二俣公一 / ケース・リアルが設計した、鹿児島・鹿児島市の、老舗割烹「割烹山映改修計画 一期工事」です。
城山の麓にある「山映」は、鹿児島の郷土料理を提供する創業昭和8年の老舗割烹。
現在の店舗は2代目が店を引き継いだ際に構えた木造2階建の建物で、建築から40年近く丁寧に使い込まれてきた。そして現在は2代目から3代目である若女将に世代が移っていく移行期にあり、今回そのような移り変わりに合わせて、厨房やトイレなどの水回り、メインのカウンタースペースから段階的に改修を行うことになった。
第一期の計画の軸となったのは、若女将が接客するカウンタースペースの背景。
私たちは建物の外壁形状に沿わせて室内に型枠を組み、カウンター背面に新たにコンクリートのL字型の壁をつくり付けることを考えた。
コンクリートの色には、初代女将が好んでいたという藤の花の淡い紫を採用。表面を叩いて凹凸のある仕上げとし、その陰影によって奥行きある表情をつくった。また、厚みのあるカウンターは熊本県産の一枚板のイチョウで、2代目が店舗を構えた当時に設えたもの。計画ではサイズなどの微調整のみ行い、これをほぼそのまま再利用した。
店舗には今後も少しずつ手を加えていくことが予定されているが、全てを一新してしまうのではなく、代々施主が受け継いで来たものや空気を大事にしながら、次の世代の新しさもあるグラデーショナルな移り変わりを引き続き計画していきたいと思う。