SHARE 武保学 / きりん による、三重・伊賀市の住宅「two house」
武保学 / きりん が設計した、三重・伊賀市の住宅「two house」です。
三重県伊賀市の里山が広がる地域に、妻のおばあさんが独りで暮らしていた. 少しずつ世話が必要になりつつあったおばあさんの生活を見守り、かつ僕ら家族の生活を成り立たせる方法を考えた. その結果、おばあさんの家の向かいに小さな家を建て、その間を行き来する「1.5世帯の暮らし」にたどり着いた. 決め手は、この地で何十年も営まれたおばあさんの生活を極力変えないということだった.
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以下、建築家によるテキストです。
[92歳と2歳と暮らす]
三重県伊賀市の里山が広がる地域に、妻のおばあさんが独りで暮らしていた. 少しずつ世話が必要になりつつあったおばあさんの生活を見守り、かつ僕ら家族の生活を成り立たせる方法を考えた. その結果、おばあさんの家の向かいに小さな家を建て、その間を行き来する「1.5世帯の暮らし」にたどり着いた. 決め手は、この地で何十年も営まれたおばあさんの生活を極力変えないということだった.
おばあさんの家は緩やかな丘の上に位置しており、そこから遠くの山々を眺めることができた. しかし僕らの家が建つことによってその景色の広がりを遮ってしまうことが懸念された. そこで以前の開放感を少しでも残せるように、建物を分棟形式とし、その間に外部空間を設けることで視線の抜けをつくった. 外部空間はおばあさんの家の玄関先から山の端を感じることができるよう、高さや幅を設定している.
この外部空間は「つなぎの間」と呼ばれ、ここを経由しながら僕らの生活が展開する. 食事をしたらつなぎの間を通って居間へ. お風呂に入ったらつなぎの間を通って2階の寝室へ. 常に外部が密接に関わり、日常生活と周辺環境との結節点がこの場所に生まれている. 緩やかな暮らしの分節は、家族の生活スペースと僕の設計事務所スペースの分離、来客時における公私の分離、また家族同士の距離感の調整に寄与する.
各棟は正方形の角に階段や水回りなどを計画し、その残りを居住スペースとすることで、四方に視線が抜ける窓を設けた. 2階も含めてこれらの窓を全て掃き出しとすることによって、家のどこにいても豊かな自然環境が家の中に溢れ、身体がこの場所に溶け合うような一体感を得ることができる.
雄大な地球環境に包まれていることを感じさせるこのような「開かれた家」のつくりが、大地との関わりを鮮明にし、ここで暮らす家族の安心感につながるのではないかという期待を持っている.
■建築概要
設計・監理:きりん 武保 学
写真:山内紀人
所在地:三重県伊賀市
用途:住宅・事務所
構造:木造
敷地面積:136.22㎡
建築面積:58.29㎡
延床面積:108.39㎡
竣工:2018年10月