
SHARE 隈研吾建築都市設計事務所によるインスタレーション「Domino 3.0」。ヴェネチアビエンナーレ国際建築展の出展作。全体テーマの“AI”に対し、人が自然の中で暮らす為の“最強の助手”としてAIを扱う作品を志向。倒木を素材に3DスキャンとAIを活用して構造的整合性をとり実現



隈研吾建築都市設計事務所が設計した、インスタレーション「Domino 3.0 / Generated Living Structure」です。
ヴェネチアビエンナーレ国際建築展の出展作です。建築家たちは、全体テーマの“AI”に対し、人が自然の中で暮らす為の“最強の助手”としてAIを扱う作品を志向しました。そして、倒木を素材に3DスキャンとAIを活用して構造的整合性をとり実現しました。会期は、2025年11月23日まで。展覧会の公式ページはこちら。
AIを全体テーマとして開催されているヴェネチアビエンナーレ国際建築展(2025)のために、森に帰るための家Domino 3.0を提案した。
人が森に帰り、再び自然の中で暮らすために、AIは最強の助手となるだろう。AIは人と自然とを切り離すためにあるのではなく、人と自然とをつなぎ直すためにこそ使われるべきである。
素材として用いたのは、2018年10月暴風雨Vaiaによって根こそぎ破壊され、放置されていた樹木である。倒れた樹木を3Dで完全にスキャンし、それをAIの助けを借り、構造的整合性をとりながら森の中に融けるような姿で組み立てていった。
動きに追従し、自由に形を変える、やわらかなジョイントを3Dプリンターで制作し、樹木の枝分かれの部分にはめこみ、樹木同士はやわらかにつながった。
コルビュジエのDomino(1914)は人間を合理的に自然から切り離すための道具であった。
そこでは単一のルール、単一の寸法に基づいた標準化がテーマであった。それを超えるために、単に材料を替えただけのDominoが今までも様々に提案されたが、標準化という方法自体を転換しようとしないそれらの試みはDomino2.0に過ぎない。
我々は、全体から部分へというトップダウン型で演繹的な方法自体を見直し、特殊で自由な個体(倒木)を、そのままの形を保ったままで組み立て、やわらかくつないでいった。そのようにして硬く冷たかったDominoを、やわらかく暖かい森の世界へと帰し、標準化というモダニズムの方法自体を転換しようと試みた。
以下の写真はクリックで拡大します



















以下、建築家によるテキストです。
AIを全体テーマとして開催されているヴェネチアビエンナーレ国際建築展(2025)のために、森に帰るための家Domino 3.0を提案した。
人が森に帰り、再び自然の中で暮らすために、AIは最強の助手となるだろう。AIは人と自然とを切り離すためにあるのではなく、人と自然とをつなぎ直すためにこそ使われるべきである。
素材として用いたのは、2018年10月暴風雨Vaiaによって根こそぎ破壊され、放置されていた樹木である。倒れた樹木を3Dで完全にスキャンし、それをAIの助けを借り、構造的整合性をとりながら森の中に融けるような姿で組み立てていった。
動きに追従し、自由に形を変える、やわらかなジョイントを3Dプリンターで制作し、樹木の枝分かれの部分にはめこみ、樹木同士はやわらかにつながった。
コルビュジエのDomino(1914)は人間を合理的に自然から切り離すための道具であった。
そこでは単一のルール、単一の寸法に基づいた標準化がテーマであった。それを超えるために、単に材料を替えただけのDominoが今までも様々に提案されたが、標準化という方法自体を転換しようとしないそれらの試みはDomino2.0に過ぎない。
我々は、全体から部分へというトップダウン型で演繹的な方法自体を見直し、特殊で自由な個体(倒木)を、そのままの形を保ったままで組み立て、やわらかくつないでいった。そのようにして硬く冷たかったDominoを、やわらかく暖かい森の世界へと帰し、標準化というモダニズムの方法自体を転換しようと試みた。
そのために日本のAIの第一人者である東京大学の松尾豊教授と、構造エンジニアで日本女子大学の江尻憲泰教授とコラボレーションした。
最先端の技術は、人間を自然から遠ざけるためにあるのではなく、人間が自然へ帰るためにこそ存在するということを、実際の樹木を用いて提案し、社会に対して問いかけようと試みた。
■建築概要
題名:Domino 3.0 / Generated Living Structure
所在地:イタリア ヴェネチア
用途:Exhibition
設計:隈研吾建築都市設計事務所、東京大学総括プロジェクト機構SEKISUI HOUSE – KUMA LAB
協働:東京大学松尾・岩澤研究室 松尾豊教授
構造設計:江尻建築構造設計事務所
施工:D3Wood
構造:木造、一部3Dプリンター
設計期間:2024年12月1日~2025年5月2日
工事期間:2025年4月15日~5月2日
竣工年月:2025年5月10日
写真:Nils Koenning
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・床 | 床 | ウッドチップ |
内装・柱 | 柱 | 現地木材 |
内装・その他 | 3Dプリンター接合部 | TPE |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません
For the Venice Biennale International Architecture Exhibition 2025, held under the overarching theme of AI, we presented Domino 3.0 : a house to return to the forest. AI will be the strongest assistant for people to return to the forest and live in nature again; AI should not be used to separate people from nature, but to reconnect people with nature.
The material was timber from trees uprooted and devastated by Storm Vaia in October 2018 — trees left to decay on the forest floor. Each fallen tree was fully 3D-scanned, then reassembled with the assistance of AI to integrate seamlessly into the natural environment while maintaining structural integrity. Soft joints — flexible, responsive to movement, and freely transformable — were created using 3D printing and embedded into the branches. These allowed the trees to be gently interconnected, forming a living, adaptive structure.
Corbusier’s Dom-Ino House (1914) was a tool to rationally separate man from nature. The theme in his project was standardization based on a single rule, a single dimension. To go beyond that, various versions of the Domino typology have been proposed that simply change materials, but these attempts are nothing more than Domino 2.0 without attempting to change the method of standardization itself.
We rethought the top-down, deductive method of going from the whole to the parts, and assembled special, free individuals (fallen trees) while keeping their original shapes, and softly connected them together. In this way, the hard and cold Domino building typology was returned to the soft and warm world of the forest, and the modernist method of standardization itself was attempted to be transformed.
For this purpose, we collaborated with Professor Yutaka Matsuo of The University of Tokyo, Japan’s leading AI expert, and structural engineer and Professor Norihiro Ejiri of Japan Women’s University.
The project attempts to question society by using actual trees to propose that cutting-edge technology does not exist to keep humans away from nature but enables humans to return to nature.