SHARE 前田大輔/sequence studio+オーノJAPANによる”西海の家”
photo©矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)
前田大輔/sequence studio+オーノJAPANが設計した長崎の住宅”西海の家”です。
photo©矢野紀行 (Nacasa & Partners Inc.,)
以下、建築家によるテキストです。
敷地は長崎県西海市の山中を通る国道沿いの三百坪ほどの土地で広く、周囲は竹林や山の緑に囲まれ、大空の広がりを感じる自然豊かな場所であった。
建主は、大らかに暮らしていく場所としてこの土地を選び設計を依頼された。
「大らかに暮らす」という思いを受け継ぎ、土地の広がりの中に「在りのまま」暮らす家族の姿を思い浮かべることから設計を始めた。
大きな土地に暮らす家族。大空の下、豊かな緑に囲まれる。土地にはたくさんの草木が生えている。陽は照り、雨も降る。大きな「傘」をさした。皆を包み込む、とても大らかな「傘」。「傘」をさすと強い日差しや雨をしのぐことができたが、周囲の風景が見えにくくなってしまった。求心的な形。内向的形式。これでは、土地の広がりを「在りのまま」に感じ取れなくなってしまう。
「傘」を逆さにしてみる。すると、視界は開けて外に投げ出されて、再び周りの景色に囲まれる。「傘」に雨が溜まってしまったので、真ん中には穴を開け招き入れることにした。
土地の周囲をよく見ると、少しは離れたところにポツリポツリと隣家が建っていて、明け透けに見られてしまうので、目隠しとなる壁を建て、その壁を使って逆さの傘を支えることにした。傘は構造としても安定しているから中に柱がいらない。この壁だけで支えることができる。傘の中は広げたままである。
ただ、壁の配置を工夫して「風車(かざぐるま)」状に建てることにした。
すると、「風車」が風を受けて回り始めるのと同じように、歩くと周囲の竹林や山の緑、大空といった自然の風景が建物の中へと飛び込んでくる。まるで、外部が建物を通り抜けていくような感覚さえもある。そして、斜めの屋根によって「ポンッ」と投げ出されて、外の風景に包まれる。大きな開口の傍に座れば、大空の下、大地に座わる心地になる。
中央の切り落とした部分には雨が入るので、中庭にして木を植えた。
傘の下は大きなひとつの場所でありながらも、樹木と雨がなんとなく場所を分けてくれる。
住人は、それぞれの気分に合わせて場所を見つける。中庭の回りに座れば、穴からは空が見える。朝日は木漏れ日となってテーブルに落ちる。夜には、大窓に月が現れ、畳に寝転び月見をする。
□建物概要
場所:長崎県西海市
用途:個人住宅
構造:鉄骨造平屋建て
敷地面積:1210㎡
建築面積:114.72㎡
述床面積:114.72㎡
構造設計:大野博史[オーノJAPAN]