田邉雄之建築設計事務所が設計した、長野・軽井沢町の、既存建物を改修しフォリーを増築した、三菱地所が運営するワーケーション施設「WORK x ation Site 軽井沢」です。施設の予約もできる公式ページはこちら。
ワーケーションサイト軽井沢は長野県軽井沢のラウンドアバウト(六本辻)に面する建物のリノベーションとフォリーの増築プロジェクト。リノベーションは飲食店だった建物をフレキシブルなワークスタイルに対応するワーケーションオフィスへの変更。
緑豊かな木々に囲まれた敷地は約311坪で、既存建物の延床面積は約83坪。建物形状はラウンドアバウトを背に平屋部分と2階部分がV字のように繋がる。
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以下、建築家によるテキストです。
ワーケーションサイト軽井沢は長野県軽井沢のラウンドアバウト(六本辻)に面する建物のリノベーションとフォリーの増築プロジェクト。リノベーションは飲食店だった建物をフレキシブルなワークスタイルに対応するワーケーションオフィスへの変更。
緑豊かな木々に囲まれた敷地は約311坪で、既存建物の延床面積は約83坪。建物形状はラウンドアバウトを背に平屋部分と2階部分がV字のように繋がる。
1Fはエントランスホールを挟むかたちで50~60㎡ほどのワークスペースが2つと、水回りやカフェを配置。また既存計画ではラウンドアバウト側に対して勝手口やサービスエリアを設け完全に閉じたプランとなっていたが、今回の計画では狭いながらもそちら側に開口を設けることで、エントランスホールを風と光が通りぬけるスペースとした。また交通量のあるラウンドアバウト側にカフェテラスを設けることで、コマーシャル力のあるファサードをつくりだした。
2階は既存計画では小部屋に分かれていたが、柱・梁・壁の構造を補強して広々とした60㎡ほどのワンルームのワークスペースとし、更に開口部の増設や拡張をおこない敷地内の緑が溢れる空間とした。リノベーションならではの工夫としては、ケーブルラックを兼ねた長押を新たに壁に設けることで、既存壁を壊さずに新規の照明器具やプロジェクターを配線できる仕組みとした。またその長押に呼応させる形で縦枠も設け、プロジェクターを投射する壁や、ホワイトボード壁などオフィスユースの機能をインテリア化させている。
既存計画においては床下に断熱が全く施されていなかったため、浮き床とすることで新たに断熱層を設けた(床コンセントも増設)。
空調換気においては、機器を省エネ仕様のものに置き換えると共に全熱交換式の換気扇を増設し、断熱と共に冬季の使用に配慮した。既存の外壁は一部に鏡や擬石が大胆に張られ時代を感じさせる仕上げであったため、その多くを周囲の緑が映えるグレーに塗装した杉板張りで被いかぶせた。
外構においては、エントランスや駐車場の位置は変更することなく動線の整備を行い、施設のアイコンとなる白樺を中心に地域に則した植栽を増やす計画とした。その外構の一部に、休憩スペースとしてのフォリーを増築した。
フォリーは屋根や庇や壁を兼ねた角度が異なる6枚のサーフェイスから構成されている。それらの大きさや角度はそこに佇む行為に対してのヒューマンスケールであると共に太陽光の角度や耐風圧からも検討し、更に板のピッチ幅は雨水の流れをシミュレーションした結果を反映した上部から下部へのグラデーションとしている。
フロアレベルは2つあり、低い方は斜め壁を背に段差を利用して大きなベンチのように座れ、高い方は足を投げ出して縁側のように開放的に座れる。またこのフォリーは通りからも見える位置に配置することにより、軽井沢という厳しい景観規制のなかで、生まれ変わった施設の「何も書かないビルボード」としての役割も果たす。
企業に対しての短中長期の1棟貸しや部屋貸し、それらの利用が無い時の個人貸し利用を想定する中で、多様なニーズに応えると共に、自分の居場所を見つけられるような空間づくりを行った。
運営者である三菱地所によるワーケーションの定義
「ワーケーション」とは、リモートワークを活用し、リゾート地等の環境の良い場所で、休暇や研修等を兼ねて短中期的に滞在し仕事を行う取り組みです。Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた欧米発の造語といわれています。
三菱地所では、Vacationに限定せず、Work(仕事)とLocation(場所を変え)、Motivation(動機付けをし)、Communication(対話の中で)、Innovation(革新が生まれる)ワークスタイル、といった意味合いを込めた造語として、ワーケーションを定義しております。
フォリーの構造
屋外という事もあり、風圧に対する応力処理に工夫が必要であった。応力処理は複雑だが、視覚的なフレームがシンプルに見えるように計画を進めた。屋根形状に相欠き、接合金物を使用したトラス構造を組み入れ、X方向風圧に対して有効的なフレームとした。Y方向にはデッキ材裏や、床下といった意匠を損なわない箇所に筋交いを設置し、応力処理をする形とした。規模的にはいわゆる四号建物であるが、壁が無いため壁量計算が行えず200ページにおよぶ構造計算書を提出している。
■建築概要
建物名称:WORK x ation Site 軽井沢
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢字野沢原1323-1387
主要用途:事務室、店舗
企画・運営:三菱地所
設計監理:田邉雄之建築設計事務所
構造:既存建物/ロウファットストラクチュア、フォリー/シェルター
設備:Comodo設備計画
外構:hondaGREEN
家具:ACTUS
施工:竹花組
主体構造・構法:既存建物/木造軸組構法、フォリー/木造軸組構法+KES構法
階数:既存建物/2階、フォリー/1階
敷地面積:1027㎡
建築面積:既存建物/222.35㎡、フォリー/22.35㎡
延床面積:既存建物/275.91㎡、フォリー/11.91㎡