SHARE 佐久間達也空間計画所による、埼玉・戸田市の住宅の改修「Ornament for the Piano room」
佐久間達也空間計画所による、埼玉・戸田市の住宅の改修「Ornament for the Piano room」です。
一般に、装飾という言葉は機能の無い形態や形式を、空間にプラスすることを示していると思う。
装飾を繰り返し反復させ氾濫させることにより空間を有機的にあるいは華美にするという考え方があるし、また逆に装飾を出来る限り排除するということも長く広く行われてきた。ここで施したことは空間を構成する「壁」と「天井」という、基本的に分節された面領域の境界をフィレットによりフェードアウトさせ、入隅の線分を曲面に置き替えた、マイナスの装飾である。
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以下、建築家によるテキストです。
個人住宅の改装である。
クライアントはご主人が画家、奥様はピアノ教室の先生である。当初は2世帯住宅であったがご両親が亡くなり、2階で行っていたピアノ教室を親世帯が使っていた1階へ移すことになった。
リビング・ダイニングとして使われていた部屋はゲストを招く場所となり、寝室としていた部屋にはピアノを置くこととなった。ピアノ室とゲストルームを引戸で仕切ることができるように、1階の間仕切り壁を一部作りかえた。引戸をオープンにした時に、ゲストルーム側から演奏の様子がよく見えるように、ピアノの向きを決めた。
ピアノを演奏している様子をゲストルーム側から眺めた、直線上に見通す構図を想像した時に、演奏者が引き立つような雰囲気をつくりたいと考えた。
そこでゲストルームの両側にある壁に、壁から天井にかけてモールドを施し、空間の輪郭を一部変形させた。
直接ピアノ室に装飾を施すのではなく、ピアノ室を見る側の上部に装飾を施して、装飾と演奏風景が重なるようにと考えた。
ピアノ室とダイニングは引戸の間仕切りで分節されているが、この装飾が間接的に2室を一体的になるように取り持つ。
一般に、装飾という言葉は機能の無い形態や形式を、空間にプラスすることを示していると思う。
装飾を繰り返し反復させ氾濫させることにより空間を有機的にあるいは華美にするという考え方があるし、また逆に装飾を出来る限り排除するということも長く広く行われてきた。
ここで施したことは空間を構成する「壁」と「天井」という、基本的に分節された面領域の境界をフィレットによりフェードアウトさせ、入隅の線分を曲面に置き替えた、マイナスの装飾である。
フィレットの額縁は自然光によりなめらかな陰影を生成しながら空間のコンテクストに加わり、ピアノや演奏者と一体のアイコンとなった。
■建築概要
用途:住宅(ピアノ室)
所在地:埼玉県戸田市
改装面積:38㎡
設計期間:2017年7月〜2018年7月
工事期間:2018年8月〜2018年10月
設計:佐久間達也空間計画所
施工:参創ハウテック
写真:田中克昌