新設部分の床を塩ビシート、壁面をプラスターボードに塗装とし表情のない近代的な仕上げとし、既存部分である柱梁や土壁は清掃する程度で手を加えず、味わいのある仕上げのまま残した。主な機能はオフィスまたはシェアオフィスとなり、共用部は天井がなく各室は透明素材の天井とし、大屋根に覆われたワンルームに感じられる空間とした。

茶室について、クライアントは上記の通り電気窯の職人であり、茶室は電気窯の部材・技術を使い自ら作った。クライアントはこの度茶道を習い始めいろいろな取り組みに挑戦していることもあり、茶室の意匠も決まり事通りのものではなく、本来的なありようを考え直し「今」に新しく翻訳した茶室を作ろうとした。

クライアントは先述の通り電気窯の職人であり、茶室は電気窯の部材・技術を使い亭主自ら作った。特徴的な大きな扉を上下に開閉するための機構は電動ウインチ、その電動ウインチを覆う天井仕上げのパンチングメタル、障子は一般和室と同様で木と和紙だが枠となる鉄板、床柱の塗装をグラインダーで落として錆びるがままにしたスチール角パイプ、電気窯の全ての技術を使い茶室の空間を作った。

■建築概要

名称:かまや多治見

所在地:岐阜県多治見市

主要用途:店舗・事務所

工事種別:リノベーション

設計:北村直也建築設計事務所 担当/北村直也
設計協力:mP 担当/山崎隆弘

構造:yasuhiro kaneda STRUCTURE 担当/金田泰裕
施工:澤崎工務店 担当/澤崎祥司
金属工事:司電気炉製作所 担当/加藤貴也

電気設備:小池電気工事株式会社 担当/小池孝治、川島誠司
照明機器:株式会社岡村電産 担当/真々田美香
空調設備工事:トータルシステム株式会社 担当/田財千裕
水道工事:有限会社土屋鉄工所 担当/土屋和弘
タイル:杉浦製陶 担当/林航
サイン:陶芸家 小平健一

敷地面積:335.39㎡

建築面積:211.78㎡

延床面積:400.34㎡
設計期間:2020年8月~2022年10月

工事期間:2022年10月~2023年2月

竣工:2023年3月

写真:miyashita design office 担当/加瀬秋彦

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外装・屋根屋根


ガルバリウム鋼板 t=0.35 素地 縦ハゼ

外装・壁外壁

スギ t=15 OS
ガルバリウム鋼板 t=0.35 素地 縦ハゼ

内装・床

ユカクリート 水性大同塗料
長尺塩ビシート

内装・壁

既存現し
PB t=12.5 AEP

内装・天井天井

既存現し
針葉樹構造用合板現し
ポリカ波板

企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません

あわせて読みたい

この日更新したその他の記事

SANAAによる、長野・飯田市での建築展「妹島和世+西沢立衛 / SANAA 小笠原資料館25周年特別企画展」が開催。設計者自身が1999年に完成させた建築を会場として実施。図面や模型に加えて、当時のエピソードを収録した動画も公開
SANAAによる、長野・飯田市での建築展「妹島和世+西沢立衛 / SANAA 小笠原資料館25周年特別企画展」が開催。設計者自身が1999年に完成させた建築を会場として実施。図面や模型に加えて、当時のエピソードを収録した動画も公開展覧会ヴィジュアル image courtesy of 飯田市小笠原資料館
SANAAによる、長野・飯田市での建築展「妹島和世+西沢立衛 / SANAA 小笠原資料館25周年特別企画展」が開催。設計者自身が1999年に完成させた建築を会場として実施。図面や模型に加えて、当時のエピソードを収録した動画も公開会場風景 ©SANAA

SANAAによる、長野・飯田市での建築展「妹島和世+西沢立衛 / SANAA 小笠原資料館25周年特別企画展」が開催されています。
設計者自身が1999年に完成させた建築を会場として実施されています。図面や模型に加えて、当時のエピソードを収録した動画も公開されます。会期は2024年12月27日まで。展覧会の公式サイトはこちら

※会期が2025年3月31日まで延長されました ※2025/1/10追記

「SANAA(サナア)(1995-) 」は、妹島和世(せじま・かずよ)、西沢立衛(にしざわ・りゅうえ)による建築家ユニットで、2010年に建築のノーベル賞と言われるプリツカー賞、2022年に高松宮殿下世界文化賞建築家部門など様々な賞を受賞しています。

本会場である「飯田市小笠原資料館」は、重要文化財として指定された「旧小笠原家書院」を同敷地内に隣接し、SANAAによって1999年に設計された初期の建築作品です。この度、小笠原資料館開館25周年を記念した、特別企画展を開催いたします。

本展は小笠原資料館の図面・模型に加え、設計当初の話を撮影した特別動画、以降の代表作である金沢21世紀美術館などの図面や写真を伏せて紹介することで、建築空間を体感しながら、建築への考え方やその魅力についてより深く体験することができます。

リリーステキストより

以下に、詳細な情報を掲載します。

河内尚子による、奈良市での展覧会「家具と空間」。“家具と空間”をテーマに実践的研究も行う建築家の展示。登録有形文化財の正木家住宅を会場とし、革・大理石・杉を用いて制作した家具を配置。訪問者に空間と家具が“相互に与える影響”についての考察を促す
河内尚子による、奈良市での展覧会「家具と空間」。“家具と空間”をテーマに実践的研究も行う建築家の展示。登録有形文化財の正木家住宅を会場とし、革・大理石・杉を用いて制作した家具を配置。訪問者に空間と家具が“相互に与える影響”についての考察を促す革の間仕切り、2023年 photo©澤木亮平
河内尚子による、奈良市での展覧会「家具と空間」。“家具と空間”をテーマに実践的研究も行う建築家の展示。登録有形文化財の正木家住宅を会場とし、革・大理石・杉を用いて制作した家具を配置。訪問者に空間と家具が“相互に与える影響”についての考察を促す革の敷物(四角)、2023年 photo©澤木亮平
河内尚子による、奈良市での展覧会「家具と空間」。“家具と空間”をテーマに実践的研究も行う建築家の展示。登録有形文化財の正木家住宅を会場とし、革・大理石・杉を用いて制作した家具を配置。訪問者に空間と家具が“相互に与える影響”についての考察を促す杉の台(丸)、2024年 photo©澤木亮平

河内尚子による、奈良市での展覧会「家具と空間」です。
“家具と空間”をテーマに実践的研究も行う建築家の展示です。建築家は、登録有形文化財の正木家住宅を会場とし、革・大理石・杉を用いて制作した家具を配置しました。そして、訪問者に空間と家具が“相互に与える影響”についての考察を促します。
河内は、妹島和世建築設計事務所を経て自身の事務所を設立した建築家です。また、現在、奈良女子大学大学院博士前期課程に在籍しています(※2024年11月時点の情報です)。会期は、2024年11月9日・10日・16日・17日。

初めての個展を開催します。
「家具と空間」、その関係性を主題としています。

場所は、奈良市にある、登録有形文化財、正木家住宅です。
通土間、座敷、中庭など、町家の姿を残す静穏な空間に、革、大理石、杉を用いてデザインした家具を配置します。

建築家によるテキストより

Subscribe and Follow

公式アカウントをフォローして、
見逃せない建築情報を受け取ろう。

「建築と社会の関係を視覚化する」メディア、アーキテクチャーフォトの公式アカウントです。
様々な切り口による複眼的視点で建築に関する情報を最速でお届けします。

  • 情報募集建築・デザイン・アートの情報を随時募集しています。
  • メールマガジン メールマガジンで最新の情報を配信しています。