SHARE 水野芳康 / 水野建築事務所による、静岡・藤枝の住宅「寺田邸」
all photos©濱善治/スタジオメロス
水野芳康 / 水野建築事務所が設計した、静岡・藤枝の住宅「寺田邸」です。
正方形平面の対角線上に屋根の稜線を設けた。それは立ち上げた直方体の上部4点の高さをパラメトリックに調整できる形状とすることで、内部空間の快適性とバリエーションを探るのと同時に各面ごとの周辺環境に合わせた外壁の大きさを定義することができるからだ。母屋や周辺に対して圧迫感を感じさせないボリュームとしながら、一方で居心地の良い開放性と安心感を同時に持った内部空間をつくりだす。つまり周辺環境からの建築を小さくする方向への作用と、内部空間をより大きくしようとする反作用、両者の丁度良い状態を導き出すことで、空間密度の高い建築になるのではないかと考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
寺田邸は、既存住宅敷地内の空きスペースに建てられた子世帯(30代夫婦と2人の子供)が生活するための離れである。限られた範囲での計画となったため、木造モジュールに倣った7.28m×7.28mの平面形状の中で建築を考えた。
正方形平面の対角線上に屋根の稜線を設けた。それは立ち上げた直方体の上部4点の高さをパラメトリックに調整できる形状とすることで、内部空間の快適性とバリエーションを探るのと同時に各面ごとの周辺環境に合わせた外壁の大きさを定義することができるからだ。母屋や周辺に対して圧迫感を感じさせないボリュームとしながら、一方で居心地の良い開放性と安心感を同時に持った内部空間をつくりだす。つまり周辺環境からの建築を小さくする方向への作用と、内部空間をより大きくしようとする反作用、両者の丁度良い状態を導き出すことで、空間密度の高い建築になるのではないかと考えた。さらに、階段の踊り場部となる書斎を中間階とし1階と2階の空間をつなげる。耐力壁は極力外壁側に設け、間仕切りが少ない空間とする。部屋の軸を45度に振ることで空間に連続性をもたせる。半屋外空間(中庭)を挿入し、内部と連続させる。など空間の広がりが感じられる工夫を随所に設えることで、小さな平面の中に実際の尺度では計れない豊かで楽しい住空間とすることができるのではないかと考えた。
建築の大きさ
単体の建築をつくるとき、街並みやその界隈を形成することになる「建築の大きさ」は、周辺を含めた人々の経験に大きな影響をあたえると考えられ、建築内部のプランニングと同じように重要視するべきだと考えている。一般的に「建築の大きさ」は、必要な機能を満たすための平面ができる限り積み上げられ、一方で建蔽率や高さ制限などの法規制や、経済的な制約が、建築を小さくする方向に作用することでバランスをとって決定されている。しかし、建てることのできる最大ボリュームは、状況によってはその界隈の形成してきた環境に水を差すような結果となってしまうことがある。我々は、法規制に頼ることなく、この土地に建つ丁度いい「建築の大きさ」を探ることで、今ある環境に対して、「しっくりくる建築」となることを第一に目指した。
■建築概要
寺田邸
設計:水野芳康/水野建築事務所
構造設計:高田雅之/RGB STRUCTURE
施工:阿部工務店
写真:濱善治/スタジオメロス
主要用途:専用住宅
所在地:静岡県藤枝市
規模:
敷地面積:17.74㎡
建築面積:50.54㎡
延床面積:121.37㎡
階数:地上3階
構造:木造
竣工:2017年1月
主要仕上:
外部仕上げ
屋根:ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き
外壁:樹脂系吹付材
中庭床:ウッドデッキ(セランガンバツー)
内部仕上げ
床:レッドパイン無垢フローリング
300角磁器質タイル
長尺塩ビシート
壁:ビニールクロス
ラワン合板5.5㎜OS塗装
ラワン合板5.5㎜CL塗装
天井:ラワン合板5.5㎜CL塗装
ビニールクロス