関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、敷地内の西側より見る。 photo©楠瀬友将
関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、北西側の庭から見る。 photo©楠瀬友将
関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるリビングからダイニングを見る。 photo©楠瀬友将
関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるキッチン側からダイニングとリビングを見る。 photo©楠瀬友将
関谷涼太 / タソ建築アトリエが設計した、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」です。
発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸です。建築家は、社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向しました。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建築に還元されます。
一般に建築行為の手順は設計者による発想から始まりそれが図面化され、その後施工者の選定、工事へと続く。
もしもその手順が逆ならば。発想の起因を施工者つまり職人から見出すとするならば。
職人の技量や思想、哲学は設計にどんな幅を持たせてくれるのだろうか。
この建築は「つくり手の技術と熱を美しく実現させる場」。
そう定義して計画することで建築行為の本質的な感動に出会えるとともに、設計者の自邸という広い自由の中でも社会に対して果たせる職責があると信じた。
建物奥に位置する都合から造園工事の大半は基礎着工に先立って行った為、設計者・施工者はまだ何もない状態の敷地でつくりたい景色を共有する必要があった。打ち合わせは詳細に描き込まれた図面を囲んでというよりは、各々スケッチと会話を主として、現場で生まれる感性や思想を重んじる即興的な施工とした。
地面はどれほどの角度を持たせれば壁面となるのだろうか。この地面は安息角である30°としているが、その存在は壁に近いと感じる。刻々と変わる景色と光を持つ壁面である。その大きな個性を支えるように、建物は普遍的でありたいと考えた。
無論、普遍を求めれば求めるほどに技術が要る。
躯体は手刻みによる緻密な加工と、金物を使わない木組みによる構造美とした。
垂木を現す勾配天井による暗だまりが、均質になりやすい北側開口の空間に陰影をもたらす。
計11本の横架材が納まる大黒柱は数十時間かけて円柱に削り出され、ぐるりと包む庭からの多角的な光をより柔らかく映し出す役割を担った。
それらはどれも、職人の技量と哲学があっての計画だった。この墨付刻みの精度が活かされるのはどんな構造意匠か。この質で塗れる職人にはどんな仕事をして貰えば良いのか。職人の個性を尊重することはつまり伝統か先進かといった議論の垣根を超えて技術そのものと向き合うことでもあり、その過程は空間美となって建物に還元される。
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関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される俯瞰、南西側より見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、南側の道路より見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、敷地内の西側より見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、敷地内の南西側より玄関を見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるエントランスから収納越しにパントリー側を見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるエントランス側よりダイニングとリビングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるリビングからダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるリビングからダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、縁側と北東側の庭 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、北西側の庭から見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、北西側の庭から見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、北西側の庭から見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるリビングから玄関側を見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるリビングからキッチンとダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるキッチン photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるキッチンからダイニング側を見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるキッチンからダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるキッチンからダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるキッチン側からダイニングとリビングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される北西側の縁側から開口部越しにダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるダイニングとキッチンからリビングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される廊下からリビングとダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される廊下からリビング側を見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される脱衣室から主寝室を見る。 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される建具の詳細 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される柱梁の詳細 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される家具の詳細 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元されるカーテンの詳細 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される郵便受け photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、敷地内の北西側より見る、夕景 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される外観、北西側の庭より見る、夕景 photo©楠瀬友将

