
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.007 木村松本建築設計事務所「house S / shop B・ba hutte.」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
木村松本建築設計事務所「house S / shop B・ba hutte.」
木村松本建築設計事務所による、京都市の修学院に建つ「house S / shop B・ba hutte.」を見てきた。
どうしてもスケジュールが合わず、お店のオープンの時間に伺えなかったのは、非常に残念だけれど、このプロポーションとヴォリューム感は、この建築の重要な特徴のひとつだと思うので、実際に現地で見られたのは非常によかった。
写真で見ていた時は、その特殊なプロポーションから実際に見てどのように感じるのか想像がつかなかったのだけれど、訪問してみるとその敷地に自然にピタッと収まっている感覚があって驚いた。そして、その重量感を感じさせない素材選びも相まって、敷地にそっと置かれたような軽い存在感。でも、視覚的な透明性が生む軽さとは異なる、良い意味での存在感の軽さを感じた。
外部における建築の要素はかなり絞られているのだけれど、開口部の配置とつくりがとても面白い。
木の構造体をあえて見せるかのように引き違いの窓が取り付けられていたりする。開閉における不便さはもちろんあるのだと思うのだけれど、ファサードや内部空間におけるあるべき開口の位置や大きさという視点と、架構のルールを敢えて整合性をとらないことによって(いや、むしろこうなるように整合させている)、ファサードに三次元的な奥行き感や、内部に対する想像力が非常に喚起される、、、!
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僕が最初に木村松本さんたちの建築を見せてもらったのは、静岡県浜松市の「Nの住宅地の住宅」という作品で、そこでは隅々まで住宅の当たり前の一歩手前に立ち返って再考するということが徹底されていて、興奮して写真を撮りまくってしまった。
特に驚いて今も印象に残っているのは、エアコンの取り付け位置。
一般的な取り付け位置よりも少し下側に取り付けられることで、そのエアコンは、僕が知っている設備としてのエアコンではなくて、家具の一部として振る舞っていて、本当に驚かされた。先に書いたように、徹底して慣習の一歩手前に立ち返って建築の全てに向き合っているのだなと驚かされた。そして、この経験は僕が「建築家とは?」という問いに対する答えにも大きな影響を与えている。
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話はそれてしまったのだけれど、開口部と躯体が重ならないようにするというのは、設計をする上で、あまりにも当然で無意識レベルで避けてしまうようなことだと思う。しかし、その一歩手前に立ち返って再考することで、少しの不便さと引き換えに手に入れられるものが確実にあって、木村松本さんにはその操作が生み出す価値が見えていて、だからこそこの選択肢が取られたのだろうと想像した。
外観を拝見しただけでも、これだけワクワクさせてくれる建築なのだから、内部を体験すれば更なる発見があるに違いない。
それは、次回のお楽しみに取っておこう。
(訪問日:2026年2月8日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。22年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するWebメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。