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される配置図 image©タソ建築アトリエ

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される平面図 image©タソ建築アトリエ

関谷涼太 / タソ建築アトリエによる、愛知・名古屋市の住宅「地包みの平家建て」。発想の源泉を“職人”に求めて計画された設計者の自邸。社会に果たせる“職責”を信じ、施工者の“技術と熱を美しく実現させる場”を志向。議論を越えて技術と向き合う過程が“空間美”となって建物に還元される断面図 image©タソ建築アトリエ
以下、建築家によるテキストです。
一般に建築行為の手順は設計者による発想から始まりそれが図面化され、その後施工者の選定、工事へと続く。
もしもその手順が逆ならば。発想の起因を施工者つまり職人から見出すとするならば。
職人の技量や思想、哲学は設計にどんな幅を持たせてくれるのだろうか。
この建築は「つくり手の技術と熱を美しく実現させる場」。
そう定義して計画することで建築行為の本質的な感動に出会えるとともに、設計者の自邸という広い自由の中でも社会に対して果たせる職責があると信じた。
敷地は南垂れの傾斜地。元々は半地下のガレージを備えた住宅が建っていた。解体すると地面は安息角に均されるが、その様を想像した時に覚えた迫り上がる地面に包まれるような感覚をそのまま居住空間にしたいと考えた。
立ち上がった北庭は太陽光を正面に受け室内の床、壁あるいは天井へと反射させる。その光は柔らかく、南に開口された空間にはない静かな空気感を作る。南であるこちら側を向いて育つ葉や花が季節の変化を知らせてくれる。溶岩に自生する苔には朝露が煌めき、木陰が揺れ、時間軸を築く。
その景色を取り込みたいが故の開口であり、その開口に安心を与えたいが故の景色。斜面と建物はそんな相関性を持つ。
建物奥に位置する都合から造園工事の大半は基礎着工に先立って行った為、設計者・施工者はまだ何もない状態の敷地でつくりたい景色を共有する必要があった。打ち合わせは詳細に描き込まれた図面を囲んでというよりは、各々スケッチと会話を主として、現場で生まれる感性や思想を重んじる即興的な施工とした。
地面はどれほどの角度を持たせれば壁面となるのだろうか。この地面は安息角である30°としているが、その存在は壁に近いと感じる。刻々と変わる景色と光を持つ壁面である。その大きな個性を支えるように、建物は普遍的でありたいと考えた。
無論、普遍を求めれば求めるほどに技術が要る。
躯体は手刻みによる緻密な加工と、金物を使わない木組みによる構造美とした。
垂木を現す勾配天井による暗だまりが、均質になりやすい北側開口の空間に陰影をもたらす。
計11本の横架材が納まる大黒柱は数十時間かけて円柱に削り出され、ぐるりと包む庭からの多角的な光をより柔らかく映し出す役割を担った。
撫で切りで仕上げた半田の大壁は北庭からの天空光や反射光を受けるとしっとりと染み込むような表情となり空間を落ち着かせてくれる。梁レベルの操作によりバランスと断面的な広狭を作りながら、その仕事と素材感を身近に感じられるようにした。
それらはどれも、職人の技量と哲学があっての計画だった。この墨付刻みの精度が活かされるのはどんな構造意匠か。この質で塗れる職人にはどんな仕事をして貰えば良いのか。職人の個性を尊重することはつまり伝統か先進かといった議論の垣根を超えて技術そのものと向き合うことでもあり、その過程は空間美となって建物に還元される。
地面には様々な情緒がある。咲いた枯れた。濡れた乾いた。そのような普段何気なく見過ごす足もとの様子がアイレベルにある暮らし。
地面に包まれるその様と、建築行為そのものの過程を解いたこの建物を「地包み」の平家「建て」と名付けた。
■建築概要
題名:地包みの平家建て
所在地:愛知県名古屋市緑区
主用途:一戸建ての住宅
設計:タソ建築アトリエ 担当/関谷涼太
構造設計:門田設計株式会社 担当/門田悠希
施工:紬建築株式会社 担当/柴田旭、浅井大毅
造園:株式会社三五郎園 担当/浅野生衣、板津慶
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:551.88㎡
建築面積:102.69㎡
延床面積:102.69㎡
設計:2022年6月~2023年8月
工事:2023年8月~2024年8月
竣工:2024年8月
写真:楠瀬友将
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・屋根 | 屋根 | いぶし瓦
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外装・壁 | 外壁 | リシン掻き落とし
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内装・床 | 床 | 山桜 t15
杉 t15
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内装・壁 | 壁 | 杉板 t12
白土半田撫で切り 木ずり下地
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内装・天井 | 天井 | 杉板 t12
白土半田撫で切り 木ずり下地
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内装・キッチン | キッチン | 制作 ステンレス天板+山桜
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内装・照明 | 照明 | 制作 黒皮
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外構・床 | 外構 | 洗い出し
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